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ゲーム二次創作中心ブログ。 更新まったり。作品ぼちぼち。

※オフ会レポートはまた後日…申し訳無いです|ω・`)

リムジン内の密談。
*

空港前で待機していた黒塗りのリムジンに乗り込むと、庵の希望通り近場の飲食店(ハンバーガー屋)に立ち寄り、ドライブスルーでメガサイズセットをテイクアウトし目的地に急ぐ。

車内は老齢の運転手を除くと庵と麻美、そして麻美の母のみ。
彼女は高級車内であることも気にせずハンバーガーをもりもりがっつく青年とそれを生暖かく見守る娘の顔を向かいの席で交互に見やり、そして「信じられないねえ」と呆れ顔でぼやく。
手元では、輸入物の細い紙煙草が茶色く細い管の先から細い煙をたなびかせている。

「この坊やがあの一世を風靡した天才少年の成人した姿なんて」
「あらやだママったら、今更」
「だって、ねえ」
気付くと、彼は麻美母の手元をじっと凝視している。
「あの、煙草」
「我慢して頂戴な。これが仕事中の唯一の楽しみなのよ」
「すんませんです」

再び、紫煙から手元のハンバーガーに目線を落とし食らいつく青年に、熟女は明後日の方向を向いてふう、と煙を細く吐き出す。
パティ4枚挟み&ベーコンと薄っぺらなレタスに目玉焼きがはみ出したメガバーガーを大口で既に半分以上飲み込んでいる庵の屈託無い食の笑顔に言葉もない。
普段口の端すら曲げぬ母のポカン顔に、麻美は苦笑を禁じ得ずふふ、と笑みをこぼす。

「しかもこの子が今回急いで提出された内部資料を全部すっぱ抜いたって言うし。捏造じゃないのか調べさせるのに随分かかっちまったよ」
「ウチの優秀な秘書様5人かかりで夜通しひいひい言って、なおかつ分からなかったから、こっそり彼を呼び出して出所を目の前で検証してもらったでしょ?ママだって見てたくせに」
「声が大きいよ。監視カメラ越しだったからおおっぴらには言えないんだから…これでもう少しお行儀良ければお前の婿養子も考えるのに…」
「えっ?」
「ぬふっ?」
麻美母の何気ない言葉尻に、麻美、口の中にめいっぱいパティを詰め込んでいた庵も一瞬ごほっ、とむせ込みそうになり目を丸くする。
ふたりのキョトン顔に、麻美母は意地悪く、意味ありげに余裕の微笑を浮かべた。

「何でもないさ…全く、こんなご時世じゃあゆっくり湯治も避暑もできやしない。パパの墓参りにくらい、行きたいのにねえ」
「パパも寂しがってるだろうけどね。でも大丈夫よ、墓守は姉さん夫婦とあたしがやってるから」
でもまた今度でいいから神戸に来てあげてね、と麻美も微笑み返す。
過去と未来の鏡写しのような母娘に、庵は我知らず自分もほっこりした心持ちになっている事に気付いた。

彼女たちが談笑している間に目の前の食品群を胃の中に塩一粒も残さず収納すると、手拭きで指間の油を拭いながら「今どこ?」と呑気に問いかける。

「後5分もかからないわ。準備いい?」
「現地には野郎共に集合もかけてるし、ぬかりはないよ」
「有り難うございます。そんじゃ秋田の偽なまはげ、退治しましょうか」
テイクアウトセットの紙袋をぐしゃぐしゃに折りたたむと、庵の表情は途端垢抜けない田舎者から鋭敏な策士の相に変わった。

*

「さて到着」
突如ゲーセン前に現れた、百八十度場違いなリムジンから降り立った庵の姿に、何やらゲーセン前に出来ていた人垣は高級車と有名人の取り合わせにおっかなびっくりしながらもザワザワと騒ぎ始める。

「おいあれ」
「ああ!…マジかよ、すっげえ!アンサー庵じゃーん!」
「掲示板の噂通りだったぞ、マジもんだマジもん!」

「あれれ?何か俺噂になってる?」
アンサー庵だなんて、小学生時代のニックネームじゃんかと、心の中で庵は一人唇を尖らせる。
意外なギャラリーの待ち受けに、きょとん顔の庵に、車体の反対側から降り立った麻美も首を傾げる。
「あらまあ、そうみたいね。新潟で何か暴れたりしたの?春先のののちゃん救出劇みたいに」
「うんにゃ、何もしてないよ。どこで情報漏れてるんだか…後で調べてみるかな」
「有名税ってやつかしら。もう何年も前なのに大変ね~」

「うおお、何隣の彼女?すげー美人だ!」
「あれじゃね?マネージャー」
「えええええ!?うっそマジかよー」

「断じて違います(バっ、妙な噂になったらヒゲ先輩に殺されるだろっ!?)
自分の与り知らぬ所で盛り上がるギャラリーを断言口調で牽制すると、庵はゆったりと車内から降り立った麻美の母をエスコートする。
その匂い立つような和装の熟女が醸し出す色香に、たちまちギャラリー再び炎天下の中暑苦しく再燃。

「うっひょおおおお美人!」
「美人マネージャー二人か!」
「え、でもちょっと待てあれ…どっかで見たような…?」

「あらまあ、ママも有名税」
「おっほっほ…」
一人涼しい顔の麻美母を伴い、庵と麻美は自然と左右へと退いていく観衆のど真ん中を闊歩してゲーセンへと入っていった。

「さて、アンアンは二階だったかな」
初めて来る場所にも関わらず、勝手知ったる我が家の如く前を進む庵の後方を、同じく堂々と歩む女性二人に、周囲の人垣は誰がそうするでもなくささっ、と左右に散らばり道を開ける。店内は満員御礼、何故か皆上階=アンアンの筐体付近を眺めている。
さほどマスコミにも取り上げられている訳ではないクイズゲーム目当てに、何らかの理由ありでこれだけの人数が集まったのか。不思議な光景だ。
ざわつく観衆をよそに、庵の目に後輩の奮戦する様が浮かぶ。
その一つ奥、臨席には背筋の伸びた清潔感溢れる青年の姿も。

タイムアップ!…と、筐体から微かに聞こえた。
糸目が勝った声だけが聞こえ、対戦終了のゴングが鳴り響いている。

周囲のギャラリーは「おおー」とか「ほう」と大人しい溜息を漏らして彼らを見守っている。

その場の視線は、筐体で高らかに笑うアバターの姿に釘付けになっていた。

「あ、先輩!!」
勝負が済んでほっと一息していた敦は、自分たちを取り囲む観衆の中に庵と麻美を見つけ出し一気に顔をほころばせる。

「おう、帰ったぞ敦!で?どうだったんだ!?」
「見ての、通りです」
珍しく、自信ありげに敦はふふん、と胸を張って微笑んだ。

「先輩に言われた通り、大将として、プロアンサー撃破しましたっ!」
勝利の余韻で興奮気味な敦の肩を抱いて、庵は「よくやった!」と良く聞こえる大きな声で敦を褒め称えた。

【庵到着・敦は決着】












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