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ゲーム二次創作中心ブログ。 更新まったり。作品ぼちぼち。

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振り返れば奴がいる。

~そして伝説へ…~
*
「・・・・その声…お父さん!お父さんじゃないかっ!!」

振り返った先、階段の上がり口に汗水をダラダラ流してヒーヒー息を切らせて群衆をかき分ける老年の男性が一人。
着の身着のまま、と言っても過言でないような、くたびれたTシャツとよれよれの緑ジャージを履いた白髪交じりの男性は、茜の姿を見つけて「おお、おったぁ」と滝のように汗にまみれた顔を安堵でにっかりと崩す。
「よっ」と手を上げて、傍らには涼しい顔した敦の父の姿も。

「きょうこっ、杏子ぉぉぉぉおおお、げふっげふげふっ」
「ちょっと父さん、大丈夫なのか?まだ夏風邪完治してないんじゃあ…」
「バカ言うでねえだ!ウチとお前の一大事に寝てられるかあっ!げほげほっげほんげほん…」
「ああもうほら…そんな身体でどうしてここに!?ボクは大丈夫だって…」
「それがさあ杏子、昨日死んだ母ちゃんが俺の夢枕に立って言うんだよう…

『おめさなしてこんなバカげた縁談しようとしたんだ』ってさあ…

『一人娘の杏子の一生台無しにする気か』って、そりゃあおっかねえ剣幕でさあ…
おらあ、ちびりそうになりながら、おそるおそる聞いてみたんだ、なしてんな事言うべさってよう。
そしたら母ちゃんが『あんな沈没しかかってる舟に娘乗せようとしてたら怒るさあ!』ってよう!
そしたら、朝に会社行った従業員がびっくらするような事報告してきてよう、もうちょっぱやの大急ぎで新潟さ来て、阿南さんに事情聞いてここさ連れてきてもらった訳さ!
…はああ、還暦迎えて孫見たさに血迷うたわしが、わしがバカだったでな…」
「父さん?」
クーラー効きまくりのゲーセン内で、一人熱気をたてて汗ばみまくしたてる父を訝しげに見つめる茜に、父親はまくしたてるように止まらぬ言葉を続ける。

「帰るぞ」
「?!」
「そんなクソの足しにもなんねえ木偶の棒ほっとけ、帰るぞ!帰って仕事せな!
もう荒巻とは金輪際縁切ってやるだ!
あげなひでえ事する会社、もう知らん!
杏子や、お前にはもっとちゃんとした旦那探してくるで、今回は許してくれぃ…」

小柄な初老の男の一喝が、ゲーセン内に響き渡り、一瞬場を沈黙させる。
権太は、反抗はおろか、いつもぐずぐずと父に言われるがままだった杏子父の突然の変貌に言葉も出ない。
茜は、普段気弱で虫も殺せぬ父の激しい剣幕に、少なからず感動と衝撃を覚えていた。自分がしっかりしなければと常々思っていたのに、ついぞ見ることのなかった父の男としての気概を肌で感じ、不覚にも涙腺がウルっとなってそっと瞼を押さえる。

「なっなっtfghjkmlcvbんm、…ちょっ!!おっ、おめえ、俺んとこからどんだけ貸しがっ!」
「見苦しいなボウズ。金銭だけで人が黙ると思ってるのが、そもそもおこがましいねぇ」
渋い顔の敦父の苦言に、権太はぷるぷる唇を震わせる。

「黙れや線目のオッサン!俺の家はすげええんだ!お前んとこみたく、地味で!ださくて!古くさい酒なんざ誰が呑むか!!手作りなんか今時誰もいらねえんだよっ!機械に任せとけば全部同じもんが作れるっちゅうのにっ!どうせ消費者に味なんか分かるもんかよっ!だせえっ!!コメぬか臭いんだよっ!!ばーかがぁ!!

苦し紛れに放った一言で、杏子父のボルテージは最高潮に達したようである。
大人しい人ほど、怒りが頂点に達すると恐ろしい。リアルでなまはげ状態に顔を紅潮させ、杏子父、再び吠える。

「よっ…ようもようも言うたなこんクソ餓鬼があああ!酒造なめんなや!
…もうええ、今の一言で、今朝届いた資料が本物だと、ハッキリ分かったわ!借金?んなもん即刻熨斗付けて返してやるわああ!!
いや、むしろこっちがもらいてえくれえだ!後で確認取れ次第、地元の組合連中連れておめえの家に殴りこみに行ってやるから覚悟しとけっ!!
二度とヤクザな商い出来んように出すとこ突きだしてやるわいっ!!」
きっしゃああああと、今にも吠えかかってきそうなばかりの強面で怒りを露わにする杏子父の姿に、全てのハッタリと万策尽きた権太、頭の上でひよこが回っているような錯覚を覚え、足下がゆらゆらと震える。

「ま、わしも見せて貰った資料を鵜呑みには出来んが…真実なら、あんた、倒産どころじゃすまんよ。謝罪だけじゃあ済まされんね。その小脇に挟んだもの、帰ってじっくり良く読んで、どうするか考えるんだねボウズ。…もう、後の祭りだろうがな」
「えええええええ!!!ちょっ、マジで…マジなのか?…うそっ、うそだっ、うそだああああ…」

敦父の一言で、巨体が傾ぐ。
そして、黒い巨塔がゆっくりと、背後へとそのまま倒れ込んだ。

驚き飛び退く観衆の中から慌てて取り巻きの下っ端が駆け寄ると、ショックで失神した権太をえっちらおっちら担ぎ上げ、目を丸くする周囲の視線に身をすくませながらすごすごと出て行ってしまった。
「覚えてろ!」というひねりのない捨て台詞を誰かが吐き捨てたが、もはやゲーセン内の音響と周囲のざわめきで霞んで聞こえはしない。聞こえていても、誰も聞いてはいなかった。
周囲のどこからか「あの倒れた奴、有名な遅答屋だったってよ」「マジでー?」と誰かが囁く声が聞こえたような気がしたくらいだ。
どこからそんな情報がもれていたのかはともかく。

その場から黒い巨体は消え、代わりにポケットから落ちたのか、大勢の足下へとぽつりと残された一枚のICカード。
誰もが一階へと連れ出されていく権太に気を取られている隙に、陰善はそれとなくそれをつまみあげると、「回収完了」と、ほっと胸を撫で下ろした。

「勝った?」
あまりにもあっけない終幕を前に、周囲が唐突な事態に呆然としていた中で、場の中心にいた敦が現実を確かめるように呟いた。

「じゃ、ないのかな?釈然としない部分はあるけど」
「だな。だが勝ちは勝ちだ。お前は正当な勝負で勝利してるんだ。胸張って良いぞ、敦」
晶と大輔の相槌に、敦はほっと胸を撫で下ろす。途端、頬が緩んで笑顔がこぼれた。

「ボクも嬉しいけど…何だかスッキリしないな」
自分の腰元に抱きついて「すまんかったあ、すまんかったあ」と泣きすがる父をなだめすかしながら、茜は庵に視線を向ける。
庵は笑って、朝比奈社長と隣あってニッコリと笑い合う。
社長は「やっぱり男っていうのは、ここぞって時にデキる男だよねえ。死んだパパもそうだったわぁ」と満足げに呟き、紫煙を細く吐き、慣れた手つきで携帯灰皿に潰して豊かな胸元に楚々と収める。

「男女鹿酒造さん、人情話はそのくらいにして…ちょっとだけビジネスの話をしませんか?」
「ほへ?」
藪から棒になんですかい、と杏子父は涙で真っ赤に腫らした顔を上げる。

「いやあね、ウチは道内で発着してる旅客機の国際便にアルコール提供してるんですけど、実は日本酒ってとっても受けがいいんですのよ。でも、信頼出来る蔵が中々見つからなくって」
「はあ」
「それでですね…是非ともそちらさまにお願い出来ないかと思っておりまして。実は、新潟に来ましたのもそのためですの。ええと、こちらが阿南酒造さんですわね。先程、お電話差し上げた朝比奈ですわ」
「はい、何だかいきなり良いお話いただいて、恐縮ですな。複数年で契約してくださるとか」
でもって量はこれこれこのくらい、と敦父の身振り手振りに、杏子父、卒倒しそうなほどに「そんなにっ!?」と身を強張らせる。
「そうです。でも、流石にウチだけではとてもまかなえない量なんで、出来たら男女鹿さんとこにもと、さっき電話で相談していたとこでして」
「おっ、う、ウチですかっ!」
「ええ。こちらでの視察が終わったら是非にも伺おうと思っておりましたので、出来ましたらまた後日改めて会社訪問させていただいてよろしいかしら?」
「おおおお、ありがてえ、ありがてえですわあ!仕事もらえるだけで今はもうもうっ…」
また感極まっておんおん泣きわめく父親を無理矢理引っぺがすと、茜は敦たちの前に歩み寄る。

「敦、安住に穴輪。みんなありがとな。まだ全部分かってないけど…ボクもボクの実家も助かったみたいだな。今回の事、本当に感謝してる。東京帰ったら焼き肉ゴチするから、絶対一緒に行こうぜ」
「ええ勿論。といっても僕はほとんど何もしてないんだけどね。頑張ったのは敦だし」
「焼き肉ってチョイスが女らしくないが…でも賛成だな。便乗して食いまくってやるか」
「うるせえなこのスライムべス毛!やっぱお前は来るなっ!」
「ええええっっ!なっっちょっ!」
何か言いたげな大輔を遮って、茜はにかっと、歯を見せて敦に笑いかける。

「敦、お前は絶対に来いよ。な?」
「え?はっ、…はい!!」
喜びと初々しいときめきで顔を紅潮させてにやける敦をよそに、茜はすぐに麻美と庵の方にも頭を下げる。

「安佐、麻美、二人ともトンボ帰りさせた上にすまなかったな。…つか、なんだかウチの仕事の尻ぬぐいまでさせちまったみたいだし」
「いーや全然!むしろもう少しでバカな役員連中がウチにとんでもない負債を生み出しかねないとこだったのよ!茜ちゃんの連絡で、実家の危機も免れたんだから、このくらいはさせてもらわないと」
きっぱりと言い切る麻美に、庵もうんうんと頷く。

「まっとうにやってれば、良縁から幾らでも助け船は出てくるもんさ。俺はその手伝いしただけだから、気にしなくっていいよん」
そんなことよりショート先輩、と庵の視線がちら、ちらととある方向へと向かう。

「一番頑張った子に、ご褒美はないの?」
「え?」

はたと視線の先にいる人物と、視線がぶつかる。
互いに何故か、見つめ合ってすぐに俯き、視線が床と互いを行ったり来たりしている。

「あの」「あの」 「あっ」

「わり、何だ?」
「えっ、いえいえ茜さんからどうぞ」
「いやお前から言えって」「いえそんな」
周囲の人だかりや視線を気にしてか、双方もじもじうじうじ…。

「ダチョウ倶楽部かよ」
堪えきれずに突っ込む大輔に、即座に緊張しきっていた茜の厳しい視線が突き刺さる。

「黙れ黙れよスライムベス!てめえ頭の先だけ尖らせすぎなんだよっ!!何だその髪型?威嚇か?武器のつもりとかか?
「んだとゴルァ!!女ゴリラが人語しゃべんなっ!!
「あっあっあの、お二人とも他の方が見てますってば…」
敦が慌てて止めに入るも、二人の間には火花がバチバチと…。

「何をこの芋頭!栗頭!スライム頭っ!!やっぱてめえとは白黒つけないとならないみたいだなっ!」
「おおよかよか、表出んね、のしちゃるけん」
「ちょ、ちょっと大輔君、この場でリアルバウトはまずいってば!周りは…」
「そうですよっ、お二人とも止め…」
「陰善ちょっと下がり。こいつはよかよ。だって女のナリしたゴリラだけんね。見んね胸板の洗濯板ぶり
「あんだとこらあ!!敦邪魔すんなっ!用事済んだだろ?ちょっと下がっとけ」
「あっ、茜さん、それより、その、僕その…」
「敦お前は後だっ!そこのトサカ!てめえはボクを怒らせた!その無駄な頭の出っ張り平たくして、きりたんぽのダシにしてやるぜっ!!

一触即発の九州赤毛モヒVS北の筋肉小町、あわや本気の殴り合いとなるかと思われたその時。

大輔の背後で、ぷちりと何かが切れる音がした。

「何ね…この寒気、冷房急に温度下げたっとか…?」
「いや…違うぞ九州もん…!この寒気…お前の背後から出てるっ?!」

「あ…あああ…にいちゃんが…にいちゃんが…怒った…今まで一番怒ってる…」
謝るタイミングを計っていたネムは、今まで一度も拝んだことのない、兄の凶相に心胆の底まで寒気を感じその場であわわわと震えおののき、困惑する父の背に隠れ震え上がった。

その場にいた誰かはこう証言している。

「目からザラキ出してる奴見た。リアルで」


「 お ぎ ょ う ぎ ぃっ!!」

響き渡る戦慄。
そして、あどけない童顔の青年から溢れ出す殺意の波動。

その表情には、幾重にも憤怒の皺が畳まれ、剥き出された歯茎と額に幾筋も浮かんだ青筋により、それが容易には解除されないことも瞬時に見て取れた。

某世紀末の覇者降臨の如く、その場に居る者全てをその場に釘付けにする絶対零度の恐怖がゲーセンの二階を覆い、他のアーケードゲームに興じていたプレイヤーの手すら止め、二階設置のゲーム全てが正常稼働しつつもプレイされないという異例の事態にみまわれた。

その後、流石に営業妨害だと店員が涙目で訴えるまで、シラフでぶちぎれた敦君による正座矯正&観衆の生暖かい視線を浴びつつの大説教大会がシガユニバース二階で行われたという。
これ以降、兄のもう一つの顔を知ったネムは、「二度と兄に逆らうまい」と固く心に誓い、心を入れ替え自立する決心を固めたのであった…。

【7月23日昼・勝負終了・敦が新技を習得したようです】












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