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ゲーム二次創作中心ブログ。 更新まったり。作品ぼちぼち。

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真冬の日の悪夢。
*
元々、陰善は裕福でない身の上だった。
数年前父親に先立たれて、父の遺産でどうにか医大に通っているが生活費はバイトで捻出している苦学生である。
東京にいる外科医の叔父に身体の悪い母の面倒をみてもらっているため、週に一度東京へバスで見舞いに行く。その帰りの時間潰しに始めたゲームだった。

「これって、大体十分刻みで一回のプレイが終わるでしょう?待ち時間で丁度二・三回。最初はその程度だったな」

たまたま同じゲーセンを利用していた縁で知り合った王者、大輔とはプレイスタイルや境遇が近かった事もあり、気付けば随分と親しく遊ぶようになった。

普段バイトと大学と病院の往復ばかりだった陰善にとって、久しぶりに出来た若者らしい友人と遊びの時間。

「一緒にクイズをしていて楽しい」という思いがモチベーションになり、バイトを一つ増やし、地元でも暇を見つけてはゲーセンに通った。
自然、得意な分野=自然科学ばかりが伸び続け、いつしかそこの尖りを鋭利にさせるのに熱中し始め、いつしか某巨大掲示板でも名前を知られるプレイヤーになっていた。
名前が知れてくると地元新潟でも知り合いが出来て、アンアンを中心に交友関係は瞬く間に広がった。
病床の母も最初は苦笑いだったが、友人の話を聞かせている内に「久しぶりにお前の楽しそうな顔を見た」と喜んでくれたり。

その頃が、一番プレイしていて楽しかった時間だった。

しかし。

きっかけはささいないさかいだった。

ある日、順番待ちを無視してどかないプレイヤーにサツマがきつい物言いで注意した後、その相手と友人とおぼしき複数名に掲示板で繰り返し中傷をされるようになった。標的は最初サツマのみだったが、次第に陰善を含めて彼の周囲にいるプレーヤーにもウソ八百の悪口が派生していった。

全くのでたらめばかりだったので当人は無視を決め込んでいたが、流石に何日も何日も手を変え品を変え誹謗中傷してくる相手に、とうとうたまりかねて掲示板で反論の書き込みをしてしまい、ネット上で大喧嘩になった。

王者も人の子である。

周囲の人間は理解してくれているのだが、掲示板を真に受けて自身のブログに心ない煽りや「王者さんってそんな酷い人なんですか?」とわざわざ訊ねてくる相手にストレスを溜め、楽しくてやっていたゲーム上でも「王者斬り」ほしさにすっきりしない…むしろイライラが倍増するような相手が増え、彼の苛立ちはピークに達していたのである。

サツマ自身も伊達に王者を名乗っている訳ではない。
言葉巧みに相手の発言を突き、ボロを出す相手に追い打ちをかけてぐうの音も出ないほどに言い負かしてやったのである。
後に自身のブログで「自分のためだけでなく、知り合いのためでもあった」と述べている攻防は夜八時半から翌日早朝四時まで続き、王者を含め掲示板を閲覧していた他プレーヤーからも非難の的となってしまった相手は一旦掲示板からもゲーセンからも姿を消した。

これで、事態は収束したかに見えた。が、まだ終わっていなかった。

「彼、男子校出身だからか礼儀とか上下関係に凄く厳しかったんだよ。マナーもプレースタイルも真摯だったし。まあ、一人でプレイしてるときしか吸ってないとは言ってたけど、喫煙だけは控えた方がいいなって思ってた。でもそのくらいかな」

「当たり前だろ?お前みたく煙嫌う奴多いし。…っと、その、俺も、そこいらは気使って店対の時とか絶対吸わないし」
「俺もついこないだまで知らなかったし」
大輔さんも全部止めたらもっといいのにー、と何気なく唇を突き出す庵に、大輔は心中滝のような冷や汗をかいていた。

「それでは、王者さんには非はなかったと」
「と、僕は思うよ敦君。アンアンの大会にも見学で良く顔出したけど、彼本当に友達が多くてね。人徳だと思うよ」
「へえ」
何故か俯いて頬を紅潮させる大輔に、一人ネムは顔を見上げて首を傾げる。

「で、先程のケンカの相手と何かあったんですね?」
「うん…」

年も明けた半月後の一月半ば。
大学の長期休暇もあって「たまには陰善のホームでプレイしてみよう」という事になり、彼と大輔はこの新潟に来ていたのである。

そして事件は起きた。
いつものように店内対戦をしていた後、全国対戦をお互いにプレイしていたその時。

突然、筐体の電源が落ちた。
慌てて店員を呼ぶと、「漏電のおそれがあるから」と筐体から店内の事務所へと呼ばれ、そこで修理の間小一時間ほど待たされた挙げ句、何も応答がない。
焦れて店内に戻ると復帰した筐体があったものの…。

二人ともICカードがなくなっていた。

別の店員に訊ねるも、何の事かさっぱりな様子で要領を得ない。
先程応対に当たった店員の容姿を説明すると、急用で自分と行き違いに帰ってしまったと言われ、筐体の電源トラブルも申し送りされていないから保障も何も出来ないの一点張り。
互いに顔を見合わせて、真っ青になった。

「あの時、丁度バージョンアップの前でケータイサイトがなかった頃でな」
「それがあっても、僕はこの通りPHSだから、どちらにしろ真っ青になってただろうね」

それから半日後。
さっそく某大型掲示板で書き込みがあった。

「王者のカードゲッツしたwwwさっそくこれで遅答三昧wwwww」
「あと自然科学マスターのカードも。誤答でどこまで減るか試してみる(笑)」


…何の気なしにサツマが自身のブログへ書き込んだ「新潟へ遊びに行く」との記事を読み、彼を逆恨みしていた件の相手が地元の知り合いと結託して行った報復が、これだったのである。

…スレッドは炎上し、すぐに全国対戦の接続先から所在が知れて犯人=店員とグルになっていた例のプレイヤーは「王者だけでなく、超優良プレイヤーのカードまで盗むとかこいつ、バカじゃねえのか!犯罪だろ!」と憤った他プレイヤーの結集によって身柄確保された後たっぷりとお仕置きされ、ゲーセンの店長からは平身低頭で詫びを入れられ、ほどなくカードは取り戻された。しかし…。

「既にその時点で、十回くらいプレイしててね。一時六千近くあったポイントが、電源落ちのペナルティに加えて手元に戻ったときには五千切ってて。あの時はもう立ち直れないくらいへこんだなぁ」
「お前泣いてたもんな。俺はそれ見て更にへこんだし。…巻き添えにしたくなかったぜ」
思い出したのか、陰善も大輔もしんみりとした面持ちで青空を見上げる。

「その後、一気にモチベーションがなくなって、それでもう引退する事にしたんだ。真面目に勉強しろ、って神様に言われたと思ってね。当時は随分色んな人から励ましてもらって、逆に申し訳ないくらいだった。僕みたいな、どうでもいいようなプレイヤーにさ」

「いや、お前今でもGPerに尊敬されてる存在なんだぞ?爆破もなかった頃から早押し主体であれだけ積んでたのは実力だって」
「それは…サツマ君もじゃない?ネット上でも人気高いし、当時は僕と違って2ジャンルマスター兼任してたし」
「えええ?!」
驚く敦に、「ロケテからプレイしてる猛者だからね」と陰善は答える。

「歴史地理社会とスポーツ。いまだにあの2ジャンルでは勝てる気がしないね」
「学問もサブカルもどっちもいけるんだ…」
「そうそう。実力は折り紙付きだったんだ。なのに僕のせいで…」
「僕のせい?」

2008:1:×× 23:59 【報告】

来月いっぱいで王者辞めます。
色々考えて、先輩にも相談した結果、新潟での一件のけじめをつけさせてもらう事にした。
なんで、今月末まで店対のみ受付してます。全国はもうしない。
カードは封印しておくことにした。折ろうかと思ったけど、それは周囲のみんなに全力で止められた。
それでなんか涙出てきた。もうお腹いっぱい。悔いは無い。バイトも半分に戻す。
精神的にも体力的にも、もう限界だ。
ジャンルマスターは電ブチの影響もあって両方とも陥落確定したし、これでいいと思う。

次の王者は…QuOさんだろうな。あの人がなるなら納得出来るし、俺も店対で勝ったことないし。
よっぽどの事がないと、もうプレイしないかもしんない。
とかいいつつ、サブ作ってまったり遊んでるかもしんないけど(笑)
でも、その時は笑ってスルーしていただけると嬉しいです。

それじゃ。


「…やめちゃったんですか?!」
「うん。都内の大会を最後に、彼もその後一切プレーしなくなった。僕もブログ見た後慌てて電話したけど、決心が固くて。…それから何となく、お互いに顔合わせづらくなって、そのまま半年くらい会ってなかった。噂では、春から昔のライバルに偶然会ったからサブ作って遊んでるらしいけど、本当昔と比べるとささやかな程度のプレイ数なんだって」

「へえ…で、『会ってなかった』と言われましたけど、最近お会いしたとか…」

「うん、昨日ちょっとね。元気そうだった。気にかかってたから、ホッとしたかな。今日の事も話して、勝っても負けても、これを機にまた時々遊ぼうかなって言ったら喜んでくれて。東京来るときには連絡しろって」
僅かに口元に笑みを浮かべる陰善の嬉しそうな横顔に、敦は不思議な安堵感を覚えた。

「で、そのサツマ君なんだけど…彼、そろそろ復帰しようかと思うって」
「マジで!!」
庵がすかさず食い付く。
「ええっ今どこ?新潟いるの?俺ちょー対戦してえ!王者っつったらチョー強いんだろ?!」
「(…あの時、言わなくてマジで正解だったな…)」
大輔が苦虫を噛み潰したような渋面を見せたが、庵は気付かずどこ吹く風のハイテンションである。

「九州で行われる、アンアンのイベントでゲスト参加するって聞いたよ」
「なっ…なんでそれを!?」
ほぼ同時に、庵と大輔が同じ反応を示す。庵は興奮しきりで、大輔は困惑気味に。

「昨日の深夜にオレゴンさんから電話が来てね。彼、出るらしいよ。今、SIGAが全国キャンペーンしてるのは知ってるよね?八月前半に行われる北九州大会か、後半セミファイナルの鹿児島・南九州大会、どちらかにエントリーするんだって。今のところ北の方が出場濃厚だって聞いたけど?」
「ええっマジで!日程は!日程は!?」
「ええっマジか!そこまでは聞いてないぞ!?」
「あれ、お友達なのに知らなかったんですか?大輔さん」
意外だなあ、と呟く晶に、大輔は「あ、ああ」と珍しく非常に曖昧な返事を返す。

「うん、だから大輔君にも伝えておいてね、とオレゴンさんから伝言。後、彼にこれを手渡しておいてほしいんだ」
そう言うと、陰善は財布から大事そうに一枚のICカードを抜き出し、両手で包むように丁重に大輔の掌にぎゅ、と手渡す。
裏面に「封」の字が書かれたICカード。
その手の力強さに、大輔は思わずはっと息を飲んだ。

「これ、君が王者からずっと預かってたんでしょう?なくしちゃダメじゃないか」
「あっ…ああ」
さっきからずっと大輔を訝しげに見上げているネムの視線を気にしつつ、陰善は言葉を続ける。

「彼に会ったら伝えておいて。また全国対戦で会えたらいいねって。…頼んだよ」
「…分かった。必ず、伝えておく」
「有り難う」
握った掌をそっと離すと、陰善は目元をぬぐって顔を上げた。

「さ、行きましょうか」
交差点の向こう、アーケード街の一角に「シガユニバース」の派手派手しい真っ赤な看板が見えた。
かんかん照りの青空の下、まばらな人影が遠目からも確認出来る。

誰かがこちらに気付いて手を振る。
陰善と大輔が手を振り返すと、庵達も一緒になって横断歩道の向こうから手を振った。

【続く・この後は店内対戦でまったり】












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