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ゲーム二次創作中心ブログ。 更新まったり。作品ぼちぼち。

おともだちといっしょに。
*
俺が別館内に滞在していた時、あの時、あの場所で、どれだけの時間が経過していたか定かではない。
だが、その後あの地下室を出て、薄暗い研究室内部で起こった悲劇の全てが少しずつ目の前に開けていくにつれて、俺はあの日のフタバの笑顔が瞼に浮かび、それは次第に焼き付いて離れなくなった。

フタバは、「おともだち」と手を繋いで、俺をラボの隅々に案内する間じゅう、ずっとにこにこと笑っていた。

…おじちゃん、ここでぼくたちいつもべんきょうしてるんだよ。
…ドリルやきょうかしょはね、「おともだち」がみんなそとからもってきてくれるの。
…そとはね、わるいひとがいるからでちゃだめだよって。「おともだち」がおしえてくれたんだ。
…それでね、いっしょにべんきょうしたからいっぱいもんだいとけたよ。もう、ちゅうがくせいのおにいさんのべんきょうもしてるよ。

…すごいでしょ?もっとべんきょうしたら、おとうさんのおてつだい、ぼくもできるようになれるよね…?

狭い二畳半程度の四角い部屋。きっと子供を押し込めておく小部屋だったのだろう。薄暗い照明の下には、うず高く積まれた参考書とドリル、教科書が学年順にきちんと整理整頓されていた。今やっているのであろう、「中2 数学」と書かれた教科書と黄ばんだノートを手に取る。米粒のような細かな字でびっしりと書き込まれた数字の羅列。解けるまで繰り返し繰り返し反芻された、同じ公式。しかもそれを解いている。自力で、答えあわせも無しに。教科書の裏を見る。そこにはフタバとは異なる名前があった。

…「たかし」くん?「たかし」くんはね、いまおやすみなの。さっきまで、いっしょにおべんきょうをおしえてもらってたから。
…え?どこにいるのって?いまはね、どこかとおく。でもね、じゅんびができたらまたよべるよ。とおくだけど、いつもいっしょだから。

その際に、フタバから聞いた「おともだち」の名前は、この施設で犠牲になった少年少女、約半数の氏名にぴたりと一致した。
その数、20名。年齢は小1から中2までまちまち。
いずれもペルソナ能力を有し、生存者の証言や資料に基づき死亡時期を順番に並べると、一定の法則が見いだされた。

ペルソナは、シャドウと同じくタロットの大アルカナで23種類に分類される。
すなわち「0」の「愚者」から始まり、最後は「21」の「世界」まで。
フタバの持っていたアルカナは「愚者」…始まりのアルカナ。
そこから巡を追うように、「魔術師」「女教皇」「女帝」「皇帝」「法王」…と、所有していたアルカナの順にこのラボに連れてこられ、「実験」の後にシャドウの餌にされ、殺害された。

「実験」とは何か。
…ペルソナの素養、ひいては他者の所有するペルソナそのものを、根こそぎ他人に移植する、実験だった。












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