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ゲーム二次創作中心ブログ。 更新まったり。作品ぼちぼち。

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先日、「silentunity.net」管理者・沢村脩様にチャットで「互いに曲でお題を出し合ってアンアンの小説を書いてみないか」との有難いお誘いを受け、お互いのサイト・ブログ上での共同企画と相成りました。

沢村さんからは有名アコーディオン奏者・coba氏の楽曲「野球帽」を、
自分側からはKREVA(feat:草野マサムネ)の「くればいいのに」を。

沢村様、お声かけていただき有り難うございました。
常々、一読者として拝読させていただいております身としまして、光栄の至りです!

沢村様の作品へはこちらから→


今回アップしますのは、沢村様からのお題曲「野球帽」前編でございます。
いつも通りに長くなってしまったので、前後編という形をとらせていただきました。
短くまとめるのは難しいですね…(´・ω・`)

※今回はストーリーのテイスト上女性向となりましたので、ダメな方はご注意を!
※キャラ設定等は普段SSに使用している名前を使っておりますが、細部で異なる設定を用いております。パラレルワールド、という解釈でご理解いただければ幸いです。

上記ご理解の上で、お読みいただけますようお願いいたします。

*
〈登場人物〉

・安佐 庵(あんさ いおり・デフォ男)
私立アーサー国際大学二年。経済学部&クイズ研究サークル所属。
元「日本一のクイズ王」と呼ばれ、様々なクイズ番組を制覇してきた伝説のアンサー。
見たもの全てを記憶し即座に引き出せる驚異的な記憶力と演算能力(=通称・ライブラリ)を持つ、本物の天才。現在は能力低下等の理由で、平凡な大学生としての日々を過ごす。
性格は明朗快活・まったりマイペースな大食い青年。
晶とは小学校時代からの幼馴染み。

・安住 晶(あずみ あきら・ロン毛)
私立アーサー国際大学二年。経済学部&クイズ研究サークル所属。
容姿端麗・成績優秀なエリート大学生。
庵とは自称:最強最悪の腐れ縁であり、高校時代は共に高校生向けクイズ番組に挑戦した経験を持つ。政治家一族の次男でボンボンだが、気遣いに溢れ、面倒見の良いお人好し。
現在、隣部屋に暮らす庵の世話役認定をされている、気苦労の絶えない親友。

・阿南 敦(あなん あつし・糸目)
私立アーサー国際大学一年。経済学部&クイズ研究サークル所属。
クイズ王と呼ばれた庵に憧れ、新潟から進学のために上京してきた青年。
礼儀正しく控えめだが、ことクイズになると熱くなる。サークル内の弟分的存在。






2008年、5月。
目にも眩しい、五月晴れの午後。

「ちぇっ、野球帽になりやがった」
吐き捨てるように小声で呟いたつもりだった。

ただでさえ騒々しいゲーセンの二階。
日差しの強い春の昼下がり。

鬱陶しくさえ感じられるようになった日差しがじりじり、じりじり、ガラス張りの背面からパーカーの背中に差し込んで苛立つ。
背中が汗ばんでくるこの感じ。
不愉快な記憶を更に刺激する。

だから、そういう間の悪い時に間の悪いことを言った敦がいけないのだ。多分。

「あれ、先輩野球選手になったんですね~。似合いますよぉ」
「はぁ?何か言ったか」
俺は自然ときつい目で睨み付けていたらしい。
普段から礼儀正しい後輩がぎょっとした面持ちで俺を意外そうに見つめる。
ただでさえ細い目の奥で非難がましい困惑と不可解が揺れるのが見て取れて、そこではたと我に返る。

「えっ、僕、何かいけない事言いましたか…?」
「あっ…いや、悪い。ただの、趣味の問題なんだよ。アンダーウェアじゃなくって、俺サッカーのがいいや」
「あ、あー…なるほど。そうだったんですか」
幾分腑に落ちない様子だったが、敦は納得したようだった。
ほっと胸を撫で下ろす。

その後、敦に晩飯代わりのラーメンをおごってやり、一人学生寮に帰宅する道。
坂が多い帰り道。実家の、緩くて長い陰鬱な帰り道を思い出してまたブルーになる。
ゆっくり、ゆっくり、泣きながら帰った道の先に、腕組みをして仁王の如き形相で待ち構えている父がいるようで。
部屋に着くなり、ベッドに突っ伏して目を閉じる。死してなお消えない、父の残滓。
トラウマを簡単に捨てられない、自分の優秀すぎるオツムが今はただ恨めしかった。

*

ちょっと買い物にでも行かない?と隣室の幼馴染に声をかけられ、いそいそと出かける日曜日。目に青葉、と言いたくなるような若葉の新緑が、葉の切れ切れに差し込む陽光が眩しい。

「どう?来てよかったでしょ」
こんないい天気にお部屋でごろ寝は勿体無いよ、と幼馴染=晶は笑う。

流行のメンズモデルをそのまま雑誌から引き出したような、眉目秀麗のすらりとした体躯。
グレイのスプリングコートにシャツ、チノパン、割りにあっさりした着こなしなのに無駄がない。隙もない。背丈に見合った、長く伸びた足は引き締まっていて、ローファーの底を軽やかに叩いて歩く。

相変わらず決めてるなあと、口笛を吹くと晶は心底照れくさそうにはにかむ。
軽いギャップ。
もっと誇っても良さそうなのに、晶はいつでも容姿を褒めても「上がいるから」と苦笑をこぼす。年の離れた異母兄のことだろうが、晶の良さは晶だけのものだと力説してもなかなか分かってもらえない。

「庵、お昼何食べたい?」
「んー?牛丼」
「吉野家の前でそれを言うの?たまにはカフェに行こうよ。ね?」
俺がまだけだるさを抱えているのが分かるんだろう。そういう時には努めて晶はこちらを先導する。

あれしよう、これしよう。かいがいしいほどのナビゲーター。
それが心地よく感じている自分の、虚しさと計算高さが時折嫌になる。
でも、晶もきっと分かっている。
分かっていて、俺の相手を自ら買って出ている。
それがただ素直に嬉しくて、今日もここにいる。

「後で服でも見に行こうよ。靴も欲しいな」
「お前は充分じゃね?」
「ええ~…欲しいブランドのジャケットがあるんだよ。一緒に見てよ」
「あいよ」
日差しにまどろみつつ、いい日だなと思っていた俺の視線の先に、小さなディスカウントストアの軒先が留まる。
セール、と印字された安っぽい張り紙の下で、大量にカゴ積みされた帽子やソックス、エコバッグ…。

緑に白縁の、小さな野球帽。ちょうど、小学生サイズ。

俺の表情が固まったのに気づいたのだろう、晶の「大丈夫?」と囁く声が、遠のくのが分かった。

*

俺は田舎のごく平凡な家の子だ。
親はかつて野球一筋だったサラリーマン、母親はテンプレ通りの小太りなパート勤めの主婦。姉は中の中な容姿と成績。
俺自身、背もそう高くはないしむしろ小柄。それに、体力も並で喧嘩も弱い。
容姿はいたって凡庸。
目ばかり大きくて、髪は堅くて逆立ってばかり。寝癖直しも厄介でたまらない。
さらさらヘアの晶が時折うらやましくなるくらいだ。

だけど、神様は一個だけ俺に宝物をくれた。
それが記憶力。

俺は、見たものを何でも覚えていられた。
一度見たら、忘れない。
そして、いつでも網膜の裏側に思い描くことができた。

みんな、何かを覚えるのに四苦八苦するのが、小さい頃は不思議でならなかった。
だって、覚えるのなんて息をするように簡単なことだと思っていて疑いもしなかったから。
だから、幼少時は新しいことを知るのが大好きだった。テレビよりも本がいい。
直接的な映像よりも、活字の世界を自分の好きなように思い描ける方がワクワクしたから。
思えば、内向的な性質だったのかも知れない。
だが、そうならなかったのは良くも悪くも父の存在が大きすぎた故だった。

*

父は野球に並々ならぬ執着を抱いて生きている人だった。
前途有望でありながらドラフト間近で致命的な故障を起こし再起不能となり、失意の中就職し、母と結婚した。
姉の後、二度の流産を経て出来た俺に、父は野球選手としての才能を求め、自分の子として生まれてきた俺に一身に期待を寄せた。

「自分と同じく、運動能力に秀でた息子であれ」と。
だけど、運命は非常に皮肉な形で父の願いを打ち砕いた。

息子の俺には、全く野球の才能はなかった。
ドッヂボールもサッカーも短距離走も一応人並レベルであるのに、何故か野球だけは下の下。
日曜日、リトルリーグの練習試合があると毎回やってきては檄を飛ばす父に答えられず、父の熱意にほだされてお情けで出されても三振。守備も緊張して失敗ばかり。
最初は「やればできる」「練習だ」と意気込んでいた父も、次第に試合後に家で反省会を開き、俺を正座させ、鬼の形相で気合が足りない、何だあれはと怒鳴りちらすようになった。

結局、俺は8才の春に少年野球クラブをやめた。
父は「根性無しめ」と罵り、以後俺に期待しなくなった。

父は焦っていたのかもしれない。
自分の息子が何の取り柄もないとしたなら、世間になんと言われるかと。
父は、自分でいつも「俺は学がない」とこぼしていたから。
学者の家系に生まれて、ろくな学歴を持てなかった学歴コンプレックスの塊が、父の胸をいつも塞いでいた。
当然、俺も勉強が苦手だろうと考えていたのだと思う。
だから、もっとそのことに、早く俺が気づいていればよかったのに。

俺は認めてほしかった。
何でもいいから、もう一度振り向いてほしかった。
家で何を話しても見向きされない。
いない存在のように扱われる。家族も、父を怒らせまいと父に追随した。
だから、一番簡単で、一番明快で、一番得意なものを、俺は磨き続けた。

学問だ。
計算なんて遊びと同じだったし、教科書覚えてればテストは楽勝だったから。
勉強はいつも一番。塾も家庭教師もいらなかった。
それでも家では何の反応もない。
勉強は出来て当然だと、小学校時代0点ばかりだった父が鼻先で笑う。

報われない努力。
それでも諦められなかった俺が辿り着いたのは、「クイズ番組」だった。

町内会でのクイズ大会で偶然声をかけられ、後はトントン拍子に様々な番組に出演できるようになって。
最初は小学生だと思って手加減していた大人たちを、俺はいとも簡単に撃破しまくった。
問題はやればやるだけ俺の記憶の糧になり、回を増すごとに難度が上がる問題に果てしなくワクワクした。
更に弱点も無くすべく毎日図書館に通い、新聞を隙間なく読み、テレビの歌謡曲も歌詞を一言一句逃さず聴いた。
俺は有頂天だった。ちやほやされるからじゃない。

これだけ日本中が自分を「天才少年」だと褒めてくれる。
これは俺の、俺だけの、俺にしか出来ない偉業だという確かな手ごたえが、幼い俺の胸を満足させていた。
外で実績を積めば、他の誰かが俺を手放しで褒めてくれたら、いつかまた父も家族も認めてくれると、
そう思っていた。思えていた…。

だが、父の反応は俺の予想と真逆であった。
当時、賛辞を待つ俺に対し「これ以上目立つことをするな」とテレビ出演を無理やり止めさせた。
そして、以後勝手なことをするなと厳命し、事態は何一つ変わらなかった。

いや、もっと酷くなった。
父は俺をことさらにあげつらい、優秀な成績表を持って帰る度に不愉快そうにそっぽを向いた。学校の話をするたびに咳払いをし、煙上がるようになり、隣に座ろうとすると無言で席を立った。

理由が分からなかった。

なぜ、努力しているのにねぎらいの言葉ひとつかけてもらえないのかと。
学校でも、俺は次第に、静かに孤立していった。
表面的にはいつも明るく振舞っていたけど、その実、陰で「あいつは内心で馬鹿にしている」などと、見当違いのひがみを受けているのを知って、そのうち適当に気を使いながら周囲にも距離を置いた。
理解してくれている数少ない友人たちとも高校進学でほとんど離れ、時が経つごとに家でも孤立無援。

耐え難い孤独と、無理解。

野球帽は、俺の孤独を思い起こさせる。
父との絆と、夢と、そして遂に超えられなかった心の溝を。
深い深い谷底のように広がってしまった父との心が、かつて一瞬でも通っていた証…。
大声を上げて泣きそうなほど一番辛かった時、俺のそばにいてくれたのは、今傍らに立つ、晶だった。

*

「庵、どうしたの」
その場にしゃがんで吐きそうになっていた、とは言いづらく「大丈夫」と辛うじて答えて立ち上がる。
久しぶりのフラッシュバック。
先日、「野球帽」を自分のトラウマと結びつけるような発想をしたからだ。
粘るツバを飲み込んで、必死に恐怖を押し殺そうとしているのが気取られたようで、晶は無言で俺を木陰に連れて行く。

しばらく、近場のベンチに腰掛けて背中をさすってもらう。
人の手のぬくもりが、ただひたすら嬉しい。
なでられるごとに、元気がもらえるから。

「悪い…こんな良い天気の日に時間潰させるようなことになって」
「野球帽のせい?見てたワゴンに入ってた、緑色の」
俺の侘びには答えず、代わりに単刀直入な晶の返事に俺はうっと言葉に詰まる。

「やっぱりそうか。久々だね、そういうの」
最近調子ずっとよかったのに、と背中をさすりながら呟く晶に、俺は「何で分かった」と力なくこぼす。
「敦がこっそり僕に尋ねてきたの。これこれこうで、何が悪かったんでしょうかって」
「お前はなんて?」
「趣味の問題と虫の居所だって言っておいた」
完答だな、と俺が口元を曲げると「でしょ?」と得意げににんまりと笑った。
俺もつられてやっと笑顔。

晶は、今や俺の一番の理解者だった。
小中高そして大学までも同じ、寮は隣室同士。
政治家一族の坊ちゃんな晶とここまで縁深くなった不思議。

晶は気遣いの人だった。
俺が一人でぽつねんとしていると声をかけてくる。丁度良いタイミングで。
人肌恋しくなっていると、何も言わず俺の頭をなでる。
俺はスキンシップが好きだ。
といっても、はぐはぐしたり、肩組んだりする程度のレベルだけど。

だから、晶が望んでいるようなスキンシップと、俺の感覚はまた違っていて。
それを知ったのは、高校二年の、春。彼女がいた頃。
誰もいない教室で、あいつが泣きながら叫んだ言葉が、耳の奥にこだまする。

「何で気づいてくれないんだ!僕は、ぼくは、ぼく、は…君が好きなのに!」

あの日、初めて俺は人に魂の底まで惚れられている、という体感を果たした。
たった一つの言葉が、俺の人生を根底から揺さぶり、そして覆しかねない衝撃を与えた。

それは、俺が求めている「愛情」ではなかった。
そして、晶に求めていたものでもなく。

もし晶が女だったら。
俺は間違いなく当時の彼女を振って晶を恋人にしただろう。
もし晶が女だったら。
俺は間違いなく、その言葉に答えた。
これほど理想的な恋人、絶対に見つかりはしない。

だけど、これは「同性愛」だ。
父から恐怖じみた絶対的なモラルと美徳を叩き込まれていた俺にとって、見向きもしない、ありはしないはずの父の目が、確かに晶の背後に見えていた。
それは俺を非難し、俺の心の痛みも、晶の澄んだ心もやましさもない清清しい精神をも頭から否定していた。

穢れを蔑む目。
異質なるものを恐れ、排除する事に執念を燃やす畏れの視線。

ずっと俺に向けられていた視線の意味を皮肉にも脳裏に焼き付けることとなった、あの日の事件。

俺は、晶と友人でいることを望んだ。
元々その気はなかったし、ずっとずっと、出来れば「友情」のままでいたかったから。
しかし、その原石そのままの熱を帯びた感情に俺は心を突き動かされかけた。
それはずっと父に求め続け、遂に得られなかった「無償の愛」、そのものだったからだ。

【後編に続く】












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