3373plug-in

ゲーム二次創作中心ブログ。 更新まったり。作品ぼちぼち。

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
--.--.-- --:-- | スポンサー広告 | トラックバック(-) | コメント(-) |
前日に引き続き、短編「野球帽」後編です。

・女性向けです。
・長いです。




*

高校時代、親と姉の反対を押し切って再びクイズ番組に出て、また俺は時の人となった。

高校生向けのクイズ大会。
博識な大人がいないなら、敵はいなかった。友人二人、晶ともう一人と参加。

家にはもう居場所がなく、どこでもいいから自分の拠り所が欲しかったのだ。

しかし、三年目にウソまみれの八百長疑惑が出て、真っ先に父は俺を非難した。

それ見たことか。
やっぱりお前の成績は全部カンニングだったのだと。
かつて、自分を罵倒した親=俺にとっての祖父や、成績優秀だった叔父達=自分の兄弟に言えなかった代わりに、俺を罵った。
学校でも皆俺を疑った。
何より、身内の父親が声高に俺を疑っているのだ。
それは烙印のように、俺の背中に張り付き人の冷たい視線を集めた。

そんな時、心の支えは、やはり晶だった。
あいつも、俺のとばっちりで痛くもない腹を探られて不愉快な思いをしていただろうに、それでも態度を変えることなく俺を気遣ってくれた。
俺の好きな食べ物を弁当に詰めて持ってきたり、一人屋上でさぼっていると、いつの間にか隣で一緒に寝転んで空を見ていた。

たとえそれが「友情」でなくて、「愛情」だとしても、嬉しかった。

不快感はなかった。
晶の行動の節々に恥らうような兆しがちらほら見えるたびに、逆に申し訳なかった。
それはオカマがくねくねシナを作るような薄気味悪いものでなく、男が、惚れた女に見せる恥じらい。
爽やかささえ感じられる、男の気概と貞操に満ちた、背筋を正したくなるようなうぶさ。

あの日見た空と同じ、どこまでも気高い、無色透明の横顔。

俺が女だったら、きちんと答えてやれたのに。
そううそぶく俺に、「男同士でもいいよ」と諦め悪く背中を向けた晶に、俺は罪悪感さえ感じていた。

その後、俺に対する疑惑は公的機関の「天才」というお墨付きによって完全に払拭され、周囲には弁解と媚びへつらいと奇異な異物を遠巻きに見つめる視線だけが残った。
父もまた、立場が逆転し母に罵倒されてもなお、沈黙したまま、苦い無言だけを残し急逝した。

まったくの不慮の事故。
最後まで、俺に対する侘びも言い訳も、遂になかった。
世間の目を気にし続け、世間に認められたがった、悔恨しかない小さな背中。
得意げに妖怪見上げ入道を見越して、ただの卑小な異形に貶めた末路を見せられているようだった。

晶だけは、何一つ変わらなかった。
態度も、優しさも、…そして、感情も。
俺は、そうして晶の優しさに甘え続けている。

あいつが裏切らないと、分かっているから。
酷い男。

実は、とある女性を今気にかけていると知ったら、晶、一体どんな顔をするだろう。
そう思うと、実はなかなか言い出せずにいる。
こいつの悲しむ顔は、本当に見てて辛いから。
そう思う反面で、言えば冷たくなるのではないかと、また計算している自分が嫌で堪らない。

そんな俺のあさましさを知ってか知らずか…いや、知っていてなお、晶はいてくれてる。
とんだ見当違いの自惚れかも知れないけど、俺はそう信じている。

いつか。いつか晶にきちんとした女性が現れたら、俺は心から祝福するだろう。
たとえ、それがとびきりいい「男」、でもだ。
もし、それで世間があいつを非難したなら、俺は俺自身の全ての能力と、馬鹿っぽい外見の内に潜めてきた腐臭を放つ救いきれない精神の毒と憎悪を持って、世間の常識全てを壊し覆えそう。
それが済んだら幸福なあいつの顔を曇らせないように、婚礼会場の脇でひっそりと幸福を祈っていよう。

こんな陽気な五月晴れの下、陰気極まりない思考回路。

そう、俺は陰気だ。
陰険で、計算高く、そして根暗だ。それを知っているから、俺は笑う。
馬鹿みたいに笑う。笑わせる。
人を、後輩を、そして、一番笑っていて欲しい「親友」に。

晶は「光」だから。
俺を照らしてくれた、光。
今、周囲を軽やかに照らす真昼の陽光の如く眩しく、そして手に残すことの出来ない透き通った光。
真冬でも春の如く、俺を温めてくれた、確かな掌の熱。
その残滓が俺を引き止めて離さないから。
だからどうか、そのままでいてほしい。
お前のためなら、俺は将来政治専門の汚い裏家業をしてやってもいいとさえ思うんだよね。

「男」が「男」に惚れるって、こういうもんだろ?

*
「ん、もうだいじょぶ。さんきゅ」
「そう?良かった」
「俺の悪い癖だ。何でも関連付けようとする。お前にも、敦にもとばっちりだよな」
「野球帽?」
「ん」
ふうん、と鼻から息の抜ける音をさせて、晶は顎に手を当て思案する。

「ちょっと待ってて。それなら僕にいい手があるよ」
立ち上がると、晶は俺をその場に残してスタスタと元来た道を戻る。
数分と経たぬ間に戻ってくると、手には件の野球帽。

「これで、どう?」
見るからに窮屈な子供用の野球帽をかぶって、晶はにっこりと笑いかける。
久しぶりに見る、歯を見せて笑うあいつの顔。

「何だよそれー」
言いながら、何故か口から変な笑みがこぼれる。
晶の作り笑いが、子供の「はいチーズ」みたいで、可笑しくて。

「記憶って、新しいものへと順に書き換えられるんでしょう?だったら、楽しい思い出にしちゃおうよ。ね」
「それで、わざわざ買ってきたのかよ」
「セール品だから安いもんだよ」
「ちょっ、お前はまたそうやって無駄遣い」
「建設的投資と言ってよ。それで君の気分が和らぐなら、僕にはとびきり安い買い物」
そっと近寄り、恋人を狙い撃ちするような晶の上目遣いに俺はとびきり顔をしかめてべーっと舌を見せてやる。

「残念、そんな目くばせで俺のハートを狙っても無駄だぞ」
「狙ってはいるけど、そんなのじゃないもーん」
ひどいなあもう、とぷうと頬を膨らませる晶の子供っぽい仕草に、俺は歯を見せて笑い返す。
人通りの多い通り脇にもかかわらず、くだらない言い合いをする馬鹿大学生二人。
馬鹿馬鹿しくなって、笑いあう。

「これ、もらっていいか」
答えを聞かぬ間に、屈んでいた晶の頭上からひょいと野球帽を指先で掬うと自分の頭に乗せる。
それを見て、満足げに微笑み頷く晶の横顔に、一瞬ぞくりとなる。
周囲の女子大生のみならず、行く先々で女性の目を釘付けにする、匂いたつような男の色香。
普段割と言動が子供っぽいため、時折こうやって年齢以上の大人びた表情を見せられると危うい。
その名の如く、水晶みたいに透き通った光が放つ一瞬の魅惑。
つくづく、晶が女だったら良かったのになあ、と思う瞬間。

「あ、先輩」
奇遇ですねえ、と交差点を渡りきったところで声をかけられる。手に一杯の紙袋を抱えた敦。
「買出し?」
「はい、そうなんですぅ。重たくって…先輩たちはお出かけですか?」
「うんそうそう。お前はこれから帰り?」
「はい。もう買いたいものは買えたので。でも腕が筋肉痛になりそうです…!今日はレトルトでさっさと済ませますよ。もうくたくた」
「あらら、そうなの?だったら一緒に何か食べていく?」
晶の悪い癖。
思ってもいないのに、社交辞令で相手を気遣って、後で少しだけ、でもしっかり後悔するくせに。

「いいんですか?ご一緒しても!」
「だめー」
俺の予想外の答えに、二人とも「えー」と目を丸くする。

「ええ、どうして~」
「今日は俺、晶を労う日にしようって決めてたの。だから晶に豪勢なもん食わせてやるんよ」
悪いが俺のバイト代ではお前の分は無理、というと敦はしゅんとしょげてしまった。

「まあそう落ち込むなって。代わりに、俺のバイト先に行ってきな。
電話一本入れてやるから、好きなもん食って帰るといいぜ。オススメはモツ鍋春御膳。デザートつけてやっから」
「え、でも…」
「こないだのこと、悪かったな。代わりに今度、お前が手ぶらな時にとっておきの面白い話、聞かせてやるよ。約束だ」
「ほ、本当ですか?!それって、昔の…」
「おおっと、それは楽しみにとっておけよ。でも超マジだから。今日もタイミング悪くてすまないけど、これでチャラにしておいてくれると有難いかな」
「いえっ、そんな!じゃあまた、今度!」

機嫌を直して駆け去っていく後輩の背中を見送って、「さてと」と俺は踵を返す。

「どこ行くの?」
「だから、お前の言ってたカフェ」
「労ってくれるんじゃないの?どこの豪華なランチかと一瞬期待しちゃったじゃないか」
「だーかーら」
俺はつとめて鈍感を装う幼馴染に、野球帽を被りなおしてにかっ、と歯を見せて不敵に笑ってみせる。

「一緒にとびきり美味しくて、楽しい思い出を作りに行くんだろ?」
お前の見立てた店なら間違いはないだろうし、と答えると、晶はものぐさ、と苦笑する。
その笑顔に、まんざらでもないと書いてあるように見えるのは俺のミスリードだろうか?
二人並んで歩く春の街並み。
軽やかな人の波。連れ立って歩く、軽やかな足音。
心地よい響きが、俺の頭にのっかる「これ」にも伝わってくるような心地。

「似合ってる、って言ったら怒る?」
「いいや」

俺は新品のとびきり窮屈な「野球帽」を被りなおして、握りコブシ一つ分背の高い「親友」に笑いかけた。

〈了〉

※反転にて感想もろもろもろもろ…。

最初に頂いたお題曲を聞いた際に「五月の新緑っぽい爽やかさ」と思って、爽やかな話が書きたいな書きたいナーと思っていた は ず な の に なあ …。
デフォの回想シーン以外は割とイメージ通りに書けた…はず。
爽やかなイメージとロン毛の良さが伝わればいいなあ、と思いながら書きました。

orz

沢村様をはじめ、ここまで一読していただいた皆様へ。
拙さ爆発ですが、読んでいただけたなら嬉しい限りです。
有り難うございました~。












管理者にだけ表示

トラックバックURL↓
http://3373plugin.blog45.fc2.com/tb.php/383-99ef6e3f

| ホーム |
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。