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ゲーム二次創作中心ブログ。 更新まったり。作品ぼちぼち。

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前回の「野球帽」に引き続き、今回は2作品目です。

お題曲は、こちらから提供させていただきましたKREVA(feat:草野マサムネ)「くればいいのに」。今回も前後編。
長いですが、よろしければ最後までお楽しみ下さいませm(__)m。



※今回もストーリーのテイスト上女性向となりましたので、ダメな方ご注意。
 独立した話となっておりますが、前回「野球帽」とは話が繋がっております。

※キャラ設定等は普段SSに使用している名前を使っておりますが、細部で異なる設定を用いております。パラレルワールド、という解釈でご理解いただければ幸いです。


今回お世話になっております沢村様のサイト特設部屋はこちらから→

*
〈登場人物〉

・安佐 庵(あんさ いおり・デフォ男)
私立アーサー国際大学二年。経済学部&クイズ研究サークル所属。
元「日本一のクイズ王」と呼ばれ、様々なクイズ番組を制覇してきた伝説のアンサー。
見たもの全てを記憶し即座に引き出せる驚異的な記憶力と演算能力(=通称・ライブラリ)を持つ、本物の天才。現在は能力低下等の理由で、平凡な大学生としての日々を過ごす。
性格は明朗快活・まったりマイペースな大食い青年。
晶とは小学校時代からの幼馴染み。

・安住 晶(あずみ あきら・ロン毛)
私立アーサー国際大学二年。経済学部&クイズ研究サークル所属。
容姿端麗・成績優秀なエリート大学生。
庵とは自称:最強最悪の腐れ縁であり、高校時代は共に高校生向けクイズ番組に挑戦した経験を持つ。政治家一族の次男でボンボンだが、気遣いに溢れ、面倒見の良いお人好し。
現在、隣部屋に暮らす庵の世話役認定をされている、気苦労の絶えない親友。のはずだが…。

・安西 和(あんざい のどか・デフォ子)
アナマリア女学院大学二年。史学科&クイズ研究サークル所属。
香川出身のクイズ好きな女子大生。やる気と元気がチャームポイントの快活美女。
かつてクイズ番組で出会った庵に一目惚れし、ずっと思い続けていた。



*
毎朝作るおみそ汁。
卵焼きはだし巻き。炊きたてのご飯。
今日はお新香とトマトのスライスもつけて。
簡単な朝ご飯だけど、彼は美味しそうにいつも食べてくれる。

「今日、行ってくるわ」
箸で器用にだし巻きを二つに割りながら、彼は僕にそう言う。
「うん、行ってらっしゃい」
僕は何でもないような事のように、さらりと受け流す。

ふと卓の上から顔を上げると、彼と視線がぶつかる。
何でもない事なのに、自然と口元に笑みが浮かぶ。

強がり。

彼も察したのか、困ったような苦笑いが一瞬浮かんで消えた。

静かな朝食。
君と僕の、ささやかな幸せ。


「くればいいのに」


隣の部屋から、ドアの開閉音が聞こえて、その後すぐに廊下をバタバタと駆けて出て行く音が聞こえた。
まだ待ち合わせまで時間はあるはずなのにな。
彼らしいと言えば彼らしい。
見かけによらず、時間にはマメだから。

「(今週の日曜日にさ、彼女と会ってくる。)」
デートの約束を、わざわざ隣の部屋に住んでる幼馴染みに告げていく、律儀な親友。
僕はといえば、特に予定もない。
いつものように朝飯をねだりにきた彼に温かい食事をふるまって送り出し、その後は何をするでもなくごろ寝。
でも今日は、自分にしては珍しく、洗濯も掃除も後回し。

外は五月の陽気で、風はまだ冷たいのに差し込む日差しは暑いくらい。
布団乾すには丁度良さそうだけど、敢えてしない。

今日は何もしない。

きっと、手につかない。
胸のざわつきが、全身を縛るから。

彼女に微笑みかけている彼を想像しては、思わなくていい光景を思い、自らを傷つける。そんな自虐的な自分を思い、自嘲し、けだるさだけを抱えてベッドの上で瞳を閉じた。

*

先日、彼と久しぶりにカラオケに行って、彼=庵の歌声を聞いた。

安佐 庵(あんさ いおり)。
かつて、テレビクイズ界を席巻した「真」の天才少年。
彼が出演したクイズ番組はことごとく当たるとさえ言われ、小学生時代は一躍お茶の間を席巻しクイズブームの火付け役となり、一時引退の後「どうしてもこれは出たかった」と親の反対を押し切って出た、高校生のクイズ登竜門「アカデミッククイズ」で華麗な復活を遂げた彼は、何を隠そう、僕の小学生時代からの親友だ。
見たもの全てを一瞬で詳細まで記憶し回答出来る超記憶=人呼んで「ライブラリ」能力の持ち主。
だから、彼に尋ねれば先週の朝飯一覧も、一年前の同じ時間に何してたかも、小学校時代の恩師の電話番号も即分かる。

おおげさでなく、これが彼の「普通」。
スタンダードな物覚え。

現在、彼はテレビに辟易し、全てのクイズ番組は元より、あらゆるマスメディアから引退。
僕と同じ大学に通う同級生として、小学生からずっと、小中高と同じ学校で同じ時を過ごしている。
以前ほどの超人的能力は諸々の事情で現在成りを潜めてはいるけれど、それでも人並み以上の知性と見識、そして記憶力は健在。

だから、彼の知性や、ややもすればあけっぴろげで幼い、少しばかり突飛な言動にばかりみんな目がいきがちだけど、実は天は彼に二物も三物も与えている訳で。

彼の歌声を聞いた事がある人間はあまりいない。
だけど、一度聞いたら、きっと虜になる。
あんなに楽しそうに、笑うように響き渡る声で歌える人間がそうそういるんだろうか。
無駄に浅く、無意味に広く、そして男女問わず付き合いのだだっ広い自分がそう断言できるんだから、間違いないと思う。

彼の歌声が、たまらなく好き。
面と向かってはなかなか言えないけど。
僕は高校時代、それを何度も学校の屋上で聞いた。
彼のアカペラに手拍子をし、一緒に笑いあった。

僕と、彼。二人だけの空間。大切な記憶。

そして、それを知っているのは、きっと僕くらい。
その自負が、ちょっとだけ自分の乾いた心を潤す。ハンパな自尊心。

でも、そんな時間は、きっともう、来ない。
思い出だけを色濃く残し、いずれ消えて無くなる。

確信めいた予感。
ネガティブな言葉を打ち消すように、僕は布団をかぶり直す。
手元で携帯電話を転がす。
開いたカーテンから差し込む春の陽光が、今日はヤケに鬱陶しかった。

*

僕にとって世界は無いに等しかった。
僕、それ自体がこの世界にあってないほどの価値しか持たない、ちっぽけなものだったから。

父親は有名な政治家。
年の離れた異母兄は何をやらせてもそつのない秀才。
母は後妻。

僕は五歳まで私生児だった。

保育園時代の母は仕事ばかり。僕は「愛人の子」と影でそしられて、その意味も漠然と肌で感じながら何の感情も覚えなかった。
一人きり、母を待ちながら夕方までぽつねんと遊ぶ日々の連なり。

孤独、というものが辛いと思わなかった頃。

それが普通だったから。
何故みんな複数つるんでできゃっきゃと笑っているのかが不思議でならなかったけど、関わりあいたいという欲求すら生まれなかった。

思えば、子供は親の鏡。
皆僕を見る時に、目の底で汚物をそっと覗き込むような侮蔑が浮かんでいたのかも知れない。その目が嫌いで、僕は孤独を選んだ。

沈黙と静けさだけが、母以上に僕を愛してくれた。

父の子として正式に迎え入れられた後も、そう世界は変わらなかった。
住む場所が立派になっただけ。

父も異母兄も優しかったけど、それだけ。何の感慨もなかった。
母は当時を振り返って、「礼儀正しいけど、ちっとも笑わない子」だったと、いつだったか苦笑混じりに答えていた。

だから、庵君に会えて良かった、とも。

庵。
僕のひかり。
大事な宝物。

『…みっけ!おし、これで全員だな!校庭もどろうぜ、次のオニきめないと!』

遠い日の彼の声。
僕を変える、君の声。

『え?…かくれんぼ。してた中にいなかったっけ?…わりい、本読むのじゃましたな』

出会いは、庵の勘違いだった。
相変わらず、小学校に上がっても僕は一人。
だから、昼の休憩時間にはいつも校庭の隅に行き、図書館で借りた本を読んでいた。

教室は騒がしかったし、時折口さがない誰かが、わざわざ言わなくてもいい事を言うから。校舎裏、学校脇の道路が見えるフェンス際、タイヤの遊具が敷き詰められた花壇のそば。
マメツゲやアジサイ、背の低い生け垣を背にしてタイヤに腰掛ける。一時の安らぎ。
アジサイの蕾が膨らんでいた。誕生日にほど近い、梅雨入り前の快晴の日だった。

『なあ、お前いつもなにしてんの?ここにいるのか?』

かくれんぼをして遊んでいた庵が、僕をメンバーと勘違いして話しかけてきた。
今にして思えば、当時から既に超記憶の庵が頭数を間違うのもおかしな話。
だけど、当人は後にも先にも「本当に勘違いした」とバツが悪そうに首をすくめていたから、本当に幸運な出会い。

『…毎日、本読んでるのか?いいな、俺も本好きだし!…よし、お前もいっしょにあそぼうぜ!こっちこいよ!』

僕はと言えば、きょとんとしていたように思う。
蔑みも敵意もない目。星を見るみたいに、僕という存在に興味を抱いているのが分かるほど。
彼の人懐っこい、丸い目がくるくると僕を見て回る。

あの時、初めて、僕は誰かに好意を持つ、持たれるという感情の喜びを漠然と知った。
胸に宿った、小さな灯。
消しがたいぬくもりと、痛みの芽ぶき。

母にすら、敬愛しか持たなかった僕の世界を変えた、「彼」という存在。
ずっと友情という殻に押し込めておきたかった、ささやかな淡い感情のはじまり。

後に何度も何度も、その時覚えた感情の答えを探していた。

ずっと、大事に、大事に、その時芽吹いた思いを捨てきれず、いまだに抱えている。
幾度も否定し続け、よく似た別物にすり替えようとして、その度に胸苦しさで眠りから覚めて。

『…なんでって?俺、お前のこといいやつっぽいなって思ったから。
本読むやつに悪いやつはいないし!

…お前、名前は?・・・あきら、か。どんな字?

・・・日、がみっつの「晶」?
いいなそれ、結晶の「晶」だな!何か分かる、お前光ってるもん』

遠い日の彼の声。
幾度も反芻しては胸を温かく締め付ける、初めてもらった無心の好意。
それから、僕の周囲は庵づてに人だらけになった。
友人が増え、僕は普通に笑う子供になった。

彼を中心に世界に色が差して、「楽しい」が増えて、「嬉しい」が満たされる喜びを知った。

彼はひかり。
僕のひかり。

彼が座っている場所は、彼自身が、他の誰とも違う異質な存在感を漂わせていた。
そして、彼のそばには、いつでも僕を受け入れてくれる、ひかりがあった。

『…俺?いおり。あんさいおり。安心ににんべんひだり、で、ちょっと変わった漢字書いて、「安佐庵」。よろしくなっ!』

それから。
僕は、庵と親友になった。

春夏秋冬、幾年も同じ学舎で同じ時を過ごし、ケンカして、遊んで、笑って、一緒に泣いた。
成長して、いつしか彼の背を抜かして、女の子からラブレターもらって茶化されて。

そして。
我知らず気付く。

僕は、彼が、好きだった。
あの日から。あの初夏の日から。
あの日見た彼の光を、僕は今でも欲している。

光。彼自身。彼の存在そのもの。
それを全て手に入れられたら、僕はやっと全てが満たされる。何も中身が詰まっていない、からっぽの僕が、ぴったりと幸福で埋まる。

他の誰ではダメ。彼がいい。
彼でないと。
彼の知性と彼の姿形と笑顔とそれからそれから。
全てで僕に笑って「好きだ」と言ってくれたら。

ホシイホシイホシイホシイ

強い確信と共に横たわる、己の救いようがない狂気と背徳。
身体が成長すると共に覚えた、押さえきれない衝動と欲情と、乗り越えられない壁。

僕は、庵を押し倒しかけた。
高二の春。誰もいない教室。
暗がりの中、彼女が出来て浮き足立つ彼をくびり殺してやりたいくらい憎くて、自分の方が身体が大きいのをいいことに力任せに押し倒し、シャツの第一ボタンを引きちぎった。
醜い、男の嫉妬。
目を丸くして口を開いたまま声も出せないでいた彼に、憤怒の念を禁じ得なかった。
彼女の方こそ絞め殺してやりたかったが…それまで何一つ気付かなかった庵の鈍さが、僕を一番傷つけた。

「何で分からないの」
「何がだよ」
「何で気付いてくれないの。何で?何で、何でだよ庵…僕は、僕は、ぼくは…」

君が好きなのに。こんなに好きなのに。

抱きつきたい。抱きついて欲しい。
キスしたい。キスされたい。
ぴったりとくっついて、離れたくない。
ぬくもりが愛しい。恋しい。離したくない。

僕とだけ喋って。僕のためにだけ歌って。
笑って、泣いて、全て僕の前だけで。
君を独占して閉じこめて、時々そのひかりを眺めて心を満たしたい。

出会った日からずっと。身体の隅々まで、僕は君の全てが欲しかった。
感覚的な意味でも、肉体的な意味でも…。

涙と鼻水まみれの、ださい告白。
わあわあ泣きながら、僕は彼の身体に馬乗りになったまま泣き崩れた。
庵は困惑しつつも、僕を軽蔑しなかった。僕をそっと腹上から降ろして横に並ぶと、そのまま校舎が閉まる直前まで、何も言わず肩を抱いていてくれた。

「晶、俺は…」

彼が出した答えは「ノー」だった。
「友情」という名の、「線引き」だった。

【後編へ続く】












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