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ゲーム二次創作中心ブログ。 更新まったり。作品ぼちぼち。

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休憩中のヒゲと一仕事後のセミロング。
*

数時間後。
高速を抜けて一般道路へ降りると、眩しいほどの夕焼けが西日となって車内に差し込む。
午後六時を過ぎた街並みは濃厚なオレンジ一色で、次第に街の輪郭の外側に白線のような海岸線が見えた。
わあ、と敦は思わず窓の外へ広がり始めた、まだ遠い瀬戸内の海に視線を向ける。
灰色のビルとまだ比較的新しい街の舗装が橙の光で染まっているように、遙か彼方の水面もまた黄みがかった光を反射している。

鮮やかな群青の白波も、今は黄から朱色に染まる。
透き通った日本海の漣とは違う、生命の青を含んだ潮騒の色。
やっぱり日本海とはまた違うのだ、と当然のことを敦は思って、思わず頬が緩んだ。

「俺んちのマンションからなら、海が一望出来るぜ。中古でせまっくるしいが、それが目当てで借りてるようなもんだからな」
もう俺の庭だと言わんばかりにスイスイと慣れたハンドリングで車を動かす典生の言葉に、敦が童子のような笑顔を見せると車内の皆が顔を見合わせて微笑ましく目線を交わしあった。
「会社に寄ってこいつを渡したら、後は俺の車に乗り換えるぞ。目的地は、すぐそこだ。帰ったら神戸牛料理が待ってるぞ~」
「本当ですか!」「すげええ!」「肉!」
牛肉にいろめきたつ大学生を乗せて、車は中心部をかろやかに駆けていく。

*

安藤家は中心部郊外の住宅地に立つマンションの一室であった。
七階までエレベーターで上がり眼下を見下ろすと、海沿いの丘陵地に沿って家々が並ぶのが見えた。
遠く港が見えるが、あれは神戸ポートアイランドだろうか。灰色のビル群が、今は夕闇混じりの濃紺と緋色に染まって見事な近代美のモニュメントとなっている。

「神戸は都会なんですねー」
敦が素直な感想を口にすると、だよねー、と庵と晶も口を揃える。
「少なくとも岡山よりは絶対にオサレだお」
「否定できないのが悲しい」

*

「…で、おひめさまは幸せに暮らしましたとさ。はいおしまい」
その頃室内のリビングで、夏彦は一家のお姫様を懐に抱いて、三冊目の絵本を読み終えた所であった。
「やだーおじちゃんもっとー!」
胡座の上でいやいやする姪の紀香を「もうすぐ晩飯だ」とあやしつけると、保育園児は不満げにぶうう、と頬を膨らませる。
「ダメよ!もっと読んで!次はプリキュアにするー」
「そう言うなって紀香ちゃん。もうすぐ父ちゃん帰ってくるから、そしたら父ちゃんに読んでもらいなって…」
「そうよ紀香ちゃん、ナツおじさんはお勉強があるんだから、邪魔しちゃダメって言ってるでしょ?」
姪ッ子の母親=兄嫁の典子が、隣の台所から顔を覗かせてメッ、と紀香を叱る。
むー、と唇を尖らせたままむっつりして黙りこくる姪のふくれっ面を眼下に、夏彦は「すいませんな」と照れくさそうに頭を掻く。

「いいえ、いつも紀香ちゃんの面倒見てもらえて助かるわ。買い物に行っても男手があると助かるし」
「いや、そんくらいはせんとバチが当たりますから。…兄貴から、何か連絡ありました?」
「ううん、何も。でももうすぐ帰ってくるわよ。もう晩ご飯もできますからね、今日はお客さんが多いから作りがいがあるわぁ~」
心底嬉しそうに兄嫁が笑顔を振りまくと、確かに玄関から「帰ったぞー」とタイミング良く声がした。
「あっ、パパー!」
言うが早いか、姪ッ子は膝上から駆け出すと一目散に玄関へと走り去る。
「おおー、紀香ただいま~」と兄のデレデレした甘ったるい声と、ガサガサと複数名の足音が入ってくる物音が聞こえた。

「のりかー、パパ寂しかったぞー!ちゅっちゅしたいぞー!」
兄は開口一番駆け寄ってきた娘を抱き上げると普段通りに娘の頬にぶちゅーっとちゅーして可愛い可愛いとハグハグしまくる。

…今日は背後に俺の後輩達がいるんだけどな、と夏彦は思うも突っ込めずにいた。毎日の帰宅の儀式に茶々を入れる方が野暮であろうし。
娘バカ丸出しの兄の後ろで空気を読んで生暖かく親子の光景を見守る後輩たちに、夏彦は口を曲げつつ「オッス」と笑いかける。

「久しぶりです先輩」「お元気そうで」
「まあな。外暑いんだろ?あがりな」
「お邪魔しまっす」

次々に一礼と共に家と汗まみれで上がってくる後輩達の一番後ろから、麻美も手荷物片手に「ただいま」と微笑む。

「お帰りなさい麻美さん。仕事、無事済んだ用で何よりです」
ビジネストークからの話題に、麻美はわざとらしく眉をひそめて見せる。

「まあね、私はせいぜい庵君の接待した程度よ。それより先に、聞く事ないの?」
「え?いや別に…ああそうそう、送っていただいたロイズの生チョコセット有り難うさんでした。オーレとグラン…マルニエでしたっけ?帰ってきたら一緒に食べようと思ってまだ手つけてないんですけど」
「あらそうなんだ。紀香ちゃんが不機嫌になったでしょうに…でも嬉しいかな。あっちでのんびりも出来なかったし、美味しいものもそこそこ手を付けた程度だったし。でもって、これは名古屋土産の一口ういろうさん☆冷やして研究の合間にでも食べてね」
「おっと、俺にですか?すんませんないっつも」
手渡された紙袋と中身の菓子箱の重量に、夏彦は顔をほころばせる。

「いいえ、これくらい当然でしょ?一応兄妹なんですし」
「といっても、俺はいつももらってばっかですし。また、研究レポが一段落したらケーキでもご馳走しますから。確かえっと…ああガトーショコラ?お好きでしたよね」
「本当?嬉しいな。でも、ガトーショコラよりも、私はザッハトルテの方が好きかな?」
「ザッハトルテ…」
「チョコケーキ。杏ジャムがアクセントになってて美味しいんですよ。近場で良い店知ってるんですけど、よろしければまたどうです?」
「へえ、いいですね!麻美さんの見立てなら、俺はいつでも喜んで」
甘味に対してなのか、それとも誘ってる自分に対してなのか。
きっと甘味の方に微笑みかけてるんだよねえ、なんて心の中でだけ、目の前でにやけてる甘党バカに文句の一つも呟きながら、麻美は「じゃあまたね」と涼しい顔で夏彦の脇をすりぬけリビングへと軽やかに入っていった。

【7月25日夕方・神戸着】












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