3373plug-in

ゲーム二次創作中心ブログ。 更新まったり。作品ぼちぼち。

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
--.--.-- --:-- | スポンサー広告 | トラックバック(-) | コメント(-) |
麦茶で囲む輪。


典生の勤めている自動車メーカーの系列店が催す夏の新作展示会は、連日盛況であった。
地元では夏の恒例行事らしく、ご近所や遠方近県から多数の客足がやってくる。
メインの新車展示会場の外では、夜祭風にノボリや出店が並び、軽食やゲームを楽しむ親子連れでごった返し、短期バイトも販売に景品梱包・補充など、猫の手も借りたい大忙しで右往左往しっぱなしである。
それでも炎天下で風船片手に着ぐるみを着ているのよりはマシだろうなと思う反面、中の人が心配でならない敦であった。

一日目が済んで再び安藤家へ帰宅すると、室内に入るやいなや皆一様にぐったりとリビングのソファに倒れこむ。

「しんどかったです」
「暑い…暑かった…駐車整理はもうやだ…死ぬ、絶対死ぬ」
一日広告入りプラ看板を身体の前後に下げて駐車整理の補助をしていた晶は、珍しく髪を振り乱したまま床に転げこんだ。

「迷子の子に取り囲まれました…」
「敦君はちびっこホイホイなんだよきっと。景品補充しに行ったはずなのに気づいたら街角迷子カウンター状態になってたし」
「だって気になるじゃないですか!今日一時三十九度までいったそうですし、放っておいて熱中症にでもなったらと思ったら」
「敦は優しいんだよ庵。見てたなら、同じ班だった君が助けてあげれば良かったじゃないか…」
「無理無理無理。俺がいっぺんに十人分オーダー取れるからって、気づいたらやきそばとフランクフルトの清算は全部俺任せになってたし。一日中オツム使い過ぎてグリコーゲンが空になりますた」
「調子に乗ってライブラリ使うからだよ…厩戸皇子も真っ青の地獄耳なんだから、こき使われて当然でしょ?」
「いやさあ、みんな、俺が有名人だからってあんまり目立たない仕事ばっかり回してくれてさー…その気遣いが嬉しくってついつい張り切っちゃった訳さ」
「そりゃだって、庵がいるのばれたら騒ぎになるに決まってるし…ああ僕もう車はいい。一日中怒鳴られっぱなしでへこみまくりだよ…関西弁で怒られるのってきついなぁ」
「僕も子供の相手はくたくたですぅ…どっちかと言うと、僕よりも安藤先輩たちの方が向いて…」
言いかけて、敦は隣に横たわる男二人の惨状に口をつぐむ。

「…安藤先輩、大丈夫ですか?」
おそるおそるな敦の囁きに、夏彦は小さく頷いて「平気だ」と枯れた声を絞る。

「…毎年、家に戻ると来るんだよな。一日分の疲労がどっと」
「あー…大輔さん大丈夫かな…半分エクトプラズムが抜けたような顔してる」
「そっとしといてやんな。水は吐くほど飲ませてるから熱中症はない、と思う。あれの通気性、最悪だからな…」
「どうりで汗臭いと思った」
振り向くと、麦茶のボトルと重ねたグラスを手に麻美がドアから顔を覗かせている。

「お風呂沸かしてるから、順番にささっと入って汗を流す!今日はどうせ食欲ないだろうと思っておそうめんにしたから、出た順に食べて済ませてね」
「あれ、典生さんは…」
「兄貴は残業で遅くなるとよ」
麻美の代わりに夏彦がのそりと答える。
「それと、明日は私も姉さんもバイトで帰りが遅くなりそうだから、どこかお兄さんに食べに連れてってもらうといいかも」
「麻美さんたちもバイト?」

「そうよ。一日でがっつり稼げるイイし・ご・と♪」

思わせぶりな麻美の言葉に夏彦以外の鼻の下が伸びるのを見て、麻美は「やらしいんだ」と冷ややかな視線を返す。

「言っておくけど、君たちが想像してるような夜のお仕事じゃあありませんからね」
「大丈夫なんです?麻美さん。そのバイト…短期で稼げるなんて職種限られますし。もしかして、今月家計厳しいとかじゃ」
珍しく不安げに見上げる夏彦に、麻美は「違う違う」とカラッとした笑顔を見せる。

「お友だちのお付き合いで、ちょっと一日司会みたいなのを勤めるだけ。簡単でしょ?」
「へえ、プレゼンの手伝いかなにかです?お疲れさんです。俺も飯食ったらもう一頑張りするかな…」
「あら、バイトの後なのに?体力勝負なんだから、しっかり休めばいいのに」
手早く卓上にコップを並べる麻美と入れ違いに、夏彦は「いや、そうも言ってられんのですよ」と言いつつグラスいっぱいに注がれた麦茶を一息に傾ける。
「んもう、最近ずっとそうなんだから」
むー、と頬を膨らませる麻美に庵が「先輩何を?」と訊ねると、麻美はそっけなく「研究」とだけ答えた。

「思いついたら、すぐに典生さんの書斎に引き籠もって数式や塩基配列とにらめっこしてるわ。法事の前後もずっとそうなの。夏の暑い盛りに部屋に籠もりっぱなしなんて、不健康でしょ?」
「先輩らしいっちゃあ、らしいですけど。好きなことには熱心で夢中になってるとことか」
「好きなことには、ってなんだ安佐?には、ってのは」
注がれる端から手が伸びて、瞬く間に空になるグラスたちを前に、麻美は「そこがいいんだけどね」とさりげなくそっと呟いて麦茶の揺れるボトルを絶え間なく注いで回る。その隣に座っている夏彦の視線が、どことなく麻美を捉えながらも落ち着きなく周囲を泳いでいるのが、何だか可笑しい。

気取られぬように誤魔化し紛れに咳払いをすると、夏彦はお代わりをもらいながら「今年は勝負なんだ」と話を切り出した。

【7月26日夕方・ヒゲ先輩の話は次回・モヒさんがぴくりともしません】












管理者にだけ表示

トラックバックURL↓
http://3373plugin.blog45.fc2.com/tb.php/409-71c802b1

| ホーム |
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。