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ゲーム二次創作中心ブログ。 更新まったり。作品ぼちぼち。

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てのひらの中の青。
*

なまじ固形物を腹に入れると夏場は胃もたれしがちなため、支給品のスポーツドリンクを半分一息に飲み込むと、会場裏手の壁にもたれかかり一人ぼんやりと空を仰ぐ。
灰色の壁と壁の間、細い隙間にくっきりと浮かぶ快晴の青に、うっすらと細く白い筋状の雲が伸びている。

真夏日にふさわしい空の青。

空の青は、晴れ渡った夏空を映す海面を思い起こさせた。
彼が想起する「海」…小学校時代、夏には何度となく泊まりに行った晶の別荘、そこの縁側から見渡した瀬戸の白波が脳裏に浮かぶ。

庵は晶の兄・聡文には随分と嫌われていたが、晶の両親には概ね好印象を持たれていたようだった。
学校帰りに遊びに行けば晶の母はにこにこと笑顔でいつも出迎えてくれたし、小五の時、たまたま家に居た晶の父には「有名なんだってねえ」と、やはり優しそうな笑みで迎えられ、長いこと政治の話を交わして「小学生にしておくのが勿体ない含蓄だの」と褒められたり。
小一の頃から既に母親同士から家族ぐるみでの付き合いとなり、その年の夏に児島へ遊びに来ないかと誘われたのがきっかけで、以降テレビで多忙となるまで毎年夏休みになると晶の別荘を電車に乗って訪ねていった。

瀬戸内海が間近に広がる港町、倉敷市児島。
朝起きて海を見下ろすと、諸島を跨いで立つ瀬戸大橋が、橋桁の下をくぐって進む米粒大のフェリーや漁船の船影が筋を引いていくのが見える、そんな田舎町。
元々生まれ育った晶につれられて、聡文の引率(監視)の元で海へ泳ぎに行き、釣りに行き、山頂の神社へと石段を駆けてセミ取りに行って…思えば、あの夏の日が、一番子供らしく過ごせた貴重な時間だった。
晶と一緒に砂浜へ打ち上げられたミズクラゲを突いてまわったり、ボラの子の大群を網で掬ってみたり、小さなフグを釣り上げて喜んだり。

小高い丘上にあった晶んちの別荘に帰って、カヤの中で並んで昼寝していたはずなのに、痒みで気付いたら何故か自分だけカヤの外、飛び起きてカヤの中を覗くと眠りこける晶をそっと団扇で扇ぐ聡文のニヤニヤ顔があったり…ほんの数年の、一ヶ月半区切りの記憶なのに、何故か一層生々しく鮮やかに呼び覚まされる記憶。

夏の暑さと、潮騒の思い出。
さざなみは、幸福の音。
優しい欠片。

海が自分に幸せを運んでくるような気さえしてるのは、きっと親友との思い出だけでなく、瀬戸内海を挟んだ向こうに居る彼女の笑顔がちらちらと瞼をかすめて消えないからかも知れない。

海は彼女を思い起こさせる。
満々と満ちた潮の向こうで、手を振る彼女がいるような気さえしていて。

自惚れだなあ、と一人苦笑が浮かぶ。

本当に待っててくれてるのかも、それとも単なる口頭でのただの社交辞令なのかも、疑いたくないのに疑ってしまうし、色々とありもしない妄想やら仮想を立てては脳内で悶絶している可笑しな自分。しかし、どれも彼女を前にすると途端に自慢のオツムは働かなくなる。
平然と普段通りなふりをしながら、心の中ではいつも不必要で解の出せない計算式ばかり組み立てて徒労に終わる毎日が、もどかしくてたまらない。

新潟を出発してすぐ、休憩の合間にそれとなくを装ってかけた電話は、彼女にワンコールで繋がった。

『ええっ!…本当に四国来てくれるの庵君!!みんな一緒で!?うそっ、ホントに?…ううん、嬉しい、とっても嬉しい!…うん、分かった。今向かってるとこなんだ!じゃあ、香川に着く日が分かったら、すぐに教えてねっ!!』

四国が近付くにつれて、毎日毎回開いては閉じていたケータイの番号画面。
いつ切りだそう、何て言おう。こんな時に、どう伝えたら彼女は一番喜んでくれるのだろう。
明日神戸を発ったら、四国はすぐそこ。
だから、電車乗る前に?いやいや神戸を発ったらすぐか?…迷い悩むだけ無駄なのに、気付いたらそのことばかり考えてるバカな俺。女心も、クイズみたいに正解がきちんと定義されてるならいいのにな。
一番知りたい、正解したい問題だけは、どうしてもスカッとした確信と答えが持てぬまま、庵は今の今まで電話一本出来ずにいた。

【7月27日・携帯とにらめっこ・着ぐるみ部隊は今日も稼働中】












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