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ゲーム二次創作中心ブログ。 更新まったり。作品ぼちぼち。

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兄の思いと、遠い未来。
*

「何でゲーセンの大会見に行く口実に連行されてるんですか俺はっ!」
庵の苦笑混じりな苦言に、運転席の典生はあっはっはと大声で笑い返す。

「ゲーセンじゃあねえよ、大手デパートの屋外特別催事スペース。要は駐車場脇でイベントやって客引きだな。俺等のやってるショーと理屈は同じさ」
「デパートの駐車場で、クイズですか?」
「隣接するアミューズメント施設と駐車場を併用してるんだ。その都合らしいよ。俺も最初部下から聞いて喜んでたんだが、すぐに出勤日と被ってるのが分かったし、ダメもとで出した休暇届も法事の分でおじゃんにされっし。ここ一ヶ月、ろくに休んでもねえからミクシィどころか自宅のパソコンすらろくに触っちゃいねえ。ケータイいじってる余裕もねえし、ちょっと時代においてけぼりな俺よ」
だから、ちょこっと付き合ってくれっと嬉しいねえ、などと語尾に付け加えられて庵も返す言葉に窮するとむぐむぐ唇をまごつかせる。

「本当に仕事、いいんですか?」
さぼりじゃないですか、と庵がちくりともの申すも、典生はしれっとしたもので眉一つ動かさず「まあな」とふてぶてしく唇を曲げて笑う。
「いいのいいの、部下が口裏合わせてくれっから♪俺は『三日前に新車契約した得意先にトラブルが起こったから急いで出て行った』っていう事になってるのさ。でもってお前さんは助手。『飲食ブースのビールきらしたから、同乗して百貨店の担当に追加を受け取りに行く』って算段だ。その途中で、お前さんからクイズ大会の話を聞いたって事にしとけば、ちょっとの寄り道程度で大目に見て貰えるさ。往復一時間内で帰らないとならんが、出来ない距離じゃあないから平気」
「知らないですよ俺」
「いいんだよ、現場担当の俺がいいって言ってるんだからさ。
…つうかさ、リーマンだって自主的に休業日が欲しくなる日だってあるって事さ。かみさんと娘いるから二度としないけど」
「今の職場に不満が?」
庵の問いに、典生のにやけていた表情がにわかに引き締まる。

「ナツには言うなよ」
「はい」

「今年始めに、本社から赴任してきた常務とウマが合わなくてさ。
仕事のやり方でもうずっと衝突しっぱなしだ。
若手入れずに居る奴をとことんこきつかえばいいと思ってやがる…部下や直属の上司は俺の味方だけど、文句言う相手は本社の意向を笠に着てどやすだけだから、話し合いは平行線のまま。どうも本社は業績が横ばい下降気味で芳しくないから、支社全体の人材整理がしたいらしい。今年の冬はリストラの嵐かも知れないってみんな戦々恐々としてやがる。俺も長くないかも知れん」
「営業主任なのにです?」
「んー、まあ仕事はな。やってるから。業績出してるつもりだしな。
…でも、そのためにここ半年はろくに休んでもねえし休めもしねえし。
今月きちんととった休みなんざ3日もねえや。しかも一日は法事で潰れて仕事と変わらねえし…俺も流石に色々考えるよ。身体壊すか、でないと家族に顔忘れられて働くだけの虚しい毎日なのかってさ。残業残業で、髪染めてねえと三十前で白髪が目立つようになっちまった。情けねえ事さ」

十字交差点で、車は横断歩道の白線前へと静かに滑り込む。緩やかな沈黙。

「どうするんですか」
「しばらくはゲーセンでストレス解消しながら考える。でも、そろそろ脱サラしてもいいかなってな」
「何するんです?次の仕事」
「それはナツが自立してからだから、もう少し先だ。でもやりたい事だけはある。
…昨日、あいつに聞いただろ?俺の事」
「?!…聞いてたんですか?」
「悪いな、俺耳聡いんだよ。家政婦みたいにちょろっとだけな。
…あいつ、相変わらず俺の事買いかぶってんのな」
信号が青に変わりました、とアナウンスする機械的な音声が日差しの照りつける車外から聞こえた。

「先輩、すっごいお兄さんのこと褒めてましたよ」
「昔の事を過大に覚えていすぎなんだよ、あいつはな。俺は語学のエキスパートなんかじゃねえし、絶対大学で勉強してるお前のが頭いいっつうのに。時々、俺が分かると思って言ってるのか、研究の話をするんだが俺にはもうサッパリだ。お前さん、あれが分かるってマジか?」
「先輩の研究です?八割程度ですけど」
「充分じゃねえかよっ!…あーならいいや、安心した。ならさ、時々でいいから話聞いてやってくれないか?麻美さん一人に面倒任せておくの、正直悪いなと思っててさ」
「先輩の話ですか?時々クイズの話はしてますけど。嬉々として話振ってきますし」
「うーん…ちょっと違うんだ。まあ、趣味の範疇の話もいいんだろうが、麻美さん曰くあいつ時々煮詰まってて一人でウンウンしてる時があるらしい。身の回りの事や食事の世話は申し訳なくも面倒見て貰ってるが、流石に麻美さんが才女っつっても研究の悩みじゃあ、専門的すぎて何とも手が出せない。彼女も気に掛けてるが他に頼れそうなのいないし、良ければ覚えておいてくれっと有難いなー、とな」
「確かに先輩、いっつも一人で研究室に籠もってますもんね。カビそうなくらいに」
「らしいね。ナツは今日も今日とてクマちゃんの中よ。あいつはどうも名前に反して日光浴が苦手な男になっちまったようだ」
二人の口元からクスクスと苦笑がこぼれる。

「いっつもビスコだし」
「そうよあれの主食はビスコ。時々レーズンイッチもポッケに入ってるらしいぞ。麻美さんはいつもレーズンイッチもらうそうだ」
「いいなあ、俺も今度そっち下さいって言ってみよ」
「俺が言ったらフーセンガムよこしやがったのよあいつ。このクソ暑い夏場にガム。どう思うよ?実の兄はそれかよってさ!」
「しょぼ!」
二度目の赤信号で停車した車内で、声を上げて二人して笑う。

「先輩の研究、上手くいくといいですね」
「だーな。俺としても、それと紀香の入学が一番の楽しみよ。…さ、そこ右折したら着くぞ」
信号の右折マークが淡く灯ると、車は軽妙に右方向へと折れてデパート駐車場のPマーク看板下へと滑り込んでいった。

【7月27日・デパート駐車場へ・そのころ会場ではくまちゃんがくしゃみ】












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