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ゲーム二次創作中心ブログ。 更新まったり。作品ぼちぼち。

死の目醒め。
日向は、きっと油断していたのだろう。
今までどんなに抵抗したとしても、フタバは自分に刃向かうことはなかったから。
その日も、通常の倍近い制御剤を投与し、準備は万端のはずだった。

最初に首が飛んだのは、フタバにロンギヌス・コピーを突き立てた研究員だった。

鮮血がシェイクしたコーラの如く勢いよく飛び散り、瞬く間に部屋は真っ赤に染まってパニックに陥る。

慌ててロンギヌス・コピーを手に取ろうとした別の研究員の腕が飛ぶ。
足が飛ぶ。顔が寸断され、目玉が飛び散る。

腰を抜かし、慌てて部屋から逃げだそうとする他の研究員達の胸に、頭に、足に、背中に、腹に、身の丈以上の剣閃が踊りかかった。

他に動く者がいなくなった時、腰を抜かした日向がフタバの頭上に見たのは、フタバの宿したペルソナ能力と融合した、「死神」のシャドウが具現化した姿だった。
フルメタルフェイスの仮面、
盛り上がった筋肉を覆う黒衣、
背中には無数の棺桶を背負った大きな男。

死神と、幼い息子の視線が日向に向かう。
ノイズ混じりの揃った声色が、頭上から降ってくる。

『どうして?オトウサン…』

フタバは、黒く淀んだ瞳の奥から、血の涙を流していた。
死神は、血の涙を流しながら、日向ににじり寄ってきた。

「や…やめて、やめてくれええええええ!悪かった!わたしが、わたしが、わるかった…!」
『ドウシテ。ドウシテ。ドウシテ。ドウシテ。ドウシテ。ドウシテ。ドウシテ。ドウシテ。ドウシテ…?』

死神は、ロンギヌス・コピーの柄を握り、掴み直すと、泣き叫び小水をもらした日向の頭に槍の切っ先を突き立てた。
日向の身体が小刻みに揺れる。振動する。
がたがたとコンプレッサーのように秒刻みで揺れ惑う。

そっと、死神が槍を引き抜く。
日向は、死相も分からぬほどカラカラに干涸らびて、死んだ。

死神はロンギヌス・コピーを砕いて粉々にすると、フタバを拘束していた全ての枷を取り払い、人一人抱き抱えられそうな程大きな両手で、壊れ物でも扱うかのようにフタバを包み、椅子から床へと降ろした。

フタバは辺りを見回し、呆然と血と死臭にまみれた部屋の惨状を見ていた。

『まま』

死神が、そっと囁く。

『ままのきらいなもの、みんなやっつけたよ』

フタバは、死神を見上げる。
金属質の仮面に穿たれた孔の奥から、縋るような、甘えるような幼い声が降ってくる。

『まま、これでもうこわくないよ。
ぼくがままをまもってあげる。
ずっとずっといっしょだよ。だからさびしくないよね?』

「………」

『どうしたのまま?
なにがこわいの?
ぼくはきみのみかただよ。
だってきみはぼくのままで、ぼくはきみだから。
こわいものがあるならいって。
ぼくがみんなやっつけてあげる。

だから、ぼくとずっといっしょにいて…』

ぼくが。ぼくがやった。
おとうさんも、
こわいおじさんも、
おともだちも、みんな、みんな、みんなぼくのペルソナでしんだ。
ぼくがいたから。

ぼくのせいで、みんな、みんな、しんだ。
ぼくは、ぼくは、ぼくは………。

フタバは死神の手を振り払い、血まみれの部屋で泣き叫び、声が枯れるまで助けを呼び続けた。
弱った身体で部屋を駆けずり回り、転んで、血の海にまみれて。

手にまとわりつく死臭。
血の赤。
真っ赤な手。
べとべとする手。
ぬぐってもぬぐっても取れない、余計に赤く汚れていく掌…。

フタバはじっと自分の掌を見つめていた。
見上げれば死神がじっと自分を見ていたから。
真っ赤に染まった手を見て、死神を見て、フタバの目から溢れ続けていた涙はいつしか止まった。

死神は、フタバがじっと掌を見ている間、周囲に転がっていた死体の片付けをしていた。
どこからか呼び寄せたシャドウの集団が部屋の隅々まで埋め尽くし、引き潮のように引いていくと、部屋の中に溢れていた血溜まりも死体も全て消えた。日向の死体…ミイラだけは、死神がフタバの心理を読み取ったのか残しておき、後に監視室の方へと運び込んでいる。

フタバは死神を見なかった。
ただキョトンとしたまま、手をだらりと床に垂らし、ぼんやりと虚空を見つめていた。

死神は影時間の間にラボの外に出て、島内をさまよってはフタバに必要なものを持ってきた。

『まま、これ、たべものだよ。だいじょうぶだから、たべて』
「…」

『まま、はい、おみず。のど、からからだよね』
「…」

『まま、おようふくだよ。そっちはべとべとしてるから、きもちわるいでしょ?』
「………」

死神が差し出す食料も、水も、着替えも、フタバは手を伸ばす事無く、がらんどうの目だけが虚しく死神を見ていた。

七日後。死神は彼の心を察し、その姿を変えた。

「はじめまして、フタバ」
少し癖の残るショートヘアの少年の姿になり、死神は再びフタバの目の前に立った。

「………きみ、は」
「ぼく?ぼくはきみのともだちだよ。きみをまもりにきたんだ」
「だめ…あっちにいって…ぼくは…」
「大丈夫。ぼくはいなくなったりしないし、死んだりしない。だって、きみのともだちだもの」
「………とも、だち……?」
「そう。ぼく、きみとともだちになりたいんだ。ずっとずっといっしょにいようよ。ね、フタバ」

死神が冷え切ったフタバの身体を抱きしめると、フタバはそっと、たよりなく、彼の服の裾を握る。それを感じ、死神は初めて満ち足りた笑顔を浮かべた。
二人が絆で結ばれた瞬間だった。













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