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ゲーム二次創作中心ブログ。 更新まったり。作品ぼちぼち。

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コンマ数秒の戸惑い。
*

騒ぎで予想外の人混みが会場周囲に出来上がり始めた頃、車内で横になっていた庵も遠く聞こえるマイクの声に「?」となり身体をそろりと起こす。

「何かあったのかな?」
車内の時計を見ると、時間は既に二十分経過している。
窓から差し込む日差しが二の腕を刺すように暑い。
そろそろ戻らないとまずいんじゃなかろうか。

ひとまず電話を入れて見るも、いつまで立っても典生は出ない。
留守電を入れてケータイを閉じると、外の騒がしさが妙に気にかかった。
そろりと人目を気にしながら車外に出ると、ぞろぞろと人の列が駐車場からどこか一カ所に向かって流れている。心当たりは一つしかない。

「あそこで面白いことやってるみたいだぞ?」
「ゲームのイベントに凄い人来てるって~」

近くから聞こえる囁きに、イベント会場からの大きな歓声。
庵は万一のために持ってきていたキャスケットを目深に被り、そっと列に紛れ込んだ。

*

第一試合:チキンレースクイズ >結果

敗>アドウ(選択:自然科学) × : 勝>マアム☆(選択:グルメ・生活) ○

典子(マアム☆)「パパ、調子悪いんじゃないの?後悔しても遅いわよ?」
典生(アドウ)「ちげーよ、尻ポケットのケータイが震えて気が散っただけだ!」

「つーか」
「最初の一問以外、全部ビンゴ決めるとか」
「どっちもどっちですげーなオイ」

庵が会場に到着した頃、ステージでは第二試合が丁度終わったところであった。
ゆるゆると前へと詰めていく人混みの後方へと連なって、そっと前方に広がるステージへと目を凝らす。
指先サイズの筐体とプレイヤー、やはり片方は典生である。
もう片方は…と視線の捉えた先、ステージの片隅に紀香をだっこしている麻美が見えた事で庵の思考回路が「あ」と解を示す。

「(あのよく似た風貌…典子さんか!?夫婦揃って何してるんだよっつうの!!)」

心の中で突っ込みを入れつつ、庵はてっきり名の知れたプレイヤーでも来てたのかと思いわざわざ足を運んだ自分に苦笑せざるを得なかった。

しかし、夫婦揃って相当な腕前のようだ。
典子さんも黙ってるとは人が悪い。…後ほど是非お相手いただきたいな。
そんな事を考えてワクワクする一方で、庵はすでに人混みの中に押しやられた我が身をどうやって車へと連れて行くか、脳内で苦慮に追われていた。

第二試合:多答積み重ねクイズ >結果

敗>アドウ(選択:語学文学) ○ : 勝>マアム☆(選択:趣味・雑学) ○

典生(アドウ)「ママー、どうしたよ?多答得意なはずじゃない?」
典子(マアム☆)「まあ、失礼な言い方ね!次よ、次!」

液晶ビジョンへ、次の試合形式「早押しクイズ」が表示された所であちこちから声が上がる。

「奥さん頑張ってー!」
「ダンナに負けちゃだめよー!」
「小遣いカットしちゃえ!」

「父ちゃんいいぞお!」
「早押しは男の方が得意だろ!いってまえ!」

…いつしか母親派とダンナ派に観客が別れて、炎天下の中で応援すら始まっている。
いまだかつてない盛り上がりに、ステージ隅に追いやられていたアイアイはおっかなびっくりでマイクを握りしめる。

「すっごい人だかりだよぉ…今まで、アイアイ頑張ってもこんなに来なかったのに…」
観客いっぱいのステージってこんなにいいんだ、と感激するアイアイの背後、ステージの下ではマネージャーは一層複雑な思いを深めていた。

「(アイアイの力でなく、偶発的な、しかも素人の力で客が来た…これは、イベント的にはオッケーでもアイアイは後が続かない…)」
頼んだアシスタントが当たりだったのは喜ばしいが、あんまりにもアイアイに絡みがなく、なおかつ立っているだけになっている彼女の存在は空気と同じだ。

これでは、いてもいなくても一緒。
…そう言われても返す言葉が出せない。

どうしましょ、どうしましょ、とマネージャーがまごついている中、「あれぇ?」とふいにアイアイが首を傾げた。
突然、マイクを握ったままステージ脇から壇上を降りると、「アイアイ!?」と制止するマネージャーの言葉も聞かずその場から人混みへと駆け出していってしまった。壇上にいた麻美以外、気に留める者はなかった。観客はステージに釘付けになっていたのである。

最終試合:早押しクイズ

典生(アドウ)選択:スポーツ
典子(マアム☆)選択:漫画・アニメ・ゲーム

「お互いに」
「温存してたもんね」
筐体を挟んだ向こう側で、互いに口元から自然と笑みが零れるのが分かった。

騒ぎが落ち着くまで移動は無理だと諦めると、庵は液晶ビジョンに映し出される問題をどうにか見ようと必死に背伸びを繰り返す。
こういう時に限って、目の前の客が背の高いがっちりしたお父さん方ばっかりなのか。上からはともかく、左右の隙間すら逞しい(メタボな)二の腕で隠れてしまい、見えるのは他人のうなじと背中ばかりというサッパリ残念な視界の狭さである。
こんな時、小柄な我が身が憎い。
かといって帽子を脱ぐわけにはいかないし、クイズ問題の音声アナウンスも用意してないイベントスタッフの手際の悪さすら憎らしい。
色んな場面を想定しておくべきだろうがよー、と唇を尖らせていると、ふいに誰かが背中をちょん、ちょん、と突っついた。
きっと同じような視界の理由で前へ出してくれ、と言う相手だろうと思いちょいちょいっと掌で払うも、しつこく指先は庵の背中を突いて突いてビートすら刻む感触で小気味よく突っつき回す。

「もう、なんだよ?!」
あまりのしつこさにムッとして振り返ると、太めなお父さん方の隙間と隙間の間から、にゅっ、とどこかで見慣れた愛らしい頭部と指先だけが覗いていた。

振り返った瞬間、「あ」と背中に冷たい感触が駆け抜ける。

そこには、壇上で司会をしているはずの…アイアイの姿があった。
子供のように小柄でなければ出入り出来ないような人の隙間をぬって、一見生首みたいに見えるような頭だけ誰かの脇下の隙間から突きだした体勢で庵の背中を突き回していたのである。
庵の顔色が豹変した事で本物だと察したのだろう。
アイアイの顔に、救世主の降臨を見たかのような嬉々とした笑顔が浮かび、全力で隙間へと全身をねじ込むと、そのままの勢いで「見つけたよぉ~~~!」と庵に抱きついてきた。
とっさの行動に面食らったせいで、庵は受け身一つ取れぬままにアイアイを抱き抱える形で周囲の人混みに倒れ込み尻餅をつく。

「何かあったのかしら」
「さあて知らんよ」
巻き添えを食って他の客まで倒れそうになり、わあわあと人垣の一角でどよめきが起こるもステージ上の二人はクールに眼前の画面を睨む。

現在、20:20のイーブン。次で最終問題である。
ラスト問題のジャンルは、互いに能力が拮抗している【歴史・地理・社会】問題の地球儀マーク。

「(これで)」「(決まる)」
互いにそう確信し、ボタンに手をかけた瞬間。後方から声がした。


「ママー、頑張ってー!」


…予想外のタイミングで、予想外の声援が二人の反射神経に決定的なタイムラグを与えた。
ほぼ出落ちの問題、瞬間的に押し込まれたボタンは0.01秒差で母に軍配が上がった。
タイポしろタイポしろと念じる父の呪念も虚しく、勝負は決した。

液晶ビジョンに大写しになる、泣き顔のヒゲバットと胸を張って高笑いの魔法少女。
大勢のダンナ衆の溜息を一身に浴びつつ、典生は筐体に突っ伏したまま「くっそおおおおー…」と敗北の悔しさを滲ませて呻いた。

「という訳で、緊急夫婦対決は奥様に軍配が上がりました~!」
紀香を母親の典子に引き渡し、司会を進める麻美の勝利コールに奥様方の黄色い歓声が飛んだ。
「何で、何でパパを応援してくれなかったんだよ紀香ぁぁぁ!」
がばりと涙目な顔を起こして自分を見つめるパパに、ママの胸元で紀香は「だってー」と唇を尖らせる。
「ママがねー、今日いっぱい勝ったらノリカにパフェ食べさせてくれるって言ってたから!」
「そこかああああ!!ちくしょー…ちくしょー!」
「良かったわね紀香!お父さんが来月お小遣いガマンしてママたちや紀香をパフェ食べに連れてってくれるって!」
「やったーーー!」
「そんなあああ!」
本気で涙目な典生に、典子は筐体から立ち上がるとそっとインカムを外し、「やりこんでることバラすからよ」と耳打ちすると、めっ、と子供を叱るように拳を作って軽く額を小突いた。
「…その代わり、夏のボーナス出たら臨時お小遣い支給したげるから♪そうしないと、マスター維持も大変でしょ?」
「理解のあるカミサンで感謝いたします。…とほほ」
「はい、よろしい!」
典子奥様のにっこりスマイルでひとまず一区切りとなったステージ上へ、観客側の一角から「麻美ちゃ~~~ん!」とまったりなアイドルのアナウンスがマイク越しに響き渡る。

「あら、どうしたのアイアイ?何かあったの?」
「見て見て!!アンアン来てた!捕まえたよ~~~!!」
アイアイの発言に麻美ばかりでなく、典子や典生、観客全体が一瞬で騒然となる。周囲の視線がアイアイの一身に集中した瞬間、アイアイはプレゼントの紐をほどくかのように庵の被っていたキャスケットをすぽん、と外して見せた。
人混みに倒れ込み、身体のそこかしこを打ちつけ面食らっていた庵はアイアイの奇襲を防げず、「あっ」と短い悲鳴を上げる。
アイアイの取り上げた帽子を取り返そうと手を振り上げるも、一瞬にして降り注ぐ無数の視線に全身が硬直し、口をぽかんとしたまま真っ青になる。

「やばっ…」
身体の上にのしかかっていたアイアイを無理矢理(転ばないように)押しのけると急いで立ち上がり、そのまま逃げだそうとするも「アンアンだ!」「伝説の回答者だ!」「アンサー庵が来てたのか!」と色めきたって騒ぐ周囲の客に取り囲まれ、すぐに逃げ道を失った。

「ちょ、ちょっと俺違う…」
「アンアン!アンアンだよっ!アイアイ会った事あるから間違いないよ~!ねー何で逃げるのー?一緒にアンアンしよっ!!」
アイアイのとどめの一言で、周囲は庵が本物であると確信したらしい。
怒号のような歓声と息が詰まりそうな程の熱気で、庵はまた頭がクラクラと回るような感覚に陥る。こんなピンチに限って、また目眩が起こるなんてついてなさすぎる…!
逃げないと、逃げないと、今更ながらに典生についてきた事を後悔しながらも、周囲の有名人を見る好奇の眼差しから一刻も早く逃げ出したい衝動に駆られて余計に焦りが募る。
足下が揺れてる。気持ち悪い…。

「ちょっと待った!」
マイクがハウリングするほどの大声で周囲が一瞬硬直する。
と、ステージ上からふわり、と人影が観客側のホワイトスペースへと飛び降りてきた。
客席乗務員姿の麻美である。
唐突な麻美の行動に周囲がとっさに避けてスペースを作ると、その間隙をぬって麻美は鹿のごとく庵の元へと駆け寄る。
「何するんだよ!」と異を唱える観客を「黙って!」と一言で退けると、面食らった周囲も同調しずるずると後方へ退く。

人混みを掻き分け掻き分けやってきた麻美は、「大丈夫?」と訊ねる間に庵の二の腕を掴み、そのまま「どいて!」と後方の一角に檄を飛ばした。
迫力に周囲が気圧された瞬間を見逃さず、麻美は僅かな隙を力任せに駆け抜け、庵を連れて駐車場へと一気に走り抜けた。

「あっ…ちょっと!麻美ちゃーーーん!アンアンどこに連れてくのーーー!!待ってーーー!!」
はたと我に帰ったアイアイと観衆であったが、アイアイと共に多くの客が庵を追って駐車場を右往左往するも、駐車場のどこにも二人の姿を見つける事は、遂に出来なかった。

【7月27日午後・二人は逃避行・続く】












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