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ゲーム二次創作中心ブログ。 更新まったり。作品ぼちぼち。

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遠い日の夢と空の青。
*

ひたすら走って、走って、エレベーターで背中を向けて、デパート最上階の駐車場の端まで駆け抜けたところで、庵と麻美は互いに顔を見合わせ「ぷはぁ」と大きく息をついた。

「危なかったわね!」
額に浮かんだ玉のような汗を手の甲でぬぐうと、麻美は何食わぬ顔でにっこり微笑む。乾ききってひりつく喉を押さえて軽く咳き込むと、庵は咳払いをして申し訳なさそうに顔を上げる。

「麻美さん、良かったんですか?」
「何が?」
「いえ、バイトの邪魔しちゃったから」
「ああそれ?いいんだよ、別に。
一応、君やみんなが覗きに来るかもなーって想定してたけど、本当になってあそこまで騒がれるとは予想外だったくらいかな?アイアイ…藍子ちゃんも微妙に空気読まないからなぁ、ごめんねビックリさせて」
「いやそんな!謝るのは俺の方だし!俺も、つい好奇心で行かなきゃ良かったな…すみません、ご迷惑ばっかかけて」
「いーのいーの」と、至極軽いノリで麻美はウィンクを返して見せる。大人の余裕。

「バイト代なくっても、あたし困る訳じゃないし。姉さんには後でフォロー入れておけばいいけど、きっと典生おじさんも分かってくれてると思うよ」
「すんません」
「いいってば!反省は終わり、それよりどうしてここに?」
「それは…」
かいつまんで典生の息抜きに便乗して来たことを告げると、麻美は「なるほどねー」とすぐに納得した様子である。

「おじさん、本当に大変みたい。新しい上司に『高卒』だからっていびられてるんだって。相手は超有名私立四大出で、コネで出世したクチなのにそれだけが自慢のやな奴なんだって、すっごく嫌そうに言ってたわ。嫌だね、化石みたいな学歴主義の老害が上に居ると」
「手厳しいなあ麻美さん」
「本当の事よ?ウチの実家…アサヒデビールなんか良い例だよ。血縁者ばっかりの縁故採用で大手企業経営してたら中から腐っていくのかなー、なんて。もっとも、茜ちゃん家みたいにずっと家族だけで成功してる企業もあるし、やっぱり血筋の問題かもなぁ」
溜息混じりに眉をひそめてみせる麻美の横顔が何故か切なげに写って、庵は奇妙な感覚に捉われた。

「暑いねー」と言いつつ、麻美はベストを脱ぐと首に巻いていたオレンジ色のスカーフを外す。白いブラウスから僅かに透けて見える、張りのあるボディライン。つんと上向きな胸元が形良くブラウスとインナーに収まっていて、一瞬視線が釘づけになった己を、庵は内心で激しく自戒する。
露わになった麻美の細く白い首元を、一筋、汗の玉粒が滑り落ちていった。

「麻美さん、お家にいい思い出ないの?」
「聞きたい?つまんないよ」
「いや、話したくないならいいや。なんとなく」
「うーん、実家は楽しかったんだけど、時々親戚と顔合わせる日はとっても憂鬱だったわ。ウチのお父さん入り婿で、一族の長だったおじいちゃんにも覚えめでたい優秀な人だったから、逆に親戚にはすっごい嫌われてた。外様の三流大卒のくせにって。あの頃、お父さんは次期社長候補最筆頭だったからね。だから、ウチのママと私達姉妹は絶対お父さんの味方でいようねって決めてたんだ」
「それで神戸にも一緒についてきたんだ」
「そうそう。上の姉さんたちは優秀だったから、既に実家から本社を支えるべき立場にいたけど、学生だった私と姉さんは自由が利いたからね。それでも、お父さん過労で亡くなって、社長に出来なくって、あの時は随分がっくりしたわ。あーやっぱりあたしじゃ何にも出来なかったって」
麻美の言葉尻が引っかかって、庵はううん、と眉をひそめる。

「さっきから、麻美さん自分の事やけに卑下してない?何だかおかしいな」
「そう聞こえた?…ごめんね。実は私、結構自分に自信ありそうで無いんだなー、これが」
口ぶりは今だって懐豊かなお姉さん風なのに、それを口にしている麻美本人はその言い回しが自分自身可笑しいようで、フェンス越しに遠く港を眺めながら「あのね」とさりげなく溜息をついた。

「君は言っても大丈夫そうだから言うけど、私、中途半端なんだよね」

「………どこが?」

心からそう思って、そう切り返したのだが、庵の言葉に麻美は苦笑混じりに「全部よ」と答える。

「家事でも勉強でも、人並みにはこなせるけどそれだけって感じかな。私はこれだけ!って思えるものも、思い当たる才能もないし」
「そんなの、麻美さんなら少し欲張ればすぐ見つかりそうだけど」
「一度やってみたよ。欲張って頑張って頑張って、それでもダメだった夢」
才女の鑑のような麻美の、意外な一言に庵は「ええっ!」と思わず声を上げて口を塞ぐ。

「…それって、何だったの?」
「漫画家」
「へええ!?」
二重な意外さに目を丸くしている庵を見て、麻美は「ホントだよ~」と隠す様子もなく応じる。

【デパート屋上・麻美の独白・次回へ続く】












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