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ゲーム二次創作中心ブログ。 更新まったり。作品ぼちぼち。

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突撃隣の天才宅。
*

「さあさあどうぞ上がってね~。車はウチの脇に止めておいてくれたらいいわ。みんなそうしてるから~」
二台置くスペースがなくってゴメンねえ、と庵母はお尻をふりふり、玄関のカギを手に小走りに駆けていく。
診療所から車で約10分。旭川近郊、なだらかな山際の裾野に広がる住宅街。
路面電車と並行する市道をしばらく走り、広い坂道を登るとその途中に安佐家があった。
周囲も似たり寄ったりな一軒家が坂沿いに軒を連ねており、思うに建て売り住宅だったのだろう。
屋根付きガレージに洗濯干しの小さな庭。ホースがついたままの蛇口。
横が狭い分、縦に伸びているような印象の木造二階建ては、あまり知ることのない昭和の風情を敦に想起させた。

「おじゃましまーす」と中に入ると、狭い廊下の奥に階段が見える。
左にキッチン、右が居間らしい。
玄関の狭い三和土は靴入れ以外にタヌキの置物と傘立てが半分占拠している。一般小市民の家にありがちな「ついつい買って置き場所に困るもの」なのだろうが、こうも堂々と出入り口に置いておくとは中々の度胸である。

「狭くってゴメンねえ、まあくつろいでおいて。ああそうそう、庵は二階へお願いね。あの子の部屋上だから」
ころころと良く喋る庵母の誘導でひとまず病人の庵を夏彦が上の階へおぶって連れて行き、横にさせる。
「オカンで熱がぶりかえした」と強調する庵は、言葉どおりに車内から向こうずっと目を閉じたまましんどそうに目を伏せている。広いおでこに冷えピタシートを貼り付けタオルケットをかけてやると、すぐに頭からかぶってそのまま寝入ってしまった。
強烈な西日が差し込む。遠目にもサッシに点々と錆が見えるが、こじんまりしたベランダがある。
母親が手際よくカーテンを閉め「よっ」とクーラーのスイッチを入れると、外の室外機が低い音を立てて回り出した。
庵の使っていたという室内はベッドと学習机、空っぽの大きな本棚のみだったが、夏彦にはそれだけでも手狭に感じられた。一部屋一部屋の間仕切りが狭い作りなのだろうか。土地の広さからしてやむなしかも知れないが。
二年以上主がいなかった部屋だが、おそらくは時々母親が手入れしているのだろう。それなりに清潔感を保っているし、何より布団の用意が早い。準備していたのかも知れない。
そこまで思い至って、夏彦は親というのはかくあるものなんだよな、と既に逝去した母親の背中を思い出していた。

一階では、他の三人がキッチンで食卓の椅子に腰掛けながら窮屈そうに部屋の中を眺めていた。
大皿小皿がみっしり詰まったガラス棚に観音開きの大型冷蔵庫。その上にはオーブンレンジ、脇には卓に載った家電と電話機がでん、と鎮座している。
中央に座しているダイニングテーブルは普通の四人掛けサイズだが、周囲の家具のせいか手狭感が否めない。
椅子を引いて立つスペースで精一杯だ。
くつろぐ…というには少し窮屈な雰囲気だが、晶は慣れているようで懐かしそうに周囲を見渡している。
二階から夏彦を連れて降りてくると、何かおやつ無かったかねえ、とせわしなく冷蔵庫や戸棚を開け閉めしている庵母の姿に、大輔は「どこのオカンも変わらないなあ」とぼんやり思った。

*
全員おやつのソーダバニラバーを握らされ向かいの居間へ通されると、そこには部屋の四分の一を占拠するほどの巨大な物体が。
「こりゃまたでっかい」
「液晶テレビ…」
おそらく42インチ以上サイズの、有名ブランドの液晶テレビ。縁側の網戸から燦々と後光を受ける姿が眩しい。
家電好きな父が見たら喜びそうだなあ、と敦がぼんやり思っていると、お盆に麦茶を載せた庵母が「二年前の最新式よぉ」と恥ずかしそうにホホホと笑いながら不釣り合いな小さい坐卓へ盆を置いていく。
「チャンネルはそこだよ。足伸ばしてくつろいでて」
「は、はい」
「僕手伝いますよ」
「いいのよアキ君座ってて!万一包丁で怪我でもさせたら志津さんに悪いから!ねっ!」
庵母が台所へ足早に去っていき、恐縮しながらそろりと卓を囲むと、男四人で居間はみっしりと一杯になってしまった。

「せ、狭い…」
足を伸ばせば確実に誰かの膝に当たる距離。胡座をかくのがやっとな範囲内に、男四人。
クーラーは効いているようだが、差し込む西日+体温で暑く感じてしまう。
黙々とアイスバーをかじり、麦茶を飲む。

敦はさっきから落ち着きなく周囲をキョロキョロしている。
「敦、どうしたの?」
「え?あ、いえ…何でもないです晶先輩」
てへへ、と意味なく笑う後輩に首を傾げつつ、晶もそれ以上は追求を止める。
話題が出ない。と言うか、喋りだし辛い。庵母の勢いと空気的に、お呼ばれした家に来てます的な緊張感とふいんきが居間中に漂う。
と、流石に男四人だんまり続きではなんだしあれである。
「テレビつけていいか?」と大輔がリモコンへ手を伸ばしたその時、玄関の戸がガラガラと開く音がした。

【7月29日夕・誰かきたようです・続く】












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