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ゲーム二次創作中心ブログ。 更新まったり。作品ぼちぼち。

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第三の男。
*
空気が変わったな、と思い、顔を上げると曇天模様の朝焼けがビル群の真上に広がっていくのが見える。
最近は昼も夜も関係なく仕事場に詰めてばかりだから、時間の概念も薄い。
だが、外に出てみれば、季節の移ろいが肌を通して感じられるのは心地よかった。

今朝はこんなに清々しいのに、気分は漬け物石のように重い。
擦り切れた鞄に愛用のノートパソコンを詰め、これから新幹線で3時間半揺られて地方都市へと赴くだけなのだが、やることが山のように山積している。

一つは、過去の清算。
一つは、見舞い。
一つは、…ほぼ十年分の愚痴と不満を吐き出しに。

あいつには言いたい事、聞きたい事が積み上がっていたはずなのに、今は何一つ浮かんでこない。可笑しなものだ。
いや、とうに不満などなかったのかもしれない。
ならば、俺はあいつに何を言いに行くのだろうか。

前日、昔の同僚に話を付けて、必要な物を回収させると次の約束を取り付けた。
あれが一緒なら、角も立たまいし。
ただ、あれの無神経さには、未だにイライラさせられる。あんな迂闊さで、精神科医をやっているのが不思議でならない。

「ええ?何でそんなに遅くなるんです?
…仕事の兼ね合い?だって有給休暇取るって…。
…新幹線で?ここ、空港近いですからひとっ飛びで一時間かからないですよ?
朝一なら、同じ時間帯にも…あれ、堂島さん?堂島さ…」

…俺は空輸が嫌いだと、何遍言えば覚えるのか。
コンピュータシュミレート上で何度上手く行こうと、俺は鉄の塊が地面を離れて飛ぶなんざ認めん。
ともかく。
数年ぶりに取った休暇だ。無為には出来ない。
明けていく冬の朝を眺めながら、俺_堂島尚貴は駅の改札へと向かった。

*

最初の一時間は順調だった。
パソコンでメーラーを開いて確認し、必要なら部下に電話連絡し、後はタバコでもふかしてうたた寝してれば良かった。

二時間後。
…こういう日に限って、何故電車のダイヤが大乱れするのか。
別に、幾ら遅れようと休暇はたっぷり取ってあるから、目的地に着ければ問題は無い。

榎本は待たせればいい。ガキのお守りなんぞ一日さぼってもバチは当たらんだろうし、正直あの子供に二人がそこまで入れ込む理由も釈然としない。
どうせ、奴の腹の中にいる化け物がほっといてもお守りをしているではないか。榎本の番犬なんぞより、よっぽど頼りになりそうだ。ガキの人生には同情するが、だからといってあの子供の内に在る「死神」の所行が帳消しになる訳では無いのだし。

やっぱり、あの時「処分」するべきだったのだろうか。
どれだけ恨まれようと、憎まれようと。
そうすれば、今あいつは俺と同じく人生を自分のためにのみ使い、それなりの幸せを掴み、人生を謳歌していただろうか…。

…やめよう。考えるだけ、無駄だ。
答えの出ない疑問など、考えても時間を浪費するだけではないか。何度も反復しては、そう結論づけてきたではないか。
…それより、俺の斜め向かいの席で車掌や店内販売の売り子を捕まえては、電車の遅れ云々で文句を垂れている年配の女や出張帰りの酔っぱらいを黙らせてやりたい。
たるんだブルドッグみたいな面を、顔面の肉ごとそぎおとしてやりたくなる。
俺は静かな環境が欲しいんだ。ヒポコンデリーは黙れ。

三時間後。
電車は動く気配が無い。
どうも、数日前に導入した新しい機械のトラブルで今は登り下り共に壊滅状態らしい。最悪だ。
俺にその機械のメインシステムを見せてみろと言いたい。
すぐ手直ししてやるから、エンジニアを呼んでこい。
本気で車掌にそう言いそうになって、堪える。
周囲の目がある。目立つことは、極力避けたい。

幾月が動いた。
今度は桐条抜きで、単独行動に出ようとしている。

成瀬の急病は、その「仕込み」の完了に他ならない。
ならばフットワークの軽い奴の事だ。一両日中に動くはずである。
狙われる標的は分かり切っている。
ガキは心配いらない。万一、命に関わっても、むしろ世界のためには消えた方がいいとすら思う。
それなら、残りは誰かぐらい馬鹿でも分かる。
…二人とも、出来るなら死なせたくはない。
酒を飲む相手がこれ以上減るのは、やはり精神的に辛い。

定期入れに入れた、古びた写真。
それを撮ったのは、まだ対シャドウ兵器開発を行っていた頃。
…「娘」たちが、生きていた頃。

写された集合写真。人影は、「娘」も含めて14人。
よくもまあ、こんなぼろいポラロイドの狭い枠にキレイに収まったものだと思う。
この内、生きているのは3人。内、一人は重体。既に鬼籍へ片足を突っ込んでいる。

『…堂島。俺だ、成瀬だ。…俺の病気、榎本から聞いてるんだろう?…』

数年ぶりの通話は、ごく短いものだった。

『…最後のわがままだ。頼まれてくれるか…』

その内容を聞き、失望したのを覚えている。

なあ成瀬よ。なぜ気付かない?見て見ぬふりを、この8年間ずっと続けたのか?
お前は、そんな弱い男だったのか?

お前はあの時見たはずだ。あの子供はとうに精神が死んでいたのを。
ならば、ほとんど死に体の子供の身体に再び命と意志が宿り、元通りの人間に戻ったと、本気で思っていたのか?
それとも、そう思いたかったのか?

それとも、お前に見せるべきだったのだろうか。
俺のペルソナが見た、あの子供の精神に巣くっていた、異形と死神の仮面を。
あれは人間じゃない。
俺には、あのガキが人間などには見えん。

醜い、人間の負の感情を凝縮した仮面を寄せ集め、創り出された人工の化け物…キメラだ。

『…現在、登り、下りともダイヤ大幅に乱れており、復旧のめどは立っておりません。代替の交通手段が整い次第…』

車掌のアナウンスがリフレインで続いている。
うとうとと、早起きだったためか眠気がまとわりつく。さっき店内販売でコーヒーを頼めば良かった。

…成瀬。悪いがお前が死のうと子供の面倒は見る気はない。
その代わり、お前の末期を見届け次第、地獄に送っておいてやる。
その前に、お前の面を見て話がしておきたくはあるが。
榎本の話など、当てにならん。あいつは、良くも悪くもお人好しが過ぎる。
せめて、お前が正気かどうかだけでも、確認しておきたかった。

目を閉じる。
眠る瞼の裏に浮かぶのは、8年前のあの日の情景。
最後の仕事…。

「俺が、全ての元凶だったんだ」

そう言って肩を落としたお前に、俺は何と声を掛ければ良かったのだろうか…。












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