あの日、あの時に君がいたから。
*
庵は、自分のお父さんの死の光景を間近で見てた。
それをずっと繰り返し思い出しては、苦しさに耐えられなくなってた。
それで、表面的にだけでも平穏なふりをして、形から、早く現実に戻ろうとしてたんだって…。
「(あのさ晶、死ぬのってきっと簡単だぞ)」
言いながら、晶の脳裏に浮かぶあの日の庵の声。
口へ軽く掌を置く。言葉にならないものが浮かび上がって、喉を塞ぐ。
言葉に出来ない、重たく暗い感情で声が出ない…。
「(俺は目の前で、人の命が消えるの見ちまったから。父が死んで、別の塊になるのを見てた)」
「(…言ってなかったか?ダンプと壁の間に挟まってぺしゃんこ。
血が出てたけど、途中から水たまりみたくなってて血と認識しなくなってた。
赤くて生臭い液体と、ひしゃげたダンプと、あとその間から出てる、手みたいな形の塊。
それを毎晩夢で見るんだ。
慣れたけど、何だか起きると頭が重くて、最近は時々後頭部が痛むんだ)」
「(何でだろう、そこだけ前後の記憶が真っ黒なんだ。
俺が轢かれそうになってたのを助けてくれたらしい。
そのせいで、葬式の時に、影で親戚が何だか悪口言ってたみたいだ。
あいつ、泣きもしないって。
俺は、何で葬式してるのかすらよく分からずに座ってたように思う)」
「(俺は助けてくれって言った訳じゃなかった。と、思う…。
どうやって記憶を辿っても、言った覚えがないんだ。
だけど、父は勝手に俺を助けてくれたんだ。
理由も分からない。意味も分からない)」
「(あれからずっと、俺も自分の事が全部蚊帳の外みたいに思えてならないんだ。
大学も決まったし、下宿先も決まった。
どれもこれも、みんな先方が決めてくれたから、俺はそれに「YES」と言うだけ。
自動で何もかも決まって、後は家を出て行くだけだ)」
「(…もう、俺、あの家に居場所ないんだよ。
母さんは奥歯に物を挟んだような喋り方しかしないし。
姉貴はファザコンだったから、前より険悪だし。
あの家に居たくないのに、あそこの部屋しか居場所が無くて。
ネットカフェも、マクドも、どこ行っても誰かが俺を見てる気がする。
それを感じると、頭が痛んで…)」
「(晶。お前、愛されてるんだから。
帰った方がいいぜ。
…あのバカ兄が血相変えた声出してた。
きっと、お前んちの母ちゃん、卒倒しかかってるぞ?
確認するまでもなく。何でか分かるよな?
…だから、受験なんて、お前が思ってるほどの事、ないんじゃないか…?)」
生々しく思い出せる、海鳴りの音。
ごうごうと、その日は海が荒れていた。
僕たちの心も千々に乱れていたはずなのに、異様な静けさだけがぽっかりと僕らを包んでいた。
「(ごめんな)」
「(何で謝るの?庵)」
「(俺は関連づけて何でも考えるの。だからごめん。
…俺のせいで、集中出来なかったんだろ)」
「(クイズの事?…違うよ。全然違う。
それは君の問題であって、僕のじゃない。
…僕は怖かった。
誰にも頼れない、みんな敵、怖くて、逃げたかった。
逃げる理由も欲しかった。
だって、受験はいつでも僕を冷たくあしらってきたから。
今回だって、予想通りだった、だけだよ)」
「(やさしいな)」
「(違う、優しくないよ。恐がりだ。臆病で、卑怯だよ)」
「(やさしい人間が死ぬのは、もういやだよ俺)」
「(…そうやって、反論を塞ぐ気。イヤな言い方)」
「(そうだよ。俺はイヤな奴なんだよ。だから良い奴が死ぬのはいやなんだよ…)」
「(…何で泣くの庵。…どうしたの、泣かないでよ。ねえ、僕まで何か、おかしく、なってくるじゃないか…)」
おいおい泣いた。二人してわあわあと泣いた。
海鳴りが聞こえる、足の底まで冷えるような寒さの中で、お腹空かせてぎゃあぎゃあ泣いた。
二人して、全てを海に吐き出すように、大声で泣き叫んだ。
それでやっと、見えざる溝が埋まって、元のような友達に戻れたような気がした。
その後、二人でのろのろと道々帰る途中で、アーサー・ミンツ=アーサー国際大学学長=とたまたま遭遇した。
膨大な契約書類の説明のために岡山まで出向いたスタッフが、庵の不在を伝えていたらしい。彼も僕らを捜していてくれた。
黒のセダンから顔を覗かせる老学長に事の子細をかいつまんで説明すると、学長は僕に学校案内を一式手渡してきた。
今月末に二次選考があるから、学ぶ気があるなら来なさい、と。
最初、庵のコネならいいと断ろうとしたが、そうではないと一笑に付された。既に僕の素行や成績も調査済みだと。
やる気がある生徒しか、ウチは手をさしのべないのだよと微笑む老人に、何故か不思議な縁を感じ、庵の勧めもあって今の大学を受験して。
そして今に至っている。
…
「先輩…大丈夫ですか…」
後輩の心配そうな囁きで我に帰る。二度三度咳払いをして、涙を拭う。
鼻を啜り上げて、寝返りを打って「ごめん」と呟くと、背を向けた背後で衣擦れの音がした。
一瞬のためらいの後、ぎこちなく、背中を撫でる優しい感触が、背筋を上下する。
「…?」
「あの…弟が深夜にぐずると、いつもこうしてたもので…」
背中にあてがわれた掌の熱が、とても熱い。だが、心地よい人の熱。体温の優しさ。
「…」
「ああ、えっと、すみません…僕、何でも聞きたがるからその…えっと、いいです。無理なさらないでください。お台場で何があったのか、僕は知らなくても大丈夫です。だって、それで、今の先輩たちが居るって分かりましたから…」
「…ごめん」
途中から、話そうにも言葉にならなくなって、ずっと泣くのを堪えていたような気がする。
敦の我慢強さと優しさもまた、沁みるようで胸が詰まる。
あの日、
あの夜、
海に還ろうかと思い続けていた僕を地上へ引き留めてくれた、親友の涙。
思い出す度に、普段のギャップもあって胸が苦しくなる。
と、同時に、己の事ばかりで泣いて苦しんでいる己の小ささを思い知る。
あれから二年。僕は何も変わっていない。
多少の勉学と遊びと友人は増えたけど、僕の本質は未だにあの問いから逃げ続けている。
「お前は何になりたい?」
重くのしかかる「将来」という先の見えない暗闇。
それでも、襲い来る波が分かっているなら、きっと、越えられる。
そうだよね、庵…。
あの天才と呼ばれた親友なら、僕の問いにも難無く答えてくれそうな安堵感がある。だけど、それは庵の答えであり、僕の答えではない。
だから。
もう探すのはやめよう。
一体自分は何になれるのか、この弱く無力で浅はかな自分と向き合わなければ。
背中の温かさを感じながら、そのまま意識がゆったりとフェードアウトしていく。
消えていく意識の片隅で思い出していたのは、幼い頃、夏の日に蚊帳の中で団扇を仰いでいてくれた母の微笑だった。
*
「・・・……… ん っ …」
翌朝。
晶は目覚めてすぐ寝返りを打つ…と、真横にあった何かに肘が当たり、「いったあ」と相手の間抜けな叫び声で驚き、慌てて飛び起きた。
何事かと目を丸くしていると、何という事はない、すぐ横で寝入っていたらしい敦の鼻にしたたか肘打ちを繰り出してしまったらしい。鼻血は出てないようだが、真っ赤になった鼻を押さえて「ひろいれふよぉ~」と涙目で抗議され晶はゴメン!と即座に正座し謝る。
「ごっごっごめん!敦鼻血は?平気?!…ああ良かった、というか、あの後…」
「ひゃ、ひゃい…しゅぐ眠ってらひたんで、ふぉくもほっとひたらにぇむくなりまひて(は、はい…すぐ眠ってらしたんで、僕もほっとしたら眠くなりまして)」
「ああ、ホントごめん…真っ赤になってる、すぐ冷えピタクール持ってくるよ。冷蔵庫に入ってたから」
「何事だ!」と寝ぼけ眼の夏彦と大輔も隣の部屋からにゅっ、と障子の間に頭を挟んで覗き込んでくる。
「あー、ちょっと僕がねぼけて敦君の鼻に肘をやってしまいまして」
「ひゃい、それえひょっとひゃれてて(はい、それでちょっと腫れてて)」
「おーいおい、寝ぼけるのは大輔だけにしてくれよ?昨日の晩、こいつ幽霊がいるだのなんだって」
「いや、幽霊じゃなくって座敷童だったんすけど…」
「…」「…」
また見たんですかっ!と隣室の二人に叫ばれ、思わず「悪いもんじゃないからいいだろっ!?」と叫ぶ大輔の声が座敷中に響き渡る。
「お前んちの座敷童、良い子だな。大事にしろよ。盆のお供えは毎日カルピスがいいってよ。濃いめのがいいって」
「えっ?何でカルピスの事知ってるんですか?ウチ、お座敷だけ特別にお盆の中日にお供えしておくんですよ」
「ちょっと待てよ二人ともー。俺をからかってないか?二人して朝から嵌めようとしたって俺は引っかからんぞ」
「いえ、そんな事話すまでもないですし、座敷童さんのお話は父から聞いてるだけで、どこの部屋かも、第一僕は見たこともないですし」
「ひょーいえば、あこひゃんがさいひんウチのわらひさんのひげんがひひっへれんわれ(そういえば、アコちゃんが最近ウチの童さんの機嫌が良いって電話で)」
勘ぐる夏彦に、他三人のしれっとした受け答えが跳ね返り、場は再び沈黙する。
数秒後。
嘘だろー!?と、今度は夏彦の野太い大声が座敷に響き渡る事となった。
【7月31日・新しい朝が来ました・台風終了・続く】
庵は、自分のお父さんの死の光景を間近で見てた。
それをずっと繰り返し思い出しては、苦しさに耐えられなくなってた。
それで、表面的にだけでも平穏なふりをして、形から、早く現実に戻ろうとしてたんだって…。
「(あのさ晶、死ぬのってきっと簡単だぞ)」
言いながら、晶の脳裏に浮かぶあの日の庵の声。
口へ軽く掌を置く。言葉にならないものが浮かび上がって、喉を塞ぐ。
言葉に出来ない、重たく暗い感情で声が出ない…。
「(俺は目の前で、人の命が消えるの見ちまったから。父が死んで、別の塊になるのを見てた)」
「(…言ってなかったか?ダンプと壁の間に挟まってぺしゃんこ。
血が出てたけど、途中から水たまりみたくなってて血と認識しなくなってた。
赤くて生臭い液体と、ひしゃげたダンプと、あとその間から出てる、手みたいな形の塊。
それを毎晩夢で見るんだ。
慣れたけど、何だか起きると頭が重くて、最近は時々後頭部が痛むんだ)」
「(何でだろう、そこだけ前後の記憶が真っ黒なんだ。
俺が轢かれそうになってたのを助けてくれたらしい。
そのせいで、葬式の時に、影で親戚が何だか悪口言ってたみたいだ。
あいつ、泣きもしないって。
俺は、何で葬式してるのかすらよく分からずに座ってたように思う)」
「(俺は助けてくれって言った訳じゃなかった。と、思う…。
どうやって記憶を辿っても、言った覚えがないんだ。
だけど、父は勝手に俺を助けてくれたんだ。
理由も分からない。意味も分からない)」
「(あれからずっと、俺も自分の事が全部蚊帳の外みたいに思えてならないんだ。
大学も決まったし、下宿先も決まった。
どれもこれも、みんな先方が決めてくれたから、俺はそれに「YES」と言うだけ。
自動で何もかも決まって、後は家を出て行くだけだ)」
「(…もう、俺、あの家に居場所ないんだよ。
母さんは奥歯に物を挟んだような喋り方しかしないし。
姉貴はファザコンだったから、前より険悪だし。
あの家に居たくないのに、あそこの部屋しか居場所が無くて。
ネットカフェも、マクドも、どこ行っても誰かが俺を見てる気がする。
それを感じると、頭が痛んで…)」
「(晶。お前、愛されてるんだから。
帰った方がいいぜ。
…あのバカ兄が血相変えた声出してた。
きっと、お前んちの母ちゃん、卒倒しかかってるぞ?
確認するまでもなく。何でか分かるよな?
…だから、受験なんて、お前が思ってるほどの事、ないんじゃないか…?)」
生々しく思い出せる、海鳴りの音。
ごうごうと、その日は海が荒れていた。
僕たちの心も千々に乱れていたはずなのに、異様な静けさだけがぽっかりと僕らを包んでいた。
「(ごめんな)」
「(何で謝るの?庵)」
「(俺は関連づけて何でも考えるの。だからごめん。
…俺のせいで、集中出来なかったんだろ)」
「(クイズの事?…違うよ。全然違う。
それは君の問題であって、僕のじゃない。
…僕は怖かった。
誰にも頼れない、みんな敵、怖くて、逃げたかった。
逃げる理由も欲しかった。
だって、受験はいつでも僕を冷たくあしらってきたから。
今回だって、予想通りだった、だけだよ)」
「(やさしいな)」
「(違う、優しくないよ。恐がりだ。臆病で、卑怯だよ)」
「(やさしい人間が死ぬのは、もういやだよ俺)」
「(…そうやって、反論を塞ぐ気。イヤな言い方)」
「(そうだよ。俺はイヤな奴なんだよ。だから良い奴が死ぬのはいやなんだよ…)」
「(…何で泣くの庵。…どうしたの、泣かないでよ。ねえ、僕まで何か、おかしく、なってくるじゃないか…)」
おいおい泣いた。二人してわあわあと泣いた。
海鳴りが聞こえる、足の底まで冷えるような寒さの中で、お腹空かせてぎゃあぎゃあ泣いた。
二人して、全てを海に吐き出すように、大声で泣き叫んだ。
それでやっと、見えざる溝が埋まって、元のような友達に戻れたような気がした。
その後、二人でのろのろと道々帰る途中で、アーサー・ミンツ=アーサー国際大学学長=とたまたま遭遇した。
膨大な契約書類の説明のために岡山まで出向いたスタッフが、庵の不在を伝えていたらしい。彼も僕らを捜していてくれた。
黒のセダンから顔を覗かせる老学長に事の子細をかいつまんで説明すると、学長は僕に学校案内を一式手渡してきた。
今月末に二次選考があるから、学ぶ気があるなら来なさい、と。
最初、庵のコネならいいと断ろうとしたが、そうではないと一笑に付された。既に僕の素行や成績も調査済みだと。
やる気がある生徒しか、ウチは手をさしのべないのだよと微笑む老人に、何故か不思議な縁を感じ、庵の勧めもあって今の大学を受験して。
そして今に至っている。
…
「先輩…大丈夫ですか…」
後輩の心配そうな囁きで我に帰る。二度三度咳払いをして、涙を拭う。
鼻を啜り上げて、寝返りを打って「ごめん」と呟くと、背を向けた背後で衣擦れの音がした。
一瞬のためらいの後、ぎこちなく、背中を撫でる優しい感触が、背筋を上下する。
「…?」
「あの…弟が深夜にぐずると、いつもこうしてたもので…」
背中にあてがわれた掌の熱が、とても熱い。だが、心地よい人の熱。体温の優しさ。
「…」
「ああ、えっと、すみません…僕、何でも聞きたがるからその…えっと、いいです。無理なさらないでください。お台場で何があったのか、僕は知らなくても大丈夫です。だって、それで、今の先輩たちが居るって分かりましたから…」
「…ごめん」
途中から、話そうにも言葉にならなくなって、ずっと泣くのを堪えていたような気がする。
敦の我慢強さと優しさもまた、沁みるようで胸が詰まる。
あの日、
あの夜、
海に還ろうかと思い続けていた僕を地上へ引き留めてくれた、親友の涙。
思い出す度に、普段のギャップもあって胸が苦しくなる。
と、同時に、己の事ばかりで泣いて苦しんでいる己の小ささを思い知る。
あれから二年。僕は何も変わっていない。
多少の勉学と遊びと友人は増えたけど、僕の本質は未だにあの問いから逃げ続けている。
「お前は何になりたい?」
重くのしかかる「将来」という先の見えない暗闇。
それでも、襲い来る波が分かっているなら、きっと、越えられる。
そうだよね、庵…。
あの天才と呼ばれた親友なら、僕の問いにも難無く答えてくれそうな安堵感がある。だけど、それは庵の答えであり、僕の答えではない。
だから。
もう探すのはやめよう。
一体自分は何になれるのか、この弱く無力で浅はかな自分と向き合わなければ。
背中の温かさを感じながら、そのまま意識がゆったりとフェードアウトしていく。
消えていく意識の片隅で思い出していたのは、幼い頃、夏の日に蚊帳の中で団扇を仰いでいてくれた母の微笑だった。
*
「・・・……… ん っ …」
翌朝。
晶は目覚めてすぐ寝返りを打つ…と、真横にあった何かに肘が当たり、「いったあ」と相手の間抜けな叫び声で驚き、慌てて飛び起きた。
何事かと目を丸くしていると、何という事はない、すぐ横で寝入っていたらしい敦の鼻にしたたか肘打ちを繰り出してしまったらしい。鼻血は出てないようだが、真っ赤になった鼻を押さえて「ひろいれふよぉ~」と涙目で抗議され晶はゴメン!と即座に正座し謝る。
「ごっごっごめん!敦鼻血は?平気?!…ああ良かった、というか、あの後…」
「ひゃ、ひゃい…しゅぐ眠ってらひたんで、ふぉくもほっとひたらにぇむくなりまひて(は、はい…すぐ眠ってらしたんで、僕もほっとしたら眠くなりまして)」
「ああ、ホントごめん…真っ赤になってる、すぐ冷えピタクール持ってくるよ。冷蔵庫に入ってたから」
「何事だ!」と寝ぼけ眼の夏彦と大輔も隣の部屋からにゅっ、と障子の間に頭を挟んで覗き込んでくる。
「あー、ちょっと僕がねぼけて敦君の鼻に肘をやってしまいまして」
「ひゃい、それえひょっとひゃれてて(はい、それでちょっと腫れてて)」
「おーいおい、寝ぼけるのは大輔だけにしてくれよ?昨日の晩、こいつ幽霊がいるだのなんだって」
「いや、幽霊じゃなくって座敷童だったんすけど…」
「…」「…」
また見たんですかっ!と隣室の二人に叫ばれ、思わず「悪いもんじゃないからいいだろっ!?」と叫ぶ大輔の声が座敷中に響き渡る。
「お前んちの座敷童、良い子だな。大事にしろよ。盆のお供えは毎日カルピスがいいってよ。濃いめのがいいって」
「えっ?何でカルピスの事知ってるんですか?ウチ、お座敷だけ特別にお盆の中日にお供えしておくんですよ」
「ちょっと待てよ二人ともー。俺をからかってないか?二人して朝から嵌めようとしたって俺は引っかからんぞ」
「いえ、そんな事話すまでもないですし、座敷童さんのお話は父から聞いてるだけで、どこの部屋かも、第一僕は見たこともないですし」
「ひょーいえば、あこひゃんがさいひんウチのわらひさんのひげんがひひっへれんわれ(そういえば、アコちゃんが最近ウチの童さんの機嫌が良いって電話で)」
勘ぐる夏彦に、他三人のしれっとした受け答えが跳ね返り、場は再び沈黙する。
数秒後。
嘘だろー!?と、今度は夏彦の野太い大声が座敷に響き渡る事となった。
【7月31日・新しい朝が来ました・台風終了・続く】
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