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ゲーム二次創作中心ブログ。 更新まったり。作品ぼちぼち。

香川の車窓から。

*
港前のロータリー脇に駐車した車までテクテク歩いていく間も、並んで歩くのに手も繋がない庵とのどか。
晶はふと、高校時代の庵を思い出しては「あんなに恋愛にうぶだったかなあ」と時々不思議にさえなる。
庵は一応恋愛経験がある。そりゃあ伝説になるほどにこっぴどくふられたもんだが、それでもこんなに慎重になるものなのだろうか。

「ののちゃん、今日はどうやって港まで?」
「琴電に乗ってきたよー。瓦町で降りて商店街ぶらぶらしてから来たんだ」

「(…絶対勢い余って早めに来てたな)」
思いはするが言いはしない晶である。
車で待機中であった他のメンバーも、遠目にも一様に自重モードのようである。どこかほんのり顔がにやけているのは気のせい…ではない。絶対。

「じゃあ、車乗っていこうか。ヒゲ先輩が運転してくれてるから、道案内お願い」
「うん、分かった!」
それじゃあ、と助手席へ乗り込もうとしたのどかを、「ちょっと待った」と運転席の夏彦が制す。

「お前さんと庵はすぐ後ろ。助手席は晶乗ってくれ」
「僕ですか?いいですけど」
「悪いな。ドライブマップは足下にあるから。他二人は一つ後ろの席へ詰める。さー移動移動!」
「ええっ何で?いーですよヒゲ先輩俺がナビしますから」
「お前さん方は黙ってすぐ乗り込む!(俺だって時には空気を読むぞ!)
夏彦の勢いに気圧され、そそくさと全員席替えを済ませると車は車体半分後退して、すぐさま勢いよく丸亀港から滑り出していった。

時間は既に夕方5時過ぎ。とはいえ真夏の夕焼けはまだまだ尾が長い。
まだほんのり朱に色づいたばかりの海原を横目に、車は一旦丸亀商店街のアーケード方面へ。
四国上陸記念に、一番近場のゲーセン、商店街内の「まるG」に寄ってまずは一押し。

小一時間ほど早押しや店内対戦を楽しんで、車は屋島方面へ。
周囲が夕焼け色から宵闇色に変わる丁度真ん中の色合い、朱と藍の色調が街中に濃い影を落とす中を緩やかに車は走っていく。

敦は車窓から香川の街並みを眺めて、「やっぱり雰囲気違うなあ」とぼんやり思っていた。
実家の新潟でそよぐ稲穂の姿も、神戸の港も、岡山の朝も、同じ日本の一部でどこか一緒なのに、どこか決定的に違う。

風土とか、土地柄とか、そういうの。

例えば神戸の海も岡山の海も同じ瀬戸内なのに、見え方はどこか違ってて。
香川から見たら、やはり何か雰囲気は異なって。
神戸の透き通った都会の海。
岡山で見たおおらかな自然の海。
そして香川の海は、どこか牧歌的で、ほんの少し神秘的な。

ああ、と思い当たる。
そうだ、四国ってお遍路さんの土地だ。
だから、そう思ったのかも。金刀比羅宮も確か香川だし。
へえ。何だか面白いな。

「旅っていいですねえ」
何となく、隣の大輔にそう呟くと、「そうだなあ」と彼もまた窓の外を見つめたままぼんやりと答える。

「どこ行っても、メシが旨いのはいいもんだ」
バスで直通に帰ってたらこうはいかないからなぁ、と非常に感慨深げに語る大輔に、「そうですか…」と敦は若干がっかり感をかもしながらそのまま無言で視線を窓の外へと向けた。

「…そう、それでちょっと遅くなったの」
「ふーん、そっかあ…大変だったねー」

前の座席から聞こえる、ぎこちない先輩たちの会話がくすぐったい。
しばらくそしらぬふりをして、敦は静かに会話に聞きいる。
視線の端っこで揺れる、普段はクイズでも何でも自信あり!な庵のうぶな後ろ頭が妙に可愛く見えて、敦は「にしし」と思わず声を殺して笑みを浮かべた。

【7月31日夜・そろそろお夕飯時です・敦君は初めての四国・続く】












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