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ゲーム二次創作中心ブログ。 更新まったり。作品ぼちぼち。

野郎ども恋愛を語る。
*
食後は店じまいを手伝い、すぐそばの安西家宅へと招かれると、五人は自宅脇の離れへと案内された。
住宅街端の、やや手広いお宅。
庭が狭い代わりに大きめの離れが脇へどんと居座っているので場所も一目瞭然。
離れは丁度五人が布団を敷いて丁度くらいな寝床用のフローリングで、クーラーも完備。
トイレと風呂は母屋と兼用とのことで、その後は家主のすすめ通りに風呂に布団敷きにと済ませ、気付けば既に10時前。
そろそろ就寝時である。

「お世話になりっぱなしだ」
「明日は一日頑張りましょうねー」
それから後はどうするかなあ、と思案にふける夏彦の隣に敦は「何したらいいですかねー」とのんびり腰を下ろす。
「まあ、ここ人気店らしいから幾らでもやることはあるだろうさ。それをこなしていくのみ」
「大輔さん、調べてたんですか?」
「いや、以前東京のバイト先のラーメン屋に本人が来たんで、その時にたまたま聞いた。自分の家もうどんセットの通販してるって言ってたからさ。ググったらかなりのヒット数叩いてたぞ」
「すごいですね、ネット販売で売れてるなんて!」
僕んちもそういうの考えた方がいいのかなー、と敦がぼんやりと呟く脇で、一人会話に入ってこない人が。

「庵先輩、知ってました?」
「知ってたよー」
と、言いつつカバンの中をごそごそごそごそと無心で整頓し続ける庵の背中に、何故か四人の視線が緩やかに集中する。

「何見てるの?」

「いや」「何も」「別に」「ないですけど」

「(ああもう、イライラするなあ…)」と一人物影で唇をむずむずさせているのは晶である。
容姿に恵まれている分、恋愛話に事欠かない晶は庵ののどかに対する超スローリーな対応がいじましくてならないのである。
早くしろ早く、肝心なとこでなんで言い出さないのかなこいつはと、ことあるごとに思っていたので、高松港ではそのまま告白行くかな?と一瞬思ったらあれである。

笑って誤魔化してどうすると。
もしかして、そのまま友だちのままでいる気とか?
告白しない→友だちのまま→なんとなく他の人に告白されてつきあい始めて、彼女とはずっと友だちのまま…それ、恋愛で一番良くないパターンじゃないか、と分析までしてしまう。性分とはいえ、入らないお節介も考え物だとつくづく思う。

コンコン、とノックの音に「はい?」と晶が返事をすると、「今いいかな?」とのどかの声が。
「いいよっ!」と何故か返事を返したのは庵であった。
からからから、と戸口を細く開けて、のどかは「庵君、寝る前にゴメンけどちょっと外来てくれる?」と囁くような小声で呟く。
「いいよ!」と、今の今まで整頓していたカバンを無造作にどさっ、とぶちまけながら慌ただしく庵が戸口の外へ出て行くと、途端四人は部屋の真ん中で固まってひそひそと額を寄せ合う。

「きたな」満を持してって感じだなと、夏彦。
「来ましたね」いつもと違ってにやり顔な敦。
「これは明日デートなんじゃね?庵の奴」大輔は分かり切った風だが口もとがにやけている。
「というかね。女の子に来させてる時点でダメだと思うよ僕は。普通自分から言いに行くべきでしょ?甲斐性ないんだからもう…」
額に手を当てて幼馴染みのダメっぷりに嘆息するロン毛な恋愛王様のご意見に、三人顔を見合わせる。

「辛口だなぁ安住」
「僕の経験則ですよ先輩。ていうか、先輩いっつも麻美さんに先導されてません?御飯食べに行っても任せっきりとか」
「なっ、何で分かるんだよそんな事が!というかだな、それは相手に合わせた方がいいだろうに」
あからさまに動揺した夏彦に、晶はやっぱりそうだ、と顔をしかめる。

「ダメですよ!時にはリーダーシップを発揮しないと、いつも自分ばかりがプランを考えてるって不満を抱かれかねませんから。女性はちょっとしたところでも男性に引っ張っていってほしい、って思ってるんですよ。気遣いと言いますか」
「むっ、そういうもんなのか…って、俺等は別にそんなのでは!」
「では夫婦漫才みたいな感じ、ってことにしておきましょうか」
「もっと失礼だろうが!その、麻美さんに」
「じゃあ、違うんですか?安藤先輩」
敦の純粋無垢なつっこみに、夏彦はもはや顔面が噴火しそうなほどに赤面している。
まあそれはそれとして、と静観していた大輔が口を開く。

「晶、お前が何ですぐふられるのか俺には分かった」
「なっっ!!?」
そんなバカなと、今度は晶が狼狽する番である。
腕組みしたまま、涼しい顔で大輔は言葉を続ける。

「お前のその口ぶり………全部雑誌の受け売りだろ。察するにan・anとかメンズノンノとかあたり」

「はあうっ!?」
「ほぉーらビンゴぉー。…あのな、俺の高校時代のダチと言ってることがまるかぶり。雑誌で女知った気になってる奴ってすっごい女にしてみたら勘にさわるらしいぞ?それ、気付かれてるから絶対に」
「そんなぁ!僕今までこれで結構上手くいってたのに!」
「だから付き合うまでは良くても、付き合ってすぐにダメ出しされてるんじゃねーの?進歩ねえなあ」
「恋愛経験なしの大輔さんに言われたくないですボソリ」
「ウルセエよっ!!俺はこれから!これからだっ!」
「大輔さん硬派きどってるけど、結局庵と同じで甲斐性無しなだけじゃないですか!今の時代告ってなんぼですよ!」
「そういうのはあいつみたく段階踏んでからだ!…まあ、正直庵はじれったいばっかりだが!だが!」

そう言ったきり、睨み合う晶と大輔。
思っていることはお互い同じである。

「やはり、お前とは決着つけないとならんようだな…」
「そのようですね大輔さん…僕は引きません。引きませんから」
「同じく。…九州着いたら、連絡取ろうぜ。抜け駆けは無し。ガチンコ勝負だ」
「いいですよ。僕は全然構いません。余裕ですから」
「言ったな。忘れるなよ」

安城杏奈。
アナマリア女学院大のミスキャン最筆頭と名高い長崎美人。
彼女は今現在、実家の長崎・佐世保に帰省していると聞く。
鈍感なのかはたまた天然なのか、猛烈アピールにいつまでたっても振り向かないポニーテールを振り向かせるべく、男たちは恋のライバルを確かめ合い、そして決意を新たに愛の炎を静かに燃え上がらせるのであった。

「何だか空気が怖いおー」

「ぬほおっっ!?」
晶と大輔の殺気だった剣幕で気付かなかったが、いつの間にやら庵が離れに戻ってきたようである。
慌てて警戒を解くと、庵はのそりのそりと敷かれた布団の上を歩き、ちょこんと四人の前に正座する。

「…あのさー、明日なんだけど」

「ああ」
「明日は一日お前フリーな」
「分かってる、分かってるから」
「頑張ってくださいね!先輩」

僕応援してますからっ、と力強く宣言する敦の表情に、庵は「・・・え?何で?どうして分かるのみんな?」と、豆鉄砲がクリーンヒットした鳩のような顔でぐるりと四人の顔を見合わせる。

「まさか、立ち聞きしてた?」
「いや」「聞かなくても」「先輩の言いたい事は分かりますから」
「顔でな」

「あ・・・・そう。そっか。ありがと」

明日のどかにデートへ誘われた旨、どう伝えたものかと思案に暮れていた庵は途端にがくっと拍子抜けして首を傾げる。
そんなことは最初から(略)な四人は、込み上げるニヤニヤを堪えつつ、明日誕生するであろう新しいカップルをどう祝福してやろうかと思い思いに思案を巡らせるのであった。

【7月31日深夜・もじもじ庵・ワクテカがとまらない四人・明日から八月・続く】












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