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ゲーム二次創作中心ブログ。 更新まったり。作品ぼちぼち。

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熟年とうぶうぶカップル。
*

二人の影が遠のいてしばらく。

店舗からそっと顔を出して道沿いを眺めていたおかみさんは、店に戻るなり「行ったみたいだねえ」とカウンターの店主に声を殺して囁く。

「まあ、あの彼なら心配ねえとは思うが、デートとはなあ」
はあ、と溜息をこぼす夫に「父ちゃん寂しいかい」とおかみさん。

「そりゃあまあ、なあ。でもなあ、あの彼が将来のどかのダンナになるってんなら、父ちゃんも安心だぁな。どえらい偏差値の私大に通ってるそうだし、就職も天才ならへっちゃらだろうし。頑張って東京の女子大入れたかいがあるってもんだ」
「頭はいいんだし、会社入ればきっと高給取りになるさ。
それにあんた、近々クイズ番組に復帰するなんて噂もあるそうじゃないか。
母ちゃん有名人の義母なんて照れちまうよもう」
「へえ!そりゃどのテレビで言ってた噂だ?俺は知らんよ」
「ああ、何でも東京のTOKIOテレビ?の内部で噂になってるって、昨日ノブが言ってたんだよ。ネットのウワサ掲示板に書いてあったってさ」
「ネットは信用ならねえよ母ちゃん、5ちゃんだっけか3ちゃんだっけか、あれは嘘八百だってこないだ隣の醤油屋が言ってたぞ」
「そうかもしんないけど、あそこの噂は本物くさいってさ。何せ、今度のどかがバイトしにいく…」

「ああ、あれかあ」と、店主もぽんと膝を打つ。

「あそこの秋から始まるクイズ番組、社運かかってるそうだっつってたなあ。
今全国回ってるんだっけか?メイン司会のアイドルとのどか、友だちだって言ってたもんな」
「そうだよ父ちゃん、もし庵君と上手いこといったら、もしかしたらのどかも全国デビュー出来るかも!ああ、今日上手く行くといいねえ…」
「母ちゃん夢見過ぎだろ…ん?母ちゃん電話、電話鳴ってるぞー」
「ああはいはい、今行きますよ~~~♪」
呆れ気味の店主をよそに、おかみさんは娘の幸せとテレビへの幻想で一日仕事にならなそうな舞い上がりっぷりであった。

*

一時間二本の路線バスに乗り込んで、とろとろと屋島駅まで走る道。

「毎日このバス乗ってたの?」
「うん、そう。駅まで歩いてもいけないことないんだけど、ちょっと時間かかるんだ。最初は自転車だったけどチェーン切りで二回も捕られちゃって、それでこっちに乗り換えたんだよ」
「へえー、そりゃひどいや」
「でしょー?だけど、高校時代クイズに一緒に出た友達とはバスで知り合ったから、それはラッキーだったかも」
「そういえば、そろそろ予選会の季節だね」
「懐かしいねー。暑くなるとそろそろだなーって、毎年思ってた」
「俺も」
そんな話を聞くだけで、並んで座る座席が特別に思えてくるから不思議である。
ほんの数年前、彼女は今自分が座っている席に腰掛けていたのかもしれないのだ。

自分たち以外は老人と運転手しかいない、閑散とした車内。
途切れがちだけれど、淡々とした会話の連なり。

「今日、何か予定以外で見たいものある?」
「ううん、特にはないよ。だけど」
「だけど?」

「…できたら、二人きりだし一緒の台で早押ししたいかなー…なんて」

「おおっ」
「えっと、春のあの時以来、そういうことなかったし。一人一台で対戦してばっかりだったから」
どうかな?と上目遣いで訊ねる彼女を前に、否と言う男はいない。

「うん、いいよ。…何か、照れるね」
ははは、と誤魔化し紛れに口から予想外な気の抜けるにやけ声。
彼女も力みが抜けたのか困ったように眉根を下げて小さく笑う。

「そう、だね。いつもみんな一緒の時はこんなことないのにね。変なの」
「そうだね」
「ふふ」
最初の目的地まで、しばらくゆったりと。
流れる時間も、肌を通す熱の感触も、ただただ心地よかった。

【8月1日午前・娘さんはバスで市内へ・おかみさんは電話をとりに・続く】












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