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ゲーム二次創作中心ブログ。 更新まったり。作品ぼちぼち。

電話ですよ。
*

「はい!…ったく、なんだよオカンかようるせえなぁ…
…へ?姉ちゃん?知らないけど?…
……はあ!?ケータイ忘れてるって!バカじゃねーの?!
…マジバカだろなんだよそれっ!
…あー、でも今日はいいじゃん別に。だってデー…
え?バイト先から?緊急?…うっわー何やってんだよぉーー!」
瞬間湯沸かし器の用に瞬時に顔を真っ赤にして電話口へ大声を張り上げるノブに、「どうした?」と小声で夏彦が訊ねると「ちょい待って」と掌をかざす。

「で、何?何で俺に?…ええっちょっ…
…そりゃそうだろうけど、お昼動けるの俺だけだけどさぁ、うん、うん…
…うん、分かった、言ってみる。すぐかけ直すよ、うん、じゃ」
憮然とした面持ちで着信を切ると、ノブは「ごめん」と深い溜息まじりに夏彦へ頭を下げる。

「いや、いいんだが…のどかさんに何かあったか?」
「あ、うん…日曜、姉ちゃんレオナワールドでバイトの予定だったんだけど、その仕事先から緊急連絡入って話がしたいからすぐホテルの方来てくれって実家の電話に連絡入ったみたい。オカンそれで姉ちゃんに電話したら、家の中から着メロしてて。あれー?と思ってたら、姉ちゃん、自分の部屋にケータイ忘れててすっげー量の着信入ってたってオカンむっちゃ慌ててたよ。で、ちょっと姉ちゃんにどうにか連絡するなり拾ってホテル行くなりしてほしいって…」
「ホテル?」
「レオナワールドって言えば…確か四国最大の遊園地ですよね。そこにホテルが?」
首を傾げる敦に、ノブは「いいや」と頭を振る。

「ホテルに泊まってる、姉ちゃんの大学の友達んとこ。その人の手伝いで、日曜だけアシスタントのバイト入ってるっつってたけど。名前調べたらB級アイドルみたいなんだけど、何かあったみたいだよ」

それを聞いて、大学生全員の顔色がさぁっと引いた。
脳裏をよぎる、ツインテールのロリ系宇宙人型アイドルの幻…。

「アイアイ!」
全員の息ピッタリな雄叫びにノブは「何で知ってんの?!」と声のでかさ+四人のハモり具合でびくっと身を強張らせる。

「四国ではイベント中止になったって聞いてたのになんでだ!?」
「そっ、そうなんですか大輔さん?」
「岡山から連絡したとき、小野田先輩から確かにそう聞いた。東北や甲信越で客の入りが良くなくて、四国はスポンサーが降りて中止になったって…」
だから安心してたんだが、と苦々しげに顔をしかめる大輔の前で、ノブは困惑気味に「ど、どしたの」と眉をひそめる。

「で、他に先方は何か言ってたか?」
「いや、オカンからはそれだけしか聞いてない。ただ、かき入れ時のお昼に自分たちは動けないから、できたらお兄さんたちにお願いして姉ちゃん拾ってホテルへ向かってくれたらって」
「ところでつかぬことを聞くが、イベント会社に庵の事は話したか?」
「俺は知らない。姉ちゃんが言ってないなら知らないんじゃないかな?あ、でもオカンが俺に電話する直前に相手の担当者と話したって言ってたから、その時にペロッと喋ってる可能性はあるけど?何かにつけてうどん屋PRしようとするとこあるからなぁ…姉ちゃんはプライベートだからお客にも内緒にしてってしきりにオカンやオヤジには口止めしてたっぽいけど」

「(なるほどそう言って誤魔化してたのか、のどかさん)」
おそらく庵から聞いてのどかも察していたのだろう。
気遣いに感謝しつつも、不穏な空気を感じずにはおれない。
庵の事情をいちいち説明しているのも面倒だろうし、昨日オヤジさんやおかみさんと話した風では…ばれている可能性も考慮に入れておかねばなるまい。
あの陽気なテンションで、ついついポロリもあり得ないとは言い切れないではないか。

「…」
「…」
「…」
「…」

大学生四人、黙考の上で互いに無言のまま目を合わせ、小さく頷き合う。

「庵には申し訳ないが、デート中止だな」
「見つかったらうるさそうですしね」
「どうせ四国でイベント再開の目処が立たなくなったとか、バイト中止とか、せいぜい想像するにそういう話だろ?だったら庵の存在は伏せておいた方がいいよな」
「お二人の邪魔するの、気が引けますけどね」

「えっえっ何何、何か兄ちゃんたちもあるの?」
事情をとんと知らないノブは既に方針の固まりつつある大学生たちの真剣な横顔にオロオロと目をくるくるさせる。
と、二言三言確認しあい、「分かった、行こう」と夏彦はソフトを飲むように啜りシュガーコーンの端っこまで一気にガリガリと口の中にねじこむと、唇についた欠片もきれいになめとりゴックンと飲み込んだ。

「その前に安住、電話一本入れてやってくれ。居場所確認して、そこから目立たない場所へ移動するよう伝えてくれ」
「了解」
言うやいなや、晶はケータイを取り出すとリダイヤルですぐに庵のケータイへと発信し耳へ押しやる。

『もしもし?』
「あ、庵!?今どこ?…栗林公園の中?で、調子ど…
…えー、邪魔するなって?分かってるよ!
それより、ちょっと大変な情報入ってきたから連絡を…」
庵ののほほんぶりに、半分呆れ気味に応対していた晶の口調が、ふとピタリと止んだ。

「?」と通話口に耳を押し当てたまま眉根をひそめて聞き入っているようである。
周囲の夏彦たちも、そのままの直立姿勢で容易ならざる様子の晶をじっと見入る。
晶の顔色が、明らかに見る間に険しくなっていくのが分かったのだ。

プツッ。
ふいに、通話が切れる音だけが全員の耳に聞こえ、晶はそろっとケータイの着信を切った。

「…ばれたかもしれない」
真っ青になる晶に夏彦は思わず「なんだって?!」と声を荒げてしまい、慌てて「すまん」と詫びを入れる。

「どうした?何があった?」
「電話の向こうで庵がてんパってるのが聞こえた。誰か来たみたいで、後で追って連絡するって…変な切れ方を」
「まさか、イベントスタッフ…」
「やばいな」
オロオロする敦をよそに、夏彦は「すまんがちょっと」とノブに手招きをする。

「ここから栗林公園までどのくらいだ」
「えっ?…えーと、飛ばせば15分くらいで。スタッフの人来たなら、俺達行かなくてもいいんじゃないの?」
「いや、行かなければならん!事情は追って車内で説明する。さ、乗り込め!」
「えっ!すぐ行くの?」
「当たり前だ!ついでに、お前さんの姉ちゃんにもちょいと説明しなきゃならんことがありそうだ」
「そ、そうなんだ…分かった。近道教えるよ」

【8月1日昼・うどん屋ワゴン急いで発進・その頃二人は・続く】












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