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ゲーム二次創作中心ブログ。 更新まったり。作品ぼちぼち。

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それは突然やってきた。
*

「…俺でなければダメなんでしょうか」
「…これだけご説明しても無理とおっしゃられますか」
「言います。子供の頃に散々大人にお涙頂戴話を聞かされて嫌と言えない状況に追い込まれて、周囲の体裁のためにそれでも仕事をこなして身体を壊して、今のアイアイみたいになってもまだ回復した時に向けて仕事をギュウギュウに突っ込まれてましたから」

『(…ねえ庵君、この番組出てくれないかな?君が出てくれたら、おじさんとても助かるんだよ)』
『(…アンサー庵君と見込んでお願いするの!ねっ、ウチのクイズ特番に是非出てちょうだい!)』
『(…庵、母さんの友達がどうしてもって…だから、ちょっと風邪辛いだろうけど、明後日もイベントに顔出してちょうだい!ね、お願いだよっ!)』

「そ、そうだったの、庵君…」
「うん…まあ、ね」

遠い日の思い出。
大人に媚びへつらわれていたあの頃。
思い出したくない、不気味な愛想笑いを貼り付けた大人達の残滓が瞼の奥に克明に浮かび上がり、胸くそ悪い美辞麗句を吐く。
ヤニで黄ばんだ犬歯を見せて紫煙を吐き出す荒れた男の唇、女の分厚いルージュの唇が歪み、母のシワの寄った口元が頬から厚塗りのパウダリーで粉をふいてへらへらと曲げられる。

きもちわるい。

今目の前にいるアイアイのマネージャーがそうした安直な手もみごますりをしてこないので、まだここに辛うじて座っていられるだけで、十年前の吐き気が再現されて胃がむかむかして辛い。
逆に言えば、アカデミッククイズはこうした贔屓も八百長もなかったから高校二年まで楽しく参加出来たのだが、それすらも今は辛い過去でしかない。

『(…ヒソヒソ…あのガキ、次からどうにかしないとダメだな…人気があるから言い辛いが、相手がいくら阿呆とはいえ売れっ子のアイドル泣かすまで本気でやるか?しかもひと周り相手が年上だってのに…こっちが幾らカンペで負けろって言っても聞きやがらんし…天才様ってか、気にくわないね…)』
『(…あの子、本当にカンペも八百長も無しだったのね…段取りじゃあ○○事務所の子が最後で優勝するはずだったのに…後でクレーム来て大弱りだったわ。ウチのを大々的にアピールするんじゃなかったのかって。…あの子が出るってだけで視聴率が上がるって噂は本当みたいだけど、使いづらいわねえ)』

『(…庵、悪いけど…あんまり、もうテレビに出ないでおくれよ。お父さんが、ね…嫌がってるみたいでさあ…)』


「庵君?どうしたの?顔色悪いよ」
「あ…大丈夫だよののちゃん、なんでもないから」
慌てて思考を現状に巻き戻すと、余裕の消えた表情でこちらを見据えるマネージャーの顔をじっと見返す。

「今何時でしょう」
「二時前です」
「少しだけ…一時間だけ考えさせてください。一人になりたい」
「…分かりました。部屋をお取りしましょうか?」
「いえ、そこのロビーで。あそこは確か市内が一望出来るはず」
「よくご存じで。では、良い返事をお願いいたします。私ももう少し尽力してみますが…あまり期待はなさらないでくださいね」
「お願いします」
絞り出すようにそれだけ告げると、庵は一人立ち上がってふらっと部屋から出て行った。
その背中のあまりの弱々しさに、のどかは何も言えずただソファの上で「あーもう…」と煩悶し頭を垂れる。
顔を起こすと、同じくうなだれた様子のマネージャーと視線がぶつかり、苦々しく「どうするんですか」と切り出す。

「マネージャーさん、こんなやり方卑怯ですよ…庵君、絶対苦しんでる…」
「苦しいのはこっちも同じなんですよ…他の道が断たれている今、もうウチは彼にすがるしか…」
言葉尻を濁すマネージャーの傍らで、今度は室内用の固定電話が鳴った。
素早くマネージャーは受話器を取ると、「ほ」と間の抜けた声を出してはいはい、と二つ返事で電話を切った。

「ちょっとラウンジへ行ってきます」
「…どうしたんですか?」
「のどかさんはこちらで結構。彼をよろしくお願いいたしますよ」
言うが早いか、マネージャーが慌てて部屋を出ようとロックを外した矢先に、激しい勢いでドアを開け放つ音がした。

「安佐はどこだっ!?」
「出せコラァ!!」
野太い野郎たちの声で、湿っぽく沈んでいた室内の空気が途端にがらりと変わる。

「…安藤さん、穴輪く…みんなどうしてここへ?!どうして分かったの!?」
「母ちゃんに聞いて来たんだよ!」
何でそこまで頭回らないかなあ、と知ったようなクチで答える弟の姿が大学生四人の背後に見えて、のどかははたと我に帰る。
「ちょっ、ちょっとノブ!これどういうこと?!」
「そうですよ!一体何事…」
大学生四人に押し倒される格好で尻餅をついたマネージャーは、イライラと眉をひそめながら立ち上がると、すぐに四方を大学生に囲まれ言葉を失う。
顔の前には、むっとした様子の晶が。

「大体の状況は読めてます。僕らを出し抜いて庵に何かさせようとしてますね」
「ちょっ、それはっ…」
「さっき九州の先輩に電話で事情を知らないか聞いた時、気になること言ってたんだよな」
「あ、貴方は…!」
大輔の顔を見るなり何か言わんと口を開こうとしたマネージャーを、大輔は一睨みで黙らせる。
「庵が香川の大会にスペシャルゲストして招かれる、と数日前からネットの掲示板で騒ぎになってたらしいじゃないですか。これ一体どういうことなんでしょう」
「ネット民は眉唾程度の認識みたいだが、一応問いたださせてもらおうか」
「他にも、秋にテレビにレギュラーで出るとかもあったぜ!今日の晩に兄ちゃんたちから聞こうと思ってたけど、やっぱデマなのかこれ?どうなんだよ!」
ノブのトドメの質問で即座にマネージャーの視線が宙を泳ぎ、細長い顔面から血の気が消え失せる。

「やっぱり…噂の出所はあなたなんですね?アイアイのマネージャーさん…」
「どういった理由か知らないが、本人に無断でダシに使おうとは良い度胸。それとも、俺等を納得させられるような言い分でも…」
怒りを隠さずぶつける晶を援護するように、大輔の追求が重ねられた所で「待って!!」と、のどかが慌てて間に入り制止する。
「マネージャーさん、本当なんですか!?」
「ご、ごめんなさい…どうせ後ろはもう何もないと思って、彼の名前を出してアピールを、と…で、でも、そうなってもらわないと他に運営し続ける手段がなかったんですよ!」
本当にギリギリのちょろんちょろんなんですよっ、と嘆くマネージャーに、夏彦が「倫理に悖る奴だ」と渋い顔で睨み付ける。
「では、その高尚な理由がどれほどのものか説明してもらおうか」
腕組みで仁王立ちする夏彦に、マネージャーも観念したのか「申し訳ないです」と、しょんぼりうなだれた。

【8月1日昼過ぎ・野郎共到着・のどかびっくり・マネージャーも別の意味でびっくり・続く】












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