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ゲーム二次創作中心ブログ。 更新まったり。作品ぼちぼち。

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額を寄せ合って。
*

「とすると、表向きはあくまで大学生のサークルに協力してもらった、という経緯になるんですね」

その日の夜。
マネージャーからの緊急の申し入れを快諾し、スタッフ側と時間いっぱいまでギリギリの交渉を終えて心身ともにくたくたになってのどか宅へ帰還した面々は、夕食ののち風呂に布団敷きにと一段落した後で、寝る前に週末のスケジュールと段取りの復習へと会話をすすめていた。
帰ってくるなり、のどか母のおかみさんに「今日はごっめんねええ」と開口一番マシンガントークを浴びたものの、先んじて受けていたスタッフとの打ち合わせが相当な難儀だったため、逆に親しみあるおかみさんのトークは癒しにさえ感じられた。

そして、現在夜22時。
あまり集団での行動に慣れていない緊張しきりな敦を会話の中心に据え、庵と晶が敦に丁寧な説明をつけるのを聞き取って夏彦と大輔が補足を付け足す事で順次全員の認識を擦り合わせる。

「そゆこと。まあ、ひっじょーに、偶然な事に、そのサークルには庵君がいましたのよホホホ、という感じで観客は丸め込む」
「突っ込まれたら切り返しは庵に一任。ボロ出さないよう、イベントスタッフにつけこまれないよう最大限に注意」
「あううー、僕そういうたくさんの人目につくところへ出て行くの初めてですぅー…ヘマしないか心配だなあ…」
「失敗したってええことよ敦君、どんと空気を楽しむんだお( ´ω`)」
「先輩…は、はいっ!僕も出来るだけのことをやってみますっ!………あ、そういえばこれ、テレビって出る…」
「全国ネットは無しにしてもらったし、新聞・雑誌取材もNGにした。どうしてもって言うから、香川ローカルのケーブルテレビが一件取材に来るのみにしてもらったけど、頼めば多分編集した映像もらえると思うぜ。後で頼んでみっから、父ちゃんに送って自慢してやんなさいな敦君」
「うわぁい!…あ、何だか更に緊張してきました…てへへ
「敦可愛いなあ、テレビッ子だねー。しかし、最後までしつこかったよね。全国ネット全国ネットってさー」
あのマネージャーどんだけー、と眉をひそめる晶に対し、庵は「あんなもんだよギョーカイ人って」としれっとしたものである。

「九州大会は長崎のテンボスでやるらしいし、ここで一発でかいのをバン!と決めておきたい気持ちは分からなくもないが…にしても取材の待遇がビップ扱いなのに笑ったな。九州は最初からローカルなケーブルテレビしか来ねえのに、こっちは全国ネット用の映像撮る気満々だったとか」
「本当に大丈夫か?安佐。不安は残るが…」
「うーん…正直、内容聞いて対応見聞きして、俺も不安がないと言ったら嘘になる。だけどあれだったら、尚更ののちゃん一人にさせる訳にはいかないし、俺も都合良く四国に芸能人の知り合いなんかいないし…多分人来ない。0人あると思いまーす」
淡々と半笑いでそう漏らす庵に、全員無言の同意を半笑いで口元に示す。
「ネットへの書きこみは禁止にしたしね。お灸もきっちり据えたし、火消しもしてもらったし」
「そうそう。だからぜーっったい、盛り上がらない。はたして俺に気付く人が何人いるやら」
「うーむ…まあ、な」
夏彦も、イベント内容を思い出ししかめっ面で頭を垂れる。

まあ、なんというか…良くも悪くもマイナーなゲームのイベントな内容だなあ、と、全員が一瞥して把握したような内容なのである。
ありきたりかつ、目新しくもない、そこはかとなくばた臭い雰囲気がぷんぷんする、A4で1枚の企画書。
もっと何かないのかよ、と思ったが、採算が既に取れて無さそうな興行である。突っ込むだけ野暮であろうし、提案するのも要らぬ世話だ。
ともあれ、そんなベタでグダグダな企画故に、五人もどこかで安堵しているのは確かであった。

この気合いのなさ、絶対に受けない。
自信がある。

神戸の奇跡的な集客は麻美&典子姉妹の美貌故であろうし、九州で大規模な大会が企画出来たのもアンサーアンサーの集客が強い地盤だからである。関東に並ぶプレイヤー人口の多さとイベントを受けての地元の期待度が、一番高いのも追い風だ。

その立役者である元王者「サツマハヤト」なる人物は、よっぽど好かれるような好人物なのだろう。
ぼんやりそんなことを思いながら、イベントが成功したらそれを口実に後日合わせてもらえるよう交渉…しようと思ってやはり止めた。
ステージに引っ張られる危険性の方が高いと、脳内シミュレートで即断されたためである。
やはり、大輔に後で口利きしてもらえばいいや。

「と、いう訳で明日は衣装合わせ、明後日日曜日が本番です。みんな巻き込んでごめんな」
「それはもういいって。他に言うことは?庵」
「ええっと…その、楽しんでやろうな。気は重いからこそ、余計に」
「お前は回答台の前に座ってればいい。周りは俺等がどうにかやってみる」
「あんがと大輔さん。それでは明日に向かって就寝準b…」

タオルケットの中に解散、となりかけたその時、戸口をコンコンと鳴らす音が。
「ごめん、ちょっとだけ」とのどかが顔を覗かせた。
手には綺麗に包装された紙箱を抱えている。
「…話、まだ続きそうな感じ?今日色々と忙しかったのに…」
「気にしなくていいよののちゃん。それはののちゃんだって同じなんだから。後一時間もしたら歯磨いて寝るよ」
明るく庵が答えるものの、のどかの表情は暗い。
「大丈夫?」と訊ねる庵に「私は大丈夫」と答えたものの、どこか浮かない様子である。

「それより、庵君だけじゃなくてみんな私の都合で巻き込む事になって…本当にごめんなさい」
これ、お詫びに持ってきたの、とのどかが五人に紙箱を差し出す。
濃い黄色の地に青々と生える木々のイラストが描かれた渋いパッケージ。
表書きにはローマ字の綴りで「OLIVE CHOCOLATE」の文字が。

「こないだ遊びに来た友達がお土産で持ってきてくれた、小豆島のオリーブチョコだよ。長丁場になりそうなら何かおやつでもと思って…冷蔵庫で冷やしてたから、溶けないうちにどうぞ」
「おおっ、これはいい夜食!」
「わるいな。つまませてもらうぞ」
「美味しそうですね~」

「チョコですか!」と敏感に反応したのは夏彦である。
包装が開かれるやいなや、一つつまんで個包装を親指で剥き、一口に放り込み「美味い!」とうなる。
感慨深く、とろける甘味を口の中で楽しみ尽くし飲み込むと、非常に真剣な面持ちでのどかに詰め寄る。

「それ、どこで買えますか!」
「え?」
「今日帰りにチョコ探そうと思っていたのです!それを是非とも一箱購入したい!」
「あ、いいですよ。ちょっと友達に聞いてみます。確か、明後日レオナに来るって言ってたからその時にお願いしたらいいかな…でも、そんなに気に入られたんですか?」
有難いっ、と夏彦の顔から今日一番の笑顔が弾けた。
それを見てニヤニヤする四人に首を傾げるのどかであったが、夏彦の甘党は今に知った事でもなかったので気に留めず微笑み返す。

「明日明後日と、迷惑かけちゃってごめんね…その代わり、三食気にせずどんどん食べてね!お父さんもお母さんも、後一応ノブも応援してるって」
「そんな、押しかけてるのにいいって」
「いいの、そうさせて!もう、今日ホテル連れて行かれて血の気引いてたんだもん。みんなが手伝ってくれるって聞いてどれだけホッとしたかわかんないよ。とっても感謝してるんだ…それじゃあ、また明日ね」

挨拶もそこそこに部屋を後にしたのどかの背中に名残惜しさを感じていると、庵のズボンのポケット内でケータイが震えた。
そっと開くと、のどかからのメールを着信していた。

『今日、残念だったけど楽しかったです。庵君には一番負担かけてると思うけど、私も一生懸命足引っ張らないように頑張るね。

  ありがとう    のどか』

口元が自然ににやけそうになるのを必死に堪えて、庵はメールの文面を何度も何度も見つめた後ケータイをそっと閉じた。


*

同じ頃。
ホテルではアイアイのマネージャーがようやく仕事を終え、ほっと自室のシングルで一息ついたところであった。
土日の興行の目処が立ったことでアイアイはようやく入院する運びとなり、今し方まで病院に付き添い説明を受けていたのである。
それだけでなく、スタッフから大学生たちとの打ち合わせの内容を聞き、イベントの内容確認と各方面への指示出しとで、今日はいつにも増して全身くたくた、喉もカラカラ。だが、悪くない疲労感が全身を包んでいる事に、マネージャーは職業的な喜びを感じていた。

アイアイだけで集客するには限度があり、しかも毎回まばらで寂しい歌謡ショーばかりであった事を思えば、今回は今までで一番の大規模なイベントになる。確信があった。
それが嬉しくもあり、また別の部分では大収穫といえる結果であった。

安佐庵。
「クイズ」というカテゴリを含む以上、強力な切り札と成りうる、元「日本一のクイズ王」。
これを利用せずして、どうすると。

彼は一人ほくそ笑む。
これで細い絹糸のようであった「とある計画」の布石は成った、と。

「アイアイをトップアイドルにするため、もう一踏ん張り…さ、これからですよっ!」
マネージャーは己を鼓舞するように気合いを入れ直すと、プルタブを押し上げ温くなった缶ビールを一気に飲み干した。

【8月1日・庵は幸せに就寝・取らぬタヌキの皮算用なマネージャー・続く】












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