そして当日へ。
…
敦「の、前に問題ですよっ!今回、僕らが行くレオナワールド…もとい、元の題材になってる四国のテーマパークレオマワールドですが、『名前の由来と言われている話は、次のどれでしょう?』正解は次の選択肢から選んでくださいね。一つがまことしやかに伝えられてる噂=ここでの正解で、残りは中の人が作った真っ赤な嘘でーす」
1.元々の企画立案時にサファリパークをイメージしていたため、仮名でつけられていた「レオパーク」の名残がそのまま「レオなワールド」→「レオマワールド」となった。
2.このテーマパークのデザイナーが「レオ・レオマ・レオーニ」という名前だから。
3.名前を考えていた時に、社長の「大西」さんからちなんで「レジャーは・大西に・任せろ」の頭文字を取ったらどうか、と担当の社員が提案したから。
4.最初は「ヤシマワールド」のはずだったが、計画地が移転され名前に名残だけが残って「レオマワールド」となった。
「正解は追記の最後にて!阿南敦でした~。じゃんけんぽーん!グゥー!
…はあはあ、緊張したー…」
…
敦「の、前に問題ですよっ!今回、僕らが行くレオナワールド…もとい、元の題材になってる四国のテーマパークレオマワールドですが、『名前の由来と言われている話は、次のどれでしょう?』正解は次の選択肢から選んでくださいね。一つがまことしやかに伝えられてる噂=ここでの正解で、残りは中の人が作った真っ赤な嘘でーす」
1.元々の企画立案時にサファリパークをイメージしていたため、仮名でつけられていた「レオパーク」の名残がそのまま「レオなワールド」→「レオマワールド」となった。
2.このテーマパークのデザイナーが「レオ・レオマ・レオーニ」という名前だから。
3.名前を考えていた時に、社長の「大西」さんからちなんで「レジャーは・大西に・任せろ」の頭文字を取ったらどうか、と担当の社員が提案したから。
4.最初は「ヤシマワールド」のはずだったが、計画地が移転され名前に名残だけが残って「レオマワールド」となった。
「正解は追記の最後にて!阿南敦でした~。じゃんけんぽーん!グゥー!
…はあはあ、緊張したー…」
*
さて、土曜日は瞬く間に過ぎて当日8月3日・日曜日。
朝七時に会場であるレオナワールドへ夏彦の自家用車で全員ゲートインし、取り立てて何の歓待も無いままに楽屋代わりのスタッフルームへと通されまったりぼんやりと午前中を潰す。
ステージは午前中無しの午後一回、午後一時から四時まで三時間のみのミニステージとなる。
神戸は午前午後と二回やったそうだが、レオナ側では既に午前中には毎年恒例のストリートショーが組まれて動かせなかったらしい。むしろ、そんな中へ無理強いにねじ込んだマネージャーに執念すら感じていた。
がけっぷち、かあ。
ぼんやりと、冷房の生ぬるい六畳な広さの控え室内で、窓の外の真夏日を眺めながら庵はそう思った。
いつでもぎりぎりな所にいる誰かにとって、自分は天上の高みに悠々とそびえる高慢ちきな裸の王様に見えていたらしい。
相手が答えないからさっさと答えたら「バカにしやがって」、
手抜きをしたつもりはないのに「本気じゃなかっただろう」、
たまたま負けたら「なめられた」、
大人って成人したらなれるもんじゃないんだと、小学生時代に知ってしまった侘びしさ。
俺だって人間なのにな。
妬みそねみ嫉妬羨望。
裏返しにある賞賛と尊敬と好意、そして一握りの価値しかない「栄光」。
それが、いつまでたっても俺を呼び続ける。
早く頂に戻って地上の哀れな下々を眺めようぜと、的はずれな暴言を吐きながら。
「栄光」も「栄誉」も、なにも与えてはくれない。
むしろ、副賞の賞金の方が何十倍も俺のためになった。
物質的な意味だけで、だけど。
「セット搬入、セッティング完了しました。通しでミーティング始めます」
浮かない表情のスタッフが戸口の隙間から声をかけてくる。
昨日からずっとだが、スタッフ全員顔色が悪い。
昨日は更に「ビップ待遇な」俺があれこれと質問するので、応対してくれた主任スタッフが涙目になってしまい、慌てて緊張することはない旨懸命に伝えると若干ほぐれたようだったが、それにしても全員顔色が開催前から青息吐息なのはどうなのであろう。
上層部から散々な言われようをしているのか、それともスポンサーから愚痴愚痴イヤミでも言われているのか、どちらにしろ良好な状態ではまずあり得そうになかった。不健康で、びくびく失敗に怯えている、縮こまった空気が気色悪い。
成功させる気はないのに、お人好しな回路が「うぜえ」と悲鳴を上げそうだ。
俺はこれ見よがしに溜息をつくと、びくっと身を震わせるスタッフに「行きます」と告げる。次の注文を入れられる前に退散するかのように、そそくさと足早にスタッフが去っていくと、「こえぇよ」と大輔が半笑いで脇を突く。
「お前でも緊張するのか?」
「いいや、逆。超リラックス。成功させたそうなのに、成功させたくなさそうなふいんきにものっそカチンときただけ」
「いや、普通は多分なるよ?だって、何から何までぶっつけ本番の君頼みじゃない。空気どっかおかしいし。不安だなあ」
今日の衣装だってどんだけ既製品で間に合わせてるのさーって感じだし、とブランドにうるさい晶先生の手厳しいチェックが入る。
「晶君厳しいな…一番金かかってそうな服着てるのに」
「いやいやそれこそ逆。…すっごい熱いこれ。しかも厚い。絶対冬用だよ!絶対あせもになる!せめてもう少し薄手なら良かったのに」
「いやいやいや、それだったらむしろののちゃんのが暑そうだお。晶君観念なさい。似合ってるんだから」
そう言って、既に額に汗だくだくですんすん涙目な晶の横では、目が部屋の隅しか見つめていないのどかの硬直した横顔があった。
顔面真っ白である。日焼け止めのファンデのせいではない。絶対に。
むしろスタッフよりひどい。発掘ほやほやのハニワのような顔をしている。
「の、のどかさん大丈夫ですか…?」
自分も割と落ち着かなさげであった敦でさえ、心配になる硬直振りに男性陣全員が今度は冷や汗を流す。
「・・・・・」
「…ののちゃん?」
「・・・はっ、え?あ!ああ、行くんだよね!!行こっ!うんっ!!あははあはあは…」
「(目が)」「(笑ってねえ)」
男性陣は互いにアイコンタクトを交わし、そして全員が決意した。
大輔は、仕方ねえなあ、と言う代わりに傍らに置いてあったバットを握りしめる。
敦は、ベストとネクタイのよれを確認し、分厚い辞書片手に席を立つ。
夏彦は、フラスコの中で凝固した溶剤を確認し、慣れた手つきでフラスコの首を握る。
晶は、背中にいれてあるハリセンと、手にした麺棒の握りを最終確認する。
庵は、黙ったまま支給されたレイバンをかけ「では最終予行へ」と立ち上がった。
のどかは、おろおろと五人五様な衣装の五人を前に、既に心は緊張MAXハートで上の空である。
目を回しそうでさえある彼女に「大丈夫だよ」と庵は軽く肩を叩いた。
今日は彼女を全面的にフォローしまくる。
野郎共はスタッフのためでもなくくそったれなマネージャーのためでもなく、今ここにいる不安いっぱいな淑女に心の中でそっと誓うのであった。
今ここに、一日限りのお姫様と彼女を悪の視線から守る五人のクイズコスプレイヤーがまさに誕生した瞬間であった。
【8月3日昼・何の格好してるかは次回・正解は3の大西に任せろ・続く】
さて、土曜日は瞬く間に過ぎて当日8月3日・日曜日。
朝七時に会場であるレオナワールドへ夏彦の自家用車で全員ゲートインし、取り立てて何の歓待も無いままに楽屋代わりのスタッフルームへと通されまったりぼんやりと午前中を潰す。
ステージは午前中無しの午後一回、午後一時から四時まで三時間のみのミニステージとなる。
神戸は午前午後と二回やったそうだが、レオナ側では既に午前中には毎年恒例のストリートショーが組まれて動かせなかったらしい。むしろ、そんな中へ無理強いにねじ込んだマネージャーに執念すら感じていた。
がけっぷち、かあ。
ぼんやりと、冷房の生ぬるい六畳な広さの控え室内で、窓の外の真夏日を眺めながら庵はそう思った。
いつでもぎりぎりな所にいる誰かにとって、自分は天上の高みに悠々とそびえる高慢ちきな裸の王様に見えていたらしい。
相手が答えないからさっさと答えたら「バカにしやがって」、
手抜きをしたつもりはないのに「本気じゃなかっただろう」、
たまたま負けたら「なめられた」、
大人って成人したらなれるもんじゃないんだと、小学生時代に知ってしまった侘びしさ。
俺だって人間なのにな。
妬みそねみ嫉妬羨望。
裏返しにある賞賛と尊敬と好意、そして一握りの価値しかない「栄光」。
それが、いつまでたっても俺を呼び続ける。
早く頂に戻って地上の哀れな下々を眺めようぜと、的はずれな暴言を吐きながら。
「栄光」も「栄誉」も、なにも与えてはくれない。
むしろ、副賞の賞金の方が何十倍も俺のためになった。
物質的な意味だけで、だけど。
「セット搬入、セッティング完了しました。通しでミーティング始めます」
浮かない表情のスタッフが戸口の隙間から声をかけてくる。
昨日からずっとだが、スタッフ全員顔色が悪い。
昨日は更に「ビップ待遇な」俺があれこれと質問するので、応対してくれた主任スタッフが涙目になってしまい、慌てて緊張することはない旨懸命に伝えると若干ほぐれたようだったが、それにしても全員顔色が開催前から青息吐息なのはどうなのであろう。
上層部から散々な言われようをしているのか、それともスポンサーから愚痴愚痴イヤミでも言われているのか、どちらにしろ良好な状態ではまずあり得そうになかった。不健康で、びくびく失敗に怯えている、縮こまった空気が気色悪い。
成功させる気はないのに、お人好しな回路が「うぜえ」と悲鳴を上げそうだ。
俺はこれ見よがしに溜息をつくと、びくっと身を震わせるスタッフに「行きます」と告げる。次の注文を入れられる前に退散するかのように、そそくさと足早にスタッフが去っていくと、「こえぇよ」と大輔が半笑いで脇を突く。
「お前でも緊張するのか?」
「いいや、逆。超リラックス。成功させたそうなのに、成功させたくなさそうなふいんきにものっそカチンときただけ」
「いや、普通は多分なるよ?だって、何から何までぶっつけ本番の君頼みじゃない。空気どっかおかしいし。不安だなあ」
今日の衣装だってどんだけ既製品で間に合わせてるのさーって感じだし、とブランドにうるさい晶先生の手厳しいチェックが入る。
「晶君厳しいな…一番金かかってそうな服着てるのに」
「いやいやそれこそ逆。…すっごい熱いこれ。しかも厚い。絶対冬用だよ!絶対あせもになる!せめてもう少し薄手なら良かったのに」
「いやいやいや、それだったらむしろののちゃんのが暑そうだお。晶君観念なさい。似合ってるんだから」
そう言って、既に額に汗だくだくですんすん涙目な晶の横では、目が部屋の隅しか見つめていないのどかの硬直した横顔があった。
顔面真っ白である。日焼け止めのファンデのせいではない。絶対に。
むしろスタッフよりひどい。発掘ほやほやのハニワのような顔をしている。
「の、のどかさん大丈夫ですか…?」
自分も割と落ち着かなさげであった敦でさえ、心配になる硬直振りに男性陣全員が今度は冷や汗を流す。
「・・・・・」
「…ののちゃん?」
「・・・はっ、え?あ!ああ、行くんだよね!!行こっ!うんっ!!あははあはあは…」
「(目が)」「(笑ってねえ)」
男性陣は互いにアイコンタクトを交わし、そして全員が決意した。
大輔は、仕方ねえなあ、と言う代わりに傍らに置いてあったバットを握りしめる。
敦は、ベストとネクタイのよれを確認し、分厚い辞書片手に席を立つ。
夏彦は、フラスコの中で凝固した溶剤を確認し、慣れた手つきでフラスコの首を握る。
晶は、背中にいれてあるハリセンと、手にした麺棒の握りを最終確認する。
庵は、黙ったまま支給されたレイバンをかけ「では最終予行へ」と立ち上がった。
のどかは、おろおろと五人五様な衣装の五人を前に、既に心は緊張MAXハートで上の空である。
目を回しそうでさえある彼女に「大丈夫だよ」と庵は軽く肩を叩いた。
今日は彼女を全面的にフォローしまくる。
野郎共はスタッフのためでもなくくそったれなマネージャーのためでもなく、今ここにいる不安いっぱいな淑女に心の中でそっと誓うのであった。
今ここに、一日限りのお姫様と彼女を悪の視線から守る五人のクイズコスプレイヤーがまさに誕生した瞬間であった。
【8月3日昼・何の格好してるかは次回・正解は3の大西に任せろ・続く】
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