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ゲーム二次創作中心ブログ。 更新まったり。作品ぼちぼち。

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無邪気な演技と、泣きそうなほどの熱を。
*

噂を聞きつけ、回ってくるメールの真偽を確かめに、1万人収容可能なレオナワールド野外ステージは満々とした人の山で埋め尽くされた。
ステージ上では開始三十分にして、噂の中心でありステージの主となって場を盛り上げる臨時司会:アンサー庵・アンアンこと元クイズ王安佐庵が大学の友人と可愛いキャビンアテンダントコスのアシスタントと共に進行を続け、ステージでのクイズ対戦には挑戦者がステージの脇から真夏の炎天下にもかかわらず続々と長蛇の列を為して今か今かと時を待っていた。

「こんちわーー!今日はどこから来たの!?」
挨拶代わりに庵へステージ中央へと連れ出された眼鏡の男性は、てへへとニコニコしながら満員の会場へ手を振る。
「今日はたまたま徳島から遊びに来て、イベントやってるんで上がりに来ました!母ちゃーん、ちゃんと撮ってるー?」
「いいですね、おのぼりさん乙です!大歓迎です!このゲーム、やったこととかありますかっ!」
「毎日帰りにやって母ちゃんに怒られてます!」
「おおっ!!」
「でもって地元じゃ大会とかしないんでかなり今嬉しいです!」
「おおおっ!!マジですか!」
「という訳でアンアンさん!対戦お願いしまーっす!!」
「っしゃあ!ばっちこい!行くぜ!!」

・・

「こんちわー!」「こんちわーですよお姉さん( ´ω`)ノ」
「今日は愛媛から来ました!ええっと、あの、かっこいい板前のお兄さんと勝負がしたいです!!」
「安住晶くんですよねっ!ええっと、クイズに勝ったら一日デートに付き合ってくださいっ!!」
「ええーーーっ!本当?うわっ、僕どうしよう!照れるなあ」
可愛いキャミソールの女性カップルに黄色い声を浴びせられて鼻の下を伸ばす晶の背中に、他男性陣からの厳しい視線がグサグサと刺さり、彼らは瞬時にアイコンタクトを交わした。
「はいはーい、じゃあ晶君は景品ということで白い服着たヒゲのおじさんと対戦していただきまーす」
「えええええええ!?何で僕じゃないのっ!?」
「晶君は今とてもエッチな顔をしていたので却下です。むしろお姉さんたちのアシストしてあげるといいと思うよ」
「きゃー嬉しい!」「頼りにしてるね!」

「安藤さん、全力で行ってください。俺も勝てるように背後で念を送りますから。完全勝利祈願しながら」
「何でしょう、晶先輩さっきからやけにモテモテな気するんですけど(観客から黄色い声がするし)先輩も締まりの無い顔してますし」
「人生のモテ期なんだろうさ。…まあ、一気に締まりのねえ顔になったのは同意だ。男の沽券に賭けて、負けられん!」

・・・

「はーい、ここで新形式のクイズが出ました!これはアシスタントの安西さんに説明してもらいますお( ´ω`)ノ」
「は、はい!えっと、この多答フィニッシュっていうクイズ形式はー…」

・・・・

「兵庫から来ました!偶然とはいえ有名人に会えるとは光栄です!!」
「今日は息子と一緒に直島から来ました!おばちゃんですけど頑張ります!」
「アンアン、覚えてるかー!?俺、昔高校生クイズの予選に出てたんだぜ!どうせ一問目落ちだったけど、今日はお前を倒してやんぜ!」
「七十前でもクイズさせてもらえますかいね?」
「アイランドリーグ選手代表として来ました!皆さーん、どうか球場に来てください!クイズも頑張って1ポイントでも取りたいと思いますっ!という訳で同じユニの兄さんお願いしまっす!」
「よし来い!早押しでスポーツ投げてやるっ!」
「中学生ですけど、頑張ります!ええと、アンアンさんだと勝ち目なさそうなんで同い年くらいの人で!」
「ええっ!指差してるの僕?!僕もう大学生ですぅ!!」

途切れる事のない挑戦者の列。
鳴りやまない観客の声。
夕日が傾き、規定時刻になっても人の流れは解消されず、会場側のはからいでそのまま一時間の延長戦へ。
庵は喉がカラカラになっても叫んだ。叫び続けた。

最初は緊張と苛立ちが先行していた思いが、今は何よりも感動と情熱で満ち満ちて心地よい。

ああ、ずっと忘れていた。この感触。この熱。

昔、ウルトラクイズの映像を見て「何でもうないんだろう」と悔しく思ったあの時。
アカデミッククイズへ初めて出場した時のあの興奮。

どこかへ置き去りにしていた、幾千幾万の誰かと一瞬にして一体化する感覚。
ゲーセンの早押しボタンの前から、うっすらと遠くどこかの誰かに感じていた、浮かれた熱のような喜びの共有感。
それが、今一斉に目の前に押し寄せてくる。
これは、こんなにも素晴らしく、こんなにも強く胸を支配する甘い痺れであっただろうか。

有名になりたかった訳じゃない。
ちやほやされたかった訳でもなかった。

これだ。
俺が、テレビ番組に、クイズの解答席にずっと求めていた心を熱くする熱は。

誰かと一つになる思い。解け合う願いと叫び。
心が誰かと重なる瞬間。クイズの問いに、互いに向き合うあの瞬間に訪れる静けさにも似た心の重なる感触。
「理解」と「情熱」を共有する、麻薬のような空間に酔いしれる。

くせになりそうだ。やばいな。

でも、もうすぐお別れしなきゃ。
人々の熱狂の渦は、俺を望まない場所へと連れて行くから。
また明日から、俺は「普通の一般人」に戻って、傷つくことの少ない日常へと戻るんだ。
そして時々、ささやかな熱へと繋がるとば口に向かって、早押しボタンを押し続けていられれば幸せ。

そっと、ステージに立つ彼女へ視線を送る。
汗だくで、日焼け止めも流れてしまった彼女の真面目な横顔が視線に飛び込む。
その素直で飾らない、疲れてくたくたな横顔がらしくて、俺は口元がにやけるのを感じた。
目線を一万人の観衆へと戻し、俺は叫ぶ。
ありがとう、来てくれて有り難うございました、と。
すぐ近くで、友達が同じように有り難う、と枯れた声で叫ぶのが聞こえた。
手を繋いで、全員で一礼する。
左手で握った彼女の手は優しくて、右手で握った友達の手は熱いほどで。
手を振って退場する背中に、有り難う、また会おうなと、誰かの声援が染みて消える。

ステージ裏へと引っ込んだ途端、全身に気怠い筋肉の悲鳴と疲労がどっと押し寄せて足下がよろける。
と、すぐに晶と大輔が脇を支え、首根っこを夏彦に掴まれて「やったな!」とぐいぐいと引き寄せられるとぐりぐり頭をなでられる。
敦は広辞苑をほっぽり出して、「やりましたねっ!」と嬉しそうに庵へと飛びついた。
男五人、くすぐったい達成感と連帯感でお互いに肩を抱き合い、やったやったとはしゃぎあう。
口からへへへと疲労混じりの笑みがこぼれ、全員くたくたになりながら顔を見合わせて笑う。

「庵君、みんな…」
感極まって今にも涙がこぼれ落ちそうになっているのどかに、男性陣全員が優しい笑顔で向き合う。

「有り難う、ホントに有り難う…私、あんなにやって良かったって思えたことなかった。あの場にいられてよかった。有り難う…」
「ののちゃん…」
普段ならためらっただろう。だけど、今の庵には感情の障壁は何もなくなっていた。
緊張とプレッシャーを押し破って一万の観衆と一体になった高揚感が、庵に何を為すべきかを的確に教えていた。

庵はごく自然にのどかへと近付くと、そっと肩を抱き「お疲れ様」と囁く。
庵の腕の中で、のどかは一瞬の緊張の後、ゆっくりと糸がほどけ緩やかに感激の涙を流した。

そっと肩をほどき、彼女と向き合う。
ひとしきり泣いた後、彼女の顔にも笑顔が咲いた。

夏の濃いオレンジの夕日に照らされて、彼女が笑う。
歯を見せて、これ以上ない喜びを顔いっぱいに浮かべて。

夕日が笑っているみたいだ。
庵は先程ステージで感じた熱とは違う、強く貫かれるような高揚を感じながら笑い返す。

夕日が笑う。君も、俺も笑う。
ただそれだけの幸せが、何よりも愛おしく得難い幸せを庵の胸にもたらしていた。

【8月3日・任務完了・そして二人は・続く】












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