3373plug-in

キリリと目論む野郎たち。

*

一触即発な事態から微妙な空気に包まれた会議室内へ、ノックと同時に「失礼します」と黒エプロン姿の男性陣が大きなお盆を両手に抱えぞろぞろと入ってきた。

グルメ生活班の男性協会員四名である。
盆の上から、今日のおやつ「あんまん」と「アップルパイ」がしずしずと卓上に配置され、出される間に間に協会員たちはグルメ班の腕前に感謝しつつ、菓子を片手に口を開く。

「今日のはこしあんにしたぜ」（クライン・デフォ）
「アップルパイはジャンポールが頑張ったぜ」（シュウ・デフォ）
「てっへへー」（ジャンポール・糸目）
「俺は味見ばかりだったけどな！」（フォード・ヒゲ）
そんなのは言わずもがなですと、誰も言うではないが視線だけはビシビシ感じるヒゲ協会員フォードであった。
去り際、ジャンポールは密かにレイへと目配せを忘れない。

「（グルメ班への予算、来年度有利になるようお願いいたしますね。素材費がバカにならなくて）」
「（分かってるわ…ここで静かにおやつの必要性をアピールし、年越しソバで印象づけるのよ。手配ぬかりなくお願いね）」
「（了解です）」

「うっめー！こしあんみっしり！」「やっぱパイで手作りっていいよねー」

「（計画通り）」

エプロン糸目は邪悪なほくそ笑みを残し、そっと背後の扉を閉じるのであった。

～しばらく歓談～

「…えー、では落ち着いたところで次の議題に」
「そうだな。ではお前等、『更なる集客のための提案』を頼む。ひとまず予算の話はこれ以降ダウトでバッテンマスクな」

マーティ議長の進行に、「はいはーい」と手を挙げる者が。
エンタメ班のボンドである。

「議長！我々は常に先陣を行く某魔法学園を意識し続けて参りました！しかして、ようやくその牙城へと食い込み早押しボタンの魅力を推し進めんと粉骨砕身して参りましたね！」
「うむ、そうだなボンド」
珍妙でハイテンションな敬語に注意を払いつつ、マーティはふむふむと頷く。

「だがしかっし！我々の発想だけではもはや限界が来てはいませんか！？」
「ぬおっ！？」
ちょっと図星だったようである。ボンド、にやりと微笑み机を叩くと一気に畳みかける。

「そう！俺達の発想は三年目を過ぎもはやマンネリズムの極みに達しようとしています！
毎回毎回捻り出すのに脂汗を流しての『ダジャレ称号ネーミング』！
特にもうバレンタインとホワイトデーはネタがないと称号担当チームが唸ってました！
それに加えて月毎のイベント称号も捻らず直球が使えるのはいっぺんだけです！
第二回とか三回とか回数数えていいのはタワーだけ！
スペシャル衣装もＴシャツばっかりではお客は『はいはいダジャレ乙』『Ｔシャツ詐欺わろた』となってしまうのは明々白々ではありませんか！！
…ならば議長、いえボス！敢えて先方のいいとこ取りをしてしまうのです！
これはパクリでなくインスパイア！
そしてよりよい物なら大手を振って大衆に受け入れて貰えること受け合いです！！」
「と、すると何だボンドよ！？その『答え』とやらは！！」
「ここはやはり冬のイメージを逆手に取ってあったか南国系のイメージで参ります！」
「！？」
「まさか…」
グルメ班のケイト、並びに女性陣から不穏な空気が一瞬にしてたれこめる。
男性陣の顔元も、どことなくキリッとしている。
議長も不必要なほどにキリッとしている。
間違いない…。

「題して『新春アロハでハワイ休日刺客！アロハ刺客を切ってビキニをゲット大作ｓ』ボフォオオ！！」
どこからともなく飛んできたテニスボールの剛球スマッシュが顔にめり込み、ボンドは最後まで言い終わる事なく後ろへと倒れ込むと派手な音を立てて椅子ごと床上へ転げ落ちた。

剛球スマッシュの犯人…スポーツ班のコノリーに女性陣から喝采の拍手が巻き起こり、「女性陣の貞操はわたしたちスポーツ班が守ります！」と決めポーズ代わりにラケットを掲げた。
かたや、男性陣から「またダメだったか…」と言う代わりに寂しげな嘆息がそこかしこから上がる。
議長の口からも零れかけたが、左右セミロングとツインテの視線を受け、慌ててキリッとし直す。

「ちょっとしたセクシー路線はありだと思うんだけどなー…」
「アジモフ聞こえたぞ。そんなら男性陣全員で越中褌装備の上、利根川寒中水泳させっぞ？いいのか？んん？」
「えええ…男の夢なのになー…」
「ならば褌と割れた腹筋は女の夢だぜ！」
「ですよねー！」
同班のクイーン（＋スポ班コノリー）にまでいじられ、しょげるアジモフをそっとウェルズがなだめるのであった。

【衣装議論は継続中・続く】