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ゲーム二次創作中心ブログ。 更新まったり。作品ぼちぼち。

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冷たい月明。
*
暗い倉庫内にしつらえた映写装置から映し出される、壁に貼られた布地のスクリーンには痛々しい少年の姿が煌々と映し出されていた。
アンティークの安楽椅子に後ろ手に拘束され、イヤホンをしたまま双葉は頭をうなだれてぐったりと椅子にもたれかかっている。
外傷は無いようだが、前段階のサブリミナルCDの影響だろうか、全身から疲弊した空気が漂い、俯いて視認できない表情も容易に想像できた。
おそらく、CDを最後まで聞かされているなら意識は失っているだろうが…。

「そろそろ影時間ですね」

疲れ切った少年の姿を見ても動じる事も哀れむ事も無く、俺の隣で幾月は懐の懐中時計を開いて針の重なる瞬間を待っていた。

3・2・1…。

幾月は懐中時計を閉じ、ケータイを耳に当てる。
画面の奥で、黒服の男がケータイを開き、頷いた後中央のPCヘCDを挿入した。

「さあ、始まりますよ」

歌が聞こえる。
あの時と同じ、荘厳な女のソプラノが、沈黙の中涼やかに響き渡る。
ノイズ混じりの、アメージング・グレイス…。

美しい音色。
8年前と変わらない、寂しく儚い歌声_。

と、その時目の前のスクリーンが大きく乱れたかと思うと、
影時間対応機器を含む全ての映写装置がダウンし、一瞬にして周囲は暗闇に包まれた。

「…なっ!何だコレは!」
目を丸くする暇もなく、幾月の影時間対応型通信機が着信を知らせる。

「何だ!何があった!!」
『う、う、うわああああああああ!……あ、ああっ…うわ、来るな!やめっ………ぎゃああああああああああああああ!!』

俺の耳にまで聞こえるほどの絶叫が、幾月の通信機から迷惑な着信音の如く溢れたかと思うと、鎖の擦れる音を最後に、着信は途切れた。

「こ、…これは一体どういう事ですか?」
幾月は唇を震わせて通信機を懐に仕舞うと俺の横顔を侮蔑混じりの表情で睨みつける。
「何がだ?」
「あのデータ…やはり『エウリュディケ』ではなかったのですね…」
「『やはり』って何だその言いぐさは?あれは紛れもない本物だ。レプリカでも何でもなくな。
…まあいい。お前はあのデータの為に随分苦労したようだからな。
教えてやるよ。『エウリュディケ』の真相を」
「真相…?」
「別にいいなら俺は構わん。正直榎本はどうでもよかった。成瀬も直にくたばる。
殺すなら好きにしたらどうだ?
だが、成瀬はともかくとして榎本のペルソナ能力は桐条の探し出したペルソナ使いのデータベースにおいてもトップクラスの貴重な『探索型』ペルソナ…殺っちまったら、むしろお前さんのが立場上分が悪くなるんじゃないのか?桐条のお嬢ちゃんのペルソナは元々戦闘型だ。それに無理矢理上の事情とはいえ榎本のペルソナから切り離した探索能力を移植したが、いまだに俺が時々ペルソナをメンテナンスしてやらないと不安定なままになっちまう。そうすると、ちょくちょく顔を合わせる相手のペルソナがいつ暴走するか分からない状況というのは好ましくないとも言えるよな?」
「…何が言いたいのです?」
あくまで上位を保ちたいのだろう。
額に浮いた脂汗を無視して不敵な作り笑いを必死に浮かべている。
幾月、そんなだからお前の周りには金で動く奴しか残らなかったんだろうが。
阿呆め。
「…対シャドウ戦闘員チームのメンバーは、全員ペルソナに何らかの特殊能力を備えていた。狗神はサイコメトリー、金森なら鍵の施錠を解除出来る、とかな。俺のペルソナは、他者のペルソナ能力を一部切り取り、他者に移植出来る。影時間の耐性も、総帥の耐性は元を正せば俺の力を移植したものだ」
「…なっ」
予想通り、初耳だったらしい。初めて表情に動揺が露呈した。
「…桐条のお嬢ちゃんに、榎本の探索能力を移植したのも俺だ。…研究の成果だとして、詳細は伏せておいてもらった。要は、大本のペルソナ能力者がいなくなれば、桐条のお嬢ちゃんの探索能力も消滅しちまうか、もしくは影響を受けて暴走の危険性が出るぞ、という事だな。
…まあ、どうせ殺す気はなかったんだろう?あれだけの索敵能力者、ざらにはいない。
対シャドウ戦闘員チームの元メンバーだったからと、あんなデータ欲しさに桐条のトップから遠ざけ、タルタロスの研究の邪魔にならぬようお嬢ちゃんのサポートもさせずにいたのははっきり言って大損だと思ってたよ」
「なら何故…」
「俺が総帥に進言しなかったかって?…責任問題に関わる。あんな迂闊な奴に親バカ総帥の大事なお嬢ちゃんのサポートさせられるか。せめてもう少しお付きのペルソナ使いが充実しなければ無理だな。あいつのうっかりナビでどれだけ死にかけたことか」
「随分な言いようですね」
「事実だ。…それに、俺もあいつも手柄に興味は無い。桐条にそこまでしてやる気ももう無い。どうせ、タルタロスはもう消えまいさ」
冷たくそう言い放つと、幾月の顔には苛立ちと憎悪の念が煙のようにくすぶっているのが分かった。
「直に、『ヤツ』の気配に感づいてシャドウたちが集まってくる。踏んだり蹴ったりの上にエサになりたいなら別に好きにすればいい。それが嫌ならついてこい。…真相がお待ちかねだ」
「え?…貴方に、少年の居場所が…」
「分かる。…アレの気配が、俺にはハッキリ感じられる。そこに行けば、お前にも分かるだろうさ」

自分の馬鹿さ加減がな。

最後の言葉を飲み込んで、俺はあいつに背を向け倉庫を出る。
外に居たはずの門番の姿も無い。きっと騒ぎの現場に駆けつけ、餌食にでもなったのだろう。
俺の背後からそっと外に顔を覗かせた幾月も、つい数分前まで周囲に無数に居たはずの雇い部下達の気配がまるで消えているのに気付いたようだ。
ついさっきまでの余裕が全身から消え失せている。

埠頭から赤黒い闇に沈んだ海岸を眺めると、海面に煌々とした大きな淡い緑光が乱反射して輝いていた。
満月か。丁度良い。

歯がゆそうな表情で俺に着いてくる幾月を背にしながら、腹の底で俺は奴をせせら笑っていた。

ありがとよ、幾月。
お前は実に都合のいい、小僧もろとも死神を始末する言い訳を作ってくれたよ。

成瀬。
せめて死の今際の時だけでもお前を死神から解放してやろう。
惑わされたお前の心の目を、榎本もろとも覚まさせてやるよ。

心も、頭も、既に冷え切っていた。
8年前のあの日から、俺は、そのことだけを考えて動いてきたのだから。












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