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ゲーム二次創作中心ブログ。 更新まったり。作品ぼちぼち。

影へと続く階段。
*
8年前のあの日。
俺はあの小僧を追いつめていた。

確かに絶えずペルソナをチェンジされ続けるのは戦い辛くあったが、所詮は子供の浅知恵。
魔法・打撃・斬撃に対する反射や吸収能力に注意さえすれば、弱点を突かずとも難無く体力を削る事は出来た。
しかも、俺がいつまでたっても倒れない事に狂いながらも焦りを感じたらしい。
次第に支離滅裂なペルソナチェンジを繰り返し、直前に倒したペルソナをもう一回繰り出すなど、明らかにその場凌ぎな召喚でみるみるうちに体力を更に消耗していった。

キライ。キライ。キライ。ダイッキライ。
イジメッコモ ワルイオジサンモ ミンナ ミンナ キライ …!

キエテヨ。

イナクナッテヨ。

ボクハ オトモダチト オジチャント イッショニ ズット イッショニ …。

元々白く血の気の無くなっていた面差しに脂汗がべっとりと張り付き、肩でハアハアと息をし、頭上でのたうつ腐った吟遊詩人以上にがくがくと全身を震わせながら、フタバは俺に牙を剥いてきた。

惨めで、哀れな人形だ。
そう思い、せめて一発で楽にしてやろうと俺はクラオカミを頭上に召喚する。
凍てつく波動が小僧の全身を襲い、最後の精神力を奪い去る。


ボロぞうきんのように身も心も傷だらけとなって、日向二葉はその場に膝を折り、くずおれる。

「…終わりだ」

あの世でたっぷり親に甘えてこいよ。
最後の言葉を飲み込んで、クラオカミは腰に提げていた倭刀を引き抜き、小僧の頭上に振り下ろした。

*

幾月の指定した港の廃ビルに着くと、奴もやっと尋常ならざる気配を察したらしい。
首をすくめ、生唾を飲み込む音が背中に聞こえた。

「…止めとくか?」

振り向かずに問いかけると、幾月は「冗談」と短く呟いた。

廃ビルに近づくと、既に傾きかけたような、鉄骨の錆びた非常階段をゆっくりと上る。
茶色い新聞の張り紙と日に焼けた映画ポスターの残骸を素通りしながら、足下のホコリがやけに薄いのに気がついた。
足跡もきちんと掃いて消しておくのか。
幾月の神経質さが透かして見えて、何故か可笑しかった。

「…8年前、狗神の死から始まった俺達チームの元メンバーの変死事件を調べる内に、お前だけでなく、俺の手元にも「エウリュディケ」の断片が集まってくるようになった。研究者として、それが一体どういった代物だったのか、やはり分析したくなってな。桐条本社には内緒で数年をかけてゆっくり解読を試みた」
「…でしょうね。あれはシャドウ研究に関わったものなら、きっとそそられる」
「…それを応用すれば、ゆくゆくはペルソナ使いという名の恐ろしい超能力者だけでなく、シャドウそのものを支配できるようになると?…なるほどな」
黙りこくった幾月に、俺は「それが本題だったのか?」と問いかける。

足音だけが、濃緑の月光が差し込むビルの狭間に響く。

「…まあ、順当に考えればそこに答えは行き着くな。俺も、そうだった」
「…で、貴方はデータを解析しつくして何を思われたのです?」
「ああ、…くだらねえ。そう思ったよ。つくづく、日向は阿呆だとな」
「研究者としては、道さえ誤らなければ偉人ともなれた頭脳を持っていたのに。協調性の欠如故に、自己完結で自滅してしまった」
「全くだ。…ひとりよがりで、嫉妬と妬みの塊のような男だったからな。結婚相手は、さぞかし幻滅したろうさ。…それ故、あれも完成したようなものだが」












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