カオステラカオス。
*
2008年8月6日。
四国香川を後にし、彼らクイズバカの旅路は前途洋々意気揚々であった。
高速道路を使わず、地道をとろとろと高いガソリン代とおやつ代を消耗しつつ、車は山陽道を疾走していく。
BGMは最初ラジオ、次に雑談、眠くなってきたらアカペラ車内カラオケ。
特にハッピーオーラ全開な庵のテンションゲージは最高潮に達し続け、彼の上機嫌な喉は乾きを訴えるまで晶の合唱を交えて機嫌の良い歌声を披露し続けていた。
「お前等何でそんなカラオケ上手いの?ハモリが完璧すぎ!?きもい!きもいっ!」
山沿いのトンネルばかりな道々、三曲ぶっ続けでスキマス●ッチメドレーを繰り広げていた岡山県民二人に、大輔はげらげら大笑いしながら後部座席で指差し突っ込み。
助手席と中席の庵と晶は「合コンの成果です!」「これで三回成功しました!」と興奮気味にキリッと笑顔を見せると、すかさず庵は「でも三回ともふられてました!」と晶に代わって自己申告。
車内は「庵君マジうざーい!」と笑いながら助手席の後頭部に拳をグリグリ押し当てる晶の姿に、「ですよねー!」とやはり笑いながら大輔の絶叫が響く。
旅が確実に終着点に向かっているのが分かるせいか、香川で行ったイベントの余韻さめやらぬせいか、五人全員が一旦ノリノリになると妙なテンションアゲアゲスイッチが入るらしい。疲れ果てるまで車内はお祭り騒ぎである。
大抵は「大輔運転交代してくれー」と運転でヘロヘロになった夏彦のグロッキーサインで一旦お開きになり、「バイトで鳴らした運転テク」を自称する大輔のハンドルさばきにのせて再発進すると今度は夏彦が後部座席全てを占拠し、背もたれに全体重をかけながらクイズ談義を持ち出し始めて第2ラウンドが開始となる。その間、後部座席からは延々ビスコをかじる音とごきゅごきゅ飲料水がヒゲに吸い込まれる音が聞こえ、それが尽きる頃には夜となりその日の寝床を庵がノーパソで検索し始め、一日が終わる頃には敦は他の四人と同様に熱狂の片隅でぐったりと今更ながらに旅の疲れを感じつつも、車内に満ち満ちる熱狂の虜になってしまう自分に苦笑しつつ、温泉ランドやユースホステルの片隅で横になるのであった。
*
「先輩、天は二物を与えるものなんですね」
道中の途中、コンビニ前の駐車場で休憩中に敦がもらした言葉に晶は「庵のこと?」と微笑む。
「正直に言って、贔屓目に見ても相当歌唱力あると思うのですが」
「あるよ。プロ狙えるくらい。
独特の魅力って言うか、聴いてて苦にならない歌い方をするんだよね。
本気で練習すれば充分通用すると思う。でも、庵はいいってさ。芸能界に興味はないからって」
さらっと言い切る晶に、敦も「ですよねー」と同意した後「勿体ないなあ」と項垂れる。
「羨ましい?」
「ええっと、ちょこっとだけ。僕は何にも取り柄がありませんから」
「敦は、自分を過小評価し過ぎ。でも、その真面目さが敦のいいとこだと思うけど」
「そんな事ないですよぅ。…ねえ先輩」
「なあに」
「先輩は、羨ましいって思ったこと、ないんですか?その…」
「あるよ」
けれんみもなくまたも言い切った晶に、今度は敦が返す言葉を言い出せずまごまごと唇を波立たせた。
「だけどね、悔しい羨ましい敵わないって感情と、親しい楽しい一緒にいたい、って気持ちって正反対の気持ちじゃあないと僕は思うよ。どちらもあるけど、どちらも嘘じゃない。だけど、それでも僕は彼の友達でありたいと思ってる。
…僕も平凡だ。
彼みたいな天才に、せいぜい秀才な僕が敵う訳ないしね」
「そんなっ」
「これはオフレコ、ナイショにしておいてね。…流石に知られるのは悔しいから。
ね?…おっと、コンビニから出てきたね。車に戻ろうか」
「は、はいっ」
【8月5日・元気な若人山陽道を往く・晶呟き敦は焦り・他の三人揃ってチェリオ・続く】
2008年8月6日。
四国香川を後にし、彼らクイズバカの旅路は前途洋々意気揚々であった。
高速道路を使わず、地道をとろとろと高いガソリン代とおやつ代を消耗しつつ、車は山陽道を疾走していく。
BGMは最初ラジオ、次に雑談、眠くなってきたらアカペラ車内カラオケ。
特にハッピーオーラ全開な庵のテンションゲージは最高潮に達し続け、彼の上機嫌な喉は乾きを訴えるまで晶の合唱を交えて機嫌の良い歌声を披露し続けていた。
「お前等何でそんなカラオケ上手いの?ハモリが完璧すぎ!?きもい!きもいっ!」
山沿いのトンネルばかりな道々、三曲ぶっ続けでスキマス●ッチメドレーを繰り広げていた岡山県民二人に、大輔はげらげら大笑いしながら後部座席で指差し突っ込み。
助手席と中席の庵と晶は「合コンの成果です!」「これで三回成功しました!」と興奮気味にキリッと笑顔を見せると、すかさず庵は「でも三回ともふられてました!」と晶に代わって自己申告。
車内は「庵君マジうざーい!」と笑いながら助手席の後頭部に拳をグリグリ押し当てる晶の姿に、「ですよねー!」とやはり笑いながら大輔の絶叫が響く。
旅が確実に終着点に向かっているのが分かるせいか、香川で行ったイベントの余韻さめやらぬせいか、五人全員が一旦ノリノリになると妙なテンションアゲアゲスイッチが入るらしい。疲れ果てるまで車内はお祭り騒ぎである。
大抵は「大輔運転交代してくれー」と運転でヘロヘロになった夏彦のグロッキーサインで一旦お開きになり、「バイトで鳴らした運転テク」を自称する大輔のハンドルさばきにのせて再発進すると今度は夏彦が後部座席全てを占拠し、背もたれに全体重をかけながらクイズ談義を持ち出し始めて第2ラウンドが開始となる。その間、後部座席からは延々ビスコをかじる音とごきゅごきゅ飲料水がヒゲに吸い込まれる音が聞こえ、それが尽きる頃には夜となりその日の寝床を庵がノーパソで検索し始め、一日が終わる頃には敦は他の四人と同様に熱狂の片隅でぐったりと今更ながらに旅の疲れを感じつつも、車内に満ち満ちる熱狂の虜になってしまう自分に苦笑しつつ、温泉ランドやユースホステルの片隅で横になるのであった。
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「先輩、天は二物を与えるものなんですね」
道中の途中、コンビニ前の駐車場で休憩中に敦がもらした言葉に晶は「庵のこと?」と微笑む。
「正直に言って、贔屓目に見ても相当歌唱力あると思うのですが」
「あるよ。プロ狙えるくらい。
独特の魅力って言うか、聴いてて苦にならない歌い方をするんだよね。
本気で練習すれば充分通用すると思う。でも、庵はいいってさ。芸能界に興味はないからって」
さらっと言い切る晶に、敦も「ですよねー」と同意した後「勿体ないなあ」と項垂れる。
「羨ましい?」
「ええっと、ちょこっとだけ。僕は何にも取り柄がありませんから」
「敦は、自分を過小評価し過ぎ。でも、その真面目さが敦のいいとこだと思うけど」
「そんな事ないですよぅ。…ねえ先輩」
「なあに」
「先輩は、羨ましいって思ったこと、ないんですか?その…」
「あるよ」
けれんみもなくまたも言い切った晶に、今度は敦が返す言葉を言い出せずまごまごと唇を波立たせた。
「だけどね、悔しい羨ましい敵わないって感情と、親しい楽しい一緒にいたい、って気持ちって正反対の気持ちじゃあないと僕は思うよ。どちらもあるけど、どちらも嘘じゃない。だけど、それでも僕は彼の友達でありたいと思ってる。
…僕も平凡だ。
彼みたいな天才に、せいぜい秀才な僕が敵う訳ないしね」
「そんなっ」
「これはオフレコ、ナイショにしておいてね。…流石に知られるのは悔しいから。
ね?…おっと、コンビニから出てきたね。車に戻ろうか」
「は、はいっ」
【8月5日・元気な若人山陽道を往く・晶呟き敦は焦り・他の三人揃ってチェリオ・続く】
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