3373plug-in

ゲーム二次創作中心ブログ。 更新まったり。作品ぼちぼち。

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
--.--.-- --:-- | スポンサー広告 | トラックバック(-) | コメント(-) |
息子帰る。
*
さて瞬く間に時は過ぎて。
夜のとばりが近付く五時半。夕焼けが車の影を色濃く伸ばす中、再び天神から博多駅前へ。
先程までわあわあ騒いでいたのとはうって変わって、明らかに大輔の口数が激減しているのが可笑しくもあり不穏でもあり。
店舗向かい、従業員用の駐車場へ駐車するとのそりのそりとラーメン伯楽の玄関に近付く。
既に人影もなく、「支度中」の木板が掛けられた引き戸を前にし、大輔、「うし」と呟き玄関を遠巻きにスルー。

「えっ、ちょ!お店に行くんでは…」
「正面突破は無謀すぎる。身内特権で裏口回るぞ」
「いいんですか?」
「ああ、どっから入ろうが怒鳴られるのは目に見えてるが…。スルーして長崎行って先輩と合流しようもんなら後がおっかねえし。さっさと済ませとく」
俺の知り合い全員ケー番知られてるんだよなあと、大輔は親の交友網の広さに顔を苦らせつつ、庵たちを伴い商店街の裏道へと歩を進めていった。

裏口は小綺麗に整備された歩道脇で、大人二人が入れるくらいの細道にはお約束のように年期が入った汚れの浮いた青いポリタンクと油の一斗缶が道の脇にずらずらと並べてあり、向かいも同じようなゴミ出し状態で道は左右半分くらいが埋もれている。
流石食堂街、誰もルールを決めた訳ではないのに同じような配置で整然と秩序が保たれている不思議。
そして、そこかしこから夜の商いに向けての仕込みの気配と、食欲をそそる豚骨スープの芳しい匂い、香ばしいごま油の相乗効果が換気扇からガンガン熱風に乗って外へ垂れ流されてくる。

空腹には酷なほどに、食欲中枢を刺激する濃厚な油の香りに誰かと誰かの腹の音が鳴った。

「おなかすきました」
「あーはいはい、後でたらふく食わせてやるから!ちょっと心構えくらいさせてくれよ頼むから」

「はらへりー はらへりー は ら へ りーー~♪
はらへり~~へり~~チャーシュ~食べたいな~」

「晶頼む、あの天才バカ黙らせてくれ」
「はいはーい」
乾いた音が路地裏に響き渡った。

「自重庵」
「空腹です晶先生」
「辛抱というものを知りなさい、そして自重」
「(  ´・ω・`)ハラヘリー…」
しゅーんとなる庵をよそに、大輔はいつになく深刻な面構えで裏口前に立ち、ひーひーふーと深呼吸を繰り返している。

「先に言っておくが」
「はい、何でしょう大輔さん」
心配そうに首を傾げる敦に、大輔は一旦ふっと、溜息をもらす。
「俺、オカンには昔からめちゃくちゃおっかない思い何遍もさせられてるから、情けないツラすっかもしんないけど、全スルーしてくれな」
「そんなぁ、気になさらなくっていいですよぉ」
「何だそんな事気にしてたのか?どうせここまで来た仲だろうが、隠す事はないだろうに」
敦と夏彦の軽い返事に、大輔の表情も若干強張りが抜ける。
「む、すまん。まあ、色々とさ…。と、まあ。じゃ、突撃すっ…」
意を決して大輔が裏口を開けようと裏口のドアノブに手を伸ばした瞬間。

戸の内側から豪快に戸が開き、中からぬっと巨体…もとい大きな太鼓腹がにゅっと腹を突き出した。

その時、間近で大輔の顔を見ていた敦は「後にも先にも、あんなに動揺した大輔さんの顔は見たことありません」と形容していたが、実際に大輔は敦の想像以上に一瞬で最大瞬間テンパリ値を記録するほどに、太鼓腹の主の突然の出現にぎょっとしていたのである。

「おっおおおオカン!」
「こんなとこでなんばしよっとかこん子は!!」

誰も制止する間もなく、ばちこーん、と乾いた平手打ちの音が路地裏に炸裂し、途端大輔の全身が背後の一斗缶に突っ込み、ガラガラどっしゃんと缶の山が派手に雪崩を起こした。その間、他四人は唖然呆然愕然となり、「あの武闘系な大輔さんが一撃で…!」と予想以上のバイオレンスな現状にガクガクブルブルと及び腰で顔をひきつらせていた。

開いた戸口から、太鼓腹の主の全身が出てくる。
麻地の青い三角巾の下に、くりくりとした愛嬌のあるふっくら丸顔の熟女。
顔も首周りも肉付きが良く、頬はリンゴのように丸くてつやつやである。
三角巾と同じ素材の3Lサイズな藍染めの麻エプロン。
胸元には「伯楽」の洒落た毛筆体の書が白く染め抜かれている。
エプロン下には薄手の白シャツ下でむちむちと盛り上がった二の腕、ボリュームたっぷりな胸元、そして大根足の二倍近いご立派な太股と腹と二重顎と、見事に立派な貫禄です本当にありがとうございました系むっちりな職人風のおばさまが、不機嫌全開な面持ちで「まったくまったく」とぶつくさ文句を言いながら大輔を睨み付けている。
と、そこでようやく庵達の存在に気付いたようで、途端、吊り上がっていた太い眉根がとろりと垂れ下がった。

「あっらまあ!小野田君に聞いとったけんど、アンアンも一緒に来とったと!?あらあらまあまあ、こりゃー若い子ばっか寄って、しかもなんね可愛い子がおるったい!まあまあよう来たねえ~~」
あっらやだあ、と言う代わりにこってりにっこりな満面の笑顔で頬を染める五十代熟女に、口の端をひきつらせたまま全員が「えへへへ」と一様な愛想笑いを返す。
一人、庵は得意の営業用スマイルを返す心中で「日本のオカンってどこもああいう体型になるもんなんだな…」と、実家で見た母の暑苦しいムチムチ体格を思い出しながら、そんなどうでもいい事をしみじみと実感していた。

「は、はあ」「こんちわー…」
「あいっ…てえなあもう!」
ダチの前でこれはねえだろうがよっ、と一斗缶を押しのけつつ怒鳴る大輔に、大輔母は再び眉を吊り上げ「そげんこつ」と拳を振り上げるフリをする。
「お前が腹かくようなことばすっからだろうが!いったいどこばほっつき歩いてきたか!?ああん!」
「いちいち言うような年じゃねえだろうがよ!いいから家入れてくれよ!ついでに手伝うから」
「ついでったあしぇからしか口ばっかききよる子ったい!まあよか、今日は手が足らんと困っとったとこよ。さっさ入って、手ば洗ってねぎ切らんね!それから、そっちの兄さんたちは中ば入ってもらって涼んでもらいんしゃい。アイスばあったかしらんねえ」
「悪い、俺も何か食べたいんだけど」
「知らんっちゃ!お前みたいなあごたん、そこらの余りもんでも口いれとかんね!ほらほら缶ば片して手伝い!」
「あーもうっせえなあ分かったよ!すぐ行くから!」
ぴしゃん、と戸口を閉められ、戸の内側からどすんどすんと大股で歩く音が外まで聞こえ、足音が遠のくと大輔はそろっと立ち上がって尻についたホコリを払うと、仕切り直してこほん、と咳払いをした。

「儀式終了」
「ぎ、儀式?」
「そんな感じ。いっぺん張り倒されたら勘当終了。今日これから後は店の手伝いしたらいいだろう」
「な、何言ってるのかわかんなかったです…」
だろうなあ、と困惑している敦に大輔は苦笑いを口の端に浮かべて、叩かれた頬をなぜる。儀式とはいえお互い本気らしい、真っ赤に腫れ上がっているのが痛々しい。が、大輔は慣れている風でジンジンするなあ、と呟いて顔をしかめるのみである。
「…あ、中入っていいってよ。俺厨房のヘルプ入るから」
「ええ、大輔さんだけですか?!だったら僕たちも…」
「いや、そんな事させようもんなら往復ビンタ喰らって一日炎天下で物干しに吊されっから俺が。まあ、帰宅の挨拶みたいなもんだと思って気兼ねせずに入ってくれ」
そう答える大輔に促されつつも、何となく戸を開けるのをためらってしまう四人であった。

【8月9日・伯楽入店・大輔おかんは博多の女・続く】












管理者にだけ表示

トラックバックURL↓
http://3373plugin.blog45.fc2.com/tb.php/565-d49c227c

| ホーム |
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。