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ゲーム二次創作中心ブログ。 更新まったり。作品ぼちぼち。

影と再び向き合う時。
*
「と、いいますと?」
「あのデータの元々の発端はなんて事はない。…息子に対する、嫉妬からだ」
「息子…日向二葉に対する、嫉妬…?」
「ああ。…お前、日向の日記を目にした事があるか?あらかた、島で焼き尽くしたから見てないかも知れんが。あの男は、この世で一番息子を憎み、妬み、嫉妬し、どうやってなぶり殺してやろうか、毎日毎日考えていたようだ」
「な、何故…」
困惑している風の幾月に、俺は話を続けた。

「あいつは、まず息子の容姿の美しさに嫉妬を覚えた。普通、カミサンにそっくりな可愛い赤ん坊が出来たら喜ぶだろう?だがあいつは違う。自分の最愛の妻にそっくりで、自分の妻を独占し、自分以上に愛され慈しみを受ける赤子に大人げなく嫉妬していた。可愛い可愛い、とっても良い子ねと囁かれて育てられる息子を見て、あいつは自分に対する愛情が妻から無くなり、全て息子に奪われたと感じたようだ」
「…異常、ですね…」
「ああ。自然、夫婦関係は上手くいかなくなる。当たり前だな。妻は普通の母として普通に子育てしているのに一方的な言いがかりで暴力を振るわれるんだ。腹を痛めて産んだ息子を今にも手に掛けそうな夫の側になんぞ居られるものか。だが、別居した事で更に日向は自分の被害妄想が真実であると確信し、とめどなく息子を憎んだ。…だが、息子はそんな事は分からない。週に数回お互いの家を行き来していた頃には、息子が近寄って来る度に暴力を振るっていたらしい。それも、力一杯に、容赦なく」

『○月×日 今日、あのガキが私に絵を見せてきた。おとうさんの絵だと。
先生にほめてもらったという。
鼻のばかでかい、しわしわの落書きで褒められるものか。
これはきっと自分の顔を自慢したいのだ。
いけすかないガキだ。
躾に顔をめいいっぱい、腫れるまで叩いておいた。これで私とお揃いだ』

『△月☆日 葉子があいつばかりかばう。
これ以上暴力を振るうなら、もう家にも来ないという。
何故だ。これは躾だ。
こいつは子供の皮をかぶった非道な人間なのだ。私には分かる。
これは実の父親に似て、精神のねじ曲がったずる賢い子供に違いない。
たたき直してやっているのに、何故分からないのだ。
葉子も、こいつに籠絡されているのか』

「その後、妻からの連絡も途絶え、離婚間際になり殺傷沙汰を起こし、同時期に爆発事故が起こった。日向は嫉妬に狂い、妻を殺害。だが、それも息子のせいにし、目の前の罪の意識から逃げてしまった」

『×月×日 葉子がやっと私のものになった。
葉子。私の葉子。葉子。葉子。葉子。葉子。葉子。葉子。葉子。葉子。葉子。葉子。
待って居てくれ、君にふさわしい身体を作ってあげるからね。
そのための実験台も、もういるんだ。あのガキは、やはり悪魔の子だったのだよ。
あれがいるから、私も君も真実の目を塞がれ、きっとこんな悲しいすれ違いを起こしてしまったのだ。
でも心配いらない。
あのガキは、私がたっぷりと苦痛を与えて地獄に落としてやろうね』

「施設では、日向は王様だった。息子を好きなようにいたぶり、いじめ抜いた。だが、その息子を愛し、結婚の約束までした少女がいた。その少女こそ、白石 雪…エウリュディケのペルソナを持ったペルソナ使い…少女の力を得て、息子は二つと無い力を得た。純粋な愛情と美しい恋人を得て、どん底から羽ばたこうとする息子が、どれだけ日向の目に憎らしく、恐ろしく映ったことか」

『○月○日 ガキが、他のどの子供にも無い力を得て私の目の前に迫ってくる。
にこにこと笑いながら、ガキは私に凄いだろう、凄いだろうと賞賛の言葉を求める。
これまでの戦闘訓練上位成績者の誰もがガキの戦闘能力に適わなくなってきている。
これほどの屈辱があろうか。あれは私を見下し、膝を折り屈服するのを待っている。
そして、また私の全てを奪っていく気なのだろう。…何とかしなければならない。
あれは悪魔の子だ。私の妻をたぶらかし、少女をたぶらかし呪い殺し力を奪い、
従順なふりをして私を呪い殺そうとしているに違いない。

あれをどうにかしなければ。』

「…馬鹿らしい妄想と現実の狭間で日向は考え、悩み抜いた。そして、息子が愛した少女の歌声がペルソナの能力に少なからず影響すること、そしてその身体に『死神』が宿っている事を知り、計画を閃き、実行した」

『△月△日 今日、悪魔の子を支配するための用意が調った。
あれは、やはり悪魔の申し子だったのだ。
その身に死神を宿し、葉子や少女を殺し、我がものとし力を得ていたに違いない。
このままでは、我々は全滅するだろう。
だが、神は私にインスピレーションを与えてくださった。
神よ、感謝いたします。
白石君の犠牲を私は無駄にはしない。
見ていてごらん。君の仮面の歌声が、あの忌々しい悪魔を支配し、今より我らを守る人形となるのだ。
私を信じない、悪魔の囁きに魅入られた心の弱い力無き者を捧げ、私は最強の兵器を完成させよう。
あの恐ろしい死神を御し、影時間にそびえる塔の支配者となるのは私だ。
桐条にも出来なかった、偉業を私は成し遂げ、歴史にその名を残す事だろう…』

「…こうして、『エウリュディケ』は完成した。息子は完全に傀儡となったが、奴もそう楽観視していなかったようだ。
…実は、他の子供たちにも息子同様の実験を施し、テストを行っていた」
「!…それは、初耳ですね…で…」
「結果を知りたいか?だがタイミングが悪かったな。到着だ」

最上階、展示用大ホールの跡地。
大きな観音開きの扉の前に立ち、俺はタバコに一本火を点けると、一口吸って足でもみ消した。

「さあ…行こうか」
錆びたドアノブに手をかけ、俺は迷う事無くドアを押し開いた。












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