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ゲーム二次創作中心ブログ。 更新まったり。作品ぼちぼち。

言葉の齟齬と行き違いとのろけと。

*

「えっ、あのその、だから私、この仕事引き受けたんですけど…」
「何の話ですかそれは!俺達は、元九州王者に会って対戦するためだけに九州へ遊びに来たんです。大会は見学だけで、後ほど大輔さんに取りなしてもらって…」
「俺は小野田先輩の顔もあるから参加するが、アーサー大の奴らは大会後の飲み会オンリーなはずだ。一体あのツインテール宇宙人は何言ってやがった!」
晶と大輔に詰問され、杏奈は困り顔で肩をすくめる。

「いえ、その…ののちゃんから香川の大会の話を聞いた数日後に、藍子ちゃんから電話があったんです。
九州大会にもアンアンがゲスト出演するから、テンボスのスタッフがそれに見合うようなアシスタント役が欲しいと言われてて、地元でも有名なアナマリア大に通ってる私ならきっと話が早いからお願いしたいと…本当は私、モデルとかアシスタントとか、人前で目立つような行為は苦手で、だから断ろうかと思ったんですけど、他に適当な人がいなかったら司会進行するアンアンが困るし、話がぽしゃると折角出たがってるアンアンも残念がるだろうからどうしてもお願い、と」
「それに、こんな内容のチラシも昨日バイト説明の時にもらったよ~」
私は杏奈ちゃんのアシスタントのアシスタントだけどね、と説明しながら鳥海が開いたネーデルテンボス八月用の手配りチラシには、後日スタッフにもらった香川大会のそれと同じデザインがなされた、フルカラーの庵メインな宣伝広告がでかでかと半ページにわたって掲載されていた。

「あのクイズ王も緊急参戦?!ゲーセンを越えたクイズ勝負!」
「ここで押さなきゃいつ押すの?!九州の猛者が集まる大クイズ大会!」
その右隅には小さな丸文字フォントで「新人気鋭ぷりちーアイドル・アイアイとの握手会もあるよ!」とちゃっかり広告付きである。

変わっているのは日時と場所と大会名のみ。
非常に低コストなマイナーチェンジだが、それではっきりと犯人モロバレである。
一見して誰の仕業か判明し男性陣の表情が殺気に満ち満ちる。

「ねえねえ晶君、俺キレてもいいのかなこれ」
「ありだと思います。というか僕も呆れてしまうね。 …あ の ク ソ マネージャー…!」
「やっべえ俺ぶちぎれそうだわ。大会ばっくれてえー…。
ちょっと、すぐ先輩に問い合わせてくるわ」
返事も聞かずにそのまま店外へ出て行った大輔の背中に、夏彦も「出来るだけ冷静に伝えてこいよー」とクールダウンを促す。
敦は信じられないと言いたげな面持ちで「こういうのってあるんですね」と呟くに留まった。

その様子に、一番動揺している杏奈は不安げに首をすくめる。

「ど、どういう事なんでしょうか?話が違うんですか…?」
「杏奈さん、ののちゃんは何て言ってたんですか」
「え?香川大会で藍子ちゃんが病気に倒れて、その窮地を庵さんたちが救ってくれたと」
「他には」
「えーと…庵さんとデートの途中で大変だったとか、大会の後に金刀比羅宮へ行ったこととか」
「他には他には?!」
「えっとえっと…庵さんが、とっても頼もしくて、で、えーとその…」
「その?!」

「・・・お付き合い出来るようになって、とってもとっても嬉しかった、と…」

「…」
「…」

ぽっ、と頬を染めて俯く杏奈に、一同はのどかがどんな説明…もとい電話でのろけていたかを理解し頭を抱えた。
同様に顔を真っ赤にして俯いてしまった庵に、おそるおそる「ごめんなさい」と杏奈は小さく頭を下げた。

「庵さんたちがお忍びの旅行だというのは、麻美先輩から聞いていたので存じてたのですけど…ののちゃんと藍子ちゃんの話を聞いてたらクイズ大会には乗り気だったのかとすっかり勘違いしてしまって…」
「えーっと、ののちゃん大会の内幕とかについては」
「急な事でとっても迷惑かけちゃったから、九州ではナビしてあげてほしい、と」
「あーー…」

おそらくだが、のどかは=「庵君は九州大会には出場しないから、地元出身の杏奈に観光案内してもらったらスムーズに動けるだろう」という配慮だったのだろう。が、それがまさか杏奈にアイアイの魔の手が迫っていたとも知らず、杏奈はそれを「庵君、九州の大会にも参加するから、イベントステージ上ではナビゲートよろしくね♪」と解釈してしまったのだろう。ああ情報のすれ違い。

「あっちゃー…どうするかなこれ」
「まんまと相手の策にはまる必要はなかろう?大輔が今事情を先輩に説明しているし、今日の夕方にはここへ来るのだろう?その時にでも更に詳細を説明してばっくれるぞ。騙し討ちのようなマネしやがって、やってられるか!」
「いいんですかそれ?!」
夏彦の策に敦がぎょっと目を剥くも、晶も「いいんじゃない?」としれっと答える。
「あのマネージャー、多分どこかで僕らが引っかかるの見越して罠を仕込んでるよ。そのやり口が気に入らないね」
「俺も同意。とっても同意。もうカステラ全味買って東京帰ってやろうかなマジでマジで」
がっくりと肩を落とす庵に、曙がオロオロと口をすぼめる。

「えええ、じゃあ来ないの?!やばいわやばいわそりゃやばいわ」
「なあにが?アケボノ」
「だって、今回の大会賞品」
「賞品?今回はそんなのつくの?」
「これよ」と、曙の太い指先が差したのは先程のチラシの一角。

どうやら九州大会は事前に参加チームが多数表明していたようで、五人チームでのトーナメント形式になるらしい。
羅列されてるチーム名の下に、各順位に応じた賞品の記載が躍る。

一位チームの賞品は賞金五万円と…。

「アシスタントの美人大学生Aさんと園内グループデートだとぉ!!?」

四人同時に目視し、晶が一番に怒号のような叫び声を上げて立ち上がる。

凍り付く店内。
…冷や汗をかきつつ緩やかに着席すると、晶は杏奈の弱り顔とチラシを交互に見比べて目線を交わす。

杏奈は頷いた。

【8月10日昼下がり・庵ぽかーん・男性陣ビキビキ・杏奈しょぼーん・さてどうしよう・続く】












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