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不機嫌な彼。
*

ステージ下で参加者への説明が為されている一方で、ステージ上では前回香川大会とはうって変わったピリピリムードの空気が流れていた。

「あのさ、もう少し段取りよく司会進行とか出来ないの?」
「ちゃ、ちゃんと今まで通りやってるよ~…」
「今まで?今までって事は前と同じ、って事だよな?それって進歩がないむしろ退化してるって自覚があって言ってるか?アイアイ」
「む、むぎゅうー…」
「擬音で誤魔化さないでくれるかな。まさか今回も、飛び入りみたいな特別参加の俺に全部進行させる気か?それって自分は楽して他人任せにするって事かな?」

先程からこの調子である。

香川での実績を見込まれ、「ラスボス」という名目の特別ゲストとして参加を表明した庵が、司会役のアイアイに微に入り細に渡りのダメ出しをし続けているのである。
誤解無いように断っておくと、庵は騙し討ちのような巻き込まれ方に対する苛立ちをアイアイに八つ当たりしているのではなく、むしろアイアイの仕事を放棄したがっているような、けだるげなそぶりに起因した怒りなのである。
実際、神戸で見た司会はそれほど悪くは感じなかったので、今回も舞台を盛り上げる程度の能力でほどほどにリラックスして取りかかろうかと思っていた矢先、実際の舞台上のリハーサルにもかかわらず「暑い~」「えーっとここはーてきと~に」「えーっとここは~なんだったっけ~」と、数日前まで寝込んでいた事を差し引いて尚見ていられないほどのグダグダな司会ぶりに庵が静かに怒りを見せているだけなのである。
まだ、年下の女性相手に無下に悪し様に怒鳴る罵るというコマンドを使用していないだけ、冷静であると付け加えても良かろう。

とはいえ、舞台上でその傍らに立たされているスタッフや参加者はヒヤヒヤものである。
特に晶と杏奈は止めに入るか否かとハラハラしながら事の成り行きを見守っていた。
「どうしましょう、晶さん…あのままじゃアイアイ泣いちゃうかも…」
「い、いや、庵の事だからそんな…ううん、でもこういう時だけ職人気質みたいな拘り見せるとこあるし、庵も間違った事言ってる訳じゃないし…」
「でも、ちょっと細かすぎるような…だって、まだ病み上がりなんですし」
「でも杏奈さん、仕事は病み上がりとか言ってられないと思いますよ?」
「そうですけど…」
杏奈の横顔に不安な彩りが増したのを見て取って、晶は言ってすぐに「しくじったかな」と思いはしたが、晶もここで簡単に杏奈の気遣いに同調するのは躊躇われた。

そんな事をして、もし庵の負担がこれ以上増大するようなら今度は再び庵が倒れかねない。
完璧主義な気質があるから、熱が出ようがフラフラしようが倒れるまで任された仕事は意地でもこなそうとする。
現に、小学生の時もそうした無茶のごり押しを押し通したせいで、クイズ番組の収録直後に高熱で倒れて三日間面会謝絶状態になった実績持ち。
覚悟だけなら並の腰掛けアイドルなど屁の突っ張りにもならないレベルだ。

「それなら最初から無理な仕事とお断りした方がまだましだ。これだけの人件費とスタッフの手間暇を、準備し尽くされた上での明日のショーをムダにする気か?申し訳なく思うならもう少しきびきび済ませようぜ」
「だっ、だって暑いし!まだ体調良くないし…」

「それなら、明日の司会進行は俺一人で進めようか?
その代わりお前の出番は一切カット・ノーギャラで。
宿泊費用は先方と掛け合って値切ってもらうか?…
これはお前、『アイアイ』の請け負った仕事だろ?
分かってないなら何度でも言ってやるぜ。お前の二度目の尻ぬぐいは御免被る」

「う、うううっ…」
アイアイの涙腺が限界に達しようとしたのが見て取れて、杏奈がそっと割って入ろうとした瞬間。

「泣くな。
泣けばこっちが言うこと聞くと思ってるの?
バカなの?本当にバカなの?どうなの?

お前の口は穴開いてるだけか?」

ステージ全面が一瞬で凍り付いた。

一粒でも涙をこぼしたら命は無いと言わんばかりの張りつめた怒気に、今度はアイアイが硬直して言葉を失う。
流石に周囲の萎縮に気付いたのか、庵はややリアクションを大袈裟に肩をすくめて溜息を吐いて見せた。

「…ま、いいや。大体の流れはもうわかったし。アイアイ、明日はやれるんだよね( ´・ω・`)?」
「え…あ、うう」
「ん?怖がる必要はなんもないお。明日はやれますよね( ´・ω・`)?お返事ぷりーずてるみーなわけよ」
「ひゃ、ひゃ、はう」
「やだなー、泣くことないよハッハッハ。俺の叱責で泣いてたら、この先アイドルやってけないお。もっと図太くならないとね?」
「は、はううう…」

あーよしよし良い子良い子ー、と、先程とはうって変わっていつも通りの鉄仮面スマイルでいいこいいことアイアイの頭をぽんぽんと撫でて見せる。笑っている分、ホラー倍増の絵面である。アイアイは泣くより先に生命の危機を感じているようで目に涙を押し止めたまま虚ろな顔で口をパクパクさせている。

晶も杏奈も、他舞台上のスタッフも、成り行きを見守ったまま恐怖と遠慮で硬直しきっている。
真夏の夕日の照り返しが今日は一段と眩しい上にジリジリと焼かれるような体感気温のはずが、ステージの上は冬将軍様が全面アイススケートリンクになされていったようである。
一歩踏み出したら、それこそ将軍様の鉄槌を受けて心底寒々しい思いをさせられそうなほどに。

晶も言葉を無くし、呆然とする杏奈の横で立ち尽くしていると、ふいに背後から『おーい』とマイクを通した機械的なボイスが聞こえてきた。

【8月11日夕方・庵君今日はご機嫌斜め・晶も杏奈もオロオロ・藍子ちゃん泣きそう・背後から声が聞こえます・続く】












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