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ゲーム二次創作中心ブログ。 更新まったり。作品ぼちぼち。

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満月。
*
坂道を、音もなく駆けていく影が二つ。
いずれも、黒い帽子、コート、黒革靴と黒ずくめの屈強な体格の男である。

彼らは、脇目もふらずにある場所へ向かっていた。

「この先か」
「はい。間違いないかと。少年は影時間においても象徴化しないとの報告です。速やかに生け捕りにせよと」
「了解。影時間は仕事がしやすくて助かる。物音を立てようが騒がれようが棺桶では手も足も出してこん」

二人は笑いもせず、サングラスの奥に冷たい光を押し殺したまま走り続ける。
月明かりに照らされ、鈍く鉛色に光るアスファルトの坂道をもうじき登り切ろうかという頃、目的の築三十年は過ぎたであろうかという傾いだ木造アパートの前に人影を見つけた。

「…?」

二人がほぼ同時に立ち止まり、眉をひそめる。
そこには、写真で確認した少年によく似た、しかし異なる「少年」の姿があった。

「こんばんわ。いい月夜ですね」

ストライプの上下に、左頬の泣きぼくろ。ショートヘアで、黒目がち。小学生程度の体格。
影時間耐性のある別の子供か、と思ったが、様子がどうもおかしい。

冬だというのに、少年は素足で…ほんの少し、宙に浮いていた。

「ぼくと、散歩でもしましょうか」

誰だ、と男達が聞く間もなく、少年の影は月下の元で妖しく揺れて膨れあがった。

*

とりあえず、最初に襲いかかってきた4・5人のメンインブラック集団を足下に転がして、陽一は一息ついた。

「…はあーぁ…しんでぇなあもう…」

しんどい、と思うのは歳のせいもあるが、概して敵の強さが腰砕けだった場合である。
自分で言うのもなんだが、ケンカで負けた試しはない。
それは、おしめをかまされていた時分から、変わらない。
今晩の相手も肩書きは大層なヒットマンだったのだろうが、影時間に耐性があるだけで、中身はガキのケツに毛が生えた程度にしか感じなかった。そういう相手の際に、逆に「手加減」してやるのは、正直、しんどい。
こっちはデスクワークの四十男となめられているのだろうか。大した余裕だと、鼻で笑う。

まあ、俺の力が「ばけモン」そのものだろうからな。
そう一人ごちて、陽一はタバコに火をつけ、一口吸い込むとすぐに踏み消しその場を後にした。

間違いねえ。さっきの連中は「噛ませ犬」だ。

本体は、別。
きっとまっすぐ双葉の元に向かったのだろう。

素人でも分かる。とすると、きっと第二波が、来る。

影時間に身体がなじむと、身体がとたんに軽くなる。
普段は通勤の段階で足腰痛えなぁと思っているはずなのに、
身体が十年若返ったように痛みはおろか動かしたくてうずうずしだす。

自宅方向へ足を速めていると、予想通り、黒ずくめが二人、道の真ん中に立っていた。
ただ、さっきの連中と違い二人とも小柄で、コートの上からでも分かる華奢な身体つき。
ただし、…「同類」だ。

「…研究所の能力者、か」
「よくご存じですね」
左側の、やや小さい方が答える。変声前の少年のような声である。
「ああ、前に一度お前さんの仲間と戦った。あいつはどうだ、元気にしてるか」
「死にました」
「そうか、話の分かるいい奴だったんだがな」
「敵に同情されておめおめ帰ってくるような奴に、居場所はありません」
右側の、ややひょろ長い方が冷たく言い放つ。こちらは変声後のようである。
「やれやれ、お前さんたちも冷てえなあ…どこのどういう育て主に似ちまったんだか」
「…作戦遂行までの間、貴方をお引き留めするよう仰せつかっています」
「お引き留め、じゃあねえんだろう?正直に言えよ」
取り出したタバコの先に火花がはぜって、白煙をくゆらせる。一服を始めると、連中も足下の鞄から物騒な物を取り出す。
コンバットナイフと、柄の短いワンド。
ワンドの先から一瞬火花がはぜるのが見えて、子供の持ち物じゃねえと陽一は顔をしかめる。

「その通りです。…消えてください」
小柄な少年の影が一瞬灰色の幻影に揺らめく。奴の頭上に、蛇の髪をまきつけた上半身女の怪鳥の幻が浮かび上がった。
「フリアイ…殺れ」
怪鳥が、頭の痛むような奇声と共に羽を天に向かって仰ぐと、冷気が渦を巻いて向かってきた。
タバコを手にしたまま、白煙を吐いて、反射的に意識を額の中央に集中させる。

爆発音が周囲に轟く。
もうもうと立つ煙の前で、少年達は息をのむ。

「………やった、か?」
小柄な方の少年が、そう呟いて大きなため息をもらす。
「いや、わからない。気配が一瞬で消えた。どこかに逃げたか?」
「しっかりしてくれよ。お前がサーチ役だろ」
「言うなよ、実践は今日が初めてなんだから」
「俺だってそうさ。あーあ、もっと出来のいいパートナーが良かったよ」
「道理で動きが鈍いと思ったぜ。思わせぶりな態度も、漫画のパクリか何かか?それともあいつの台本か?」

背後からの言葉の不意打ちに、少年達が動揺を隠せなかったことで、陽一はこの時心理的に上位に立った。
驚き、まごつく彼らに、陽一はさらに追い打ちをかける。

「あんなしけたブフ一発で俺のタマ取ろうたあ百年早えんだよジャリガキどもが。
これだから『人工』は嫌えだ。ま、お前さんたちに怨みは無いが、あいつの手助けするならたっぷりお灸を据えてやる。今なら見逃してやる。とっとと行け。むしろ失せろ」

「う、うるさい!俺のフリアイを馬鹿にするなあ!」
さっきの二十倍くらいヒステリーが増した怪鳥の幻影が、狂ったようにブフを乱打してくる。
軽いステップで後方に避けつつ、陽一は軽い呼吸一つで意識を集中させる。

「来い、俺の中の俺。今日はガキの性根を焼き直しだ」
呟く口元から、足下に冴えた空気が漂う。白い粒子のゆらめきが彼の頭上で具現化し、次第にそれは人型の幻影を為した。
全身を紅い頭巾、紅いローブ、紅い裾広がりのズボンにブーツと紅い装束で固めた青年のペルソナ。
赤装束の幻影が印を組むと、少年達の周囲に業火の火花が雨あられと降り注いだ。

「うわ、うわうわあああああああ!!」
コートの裾が焦げ、慌てて脱ぎ捨てるとぎゃあぎゃあわめいて火を消そうとする少年達を見て陽一は苦笑する。
「慌てるなよ、火加減はちゃんとしてあるぜ。俺のペルソナ、スーリヤはその点を心得てる」
「ううう嘘だっ耐火製のコートが一瞬でおじゃんになるはずがっ…!」
まずい事を口走ったと口を押さえたが、もはや少年達に心の余裕はなかった。
絶対大丈夫、と確信めいた自信があったはずなのに、彼らは当初の目的すら忘れ、己の膝が笑っているのに驚愕している。
「…そうだよな、おかしいよな。ヒーローみたいな力を手に入れたのに、何で勝てないのかな、と。お前さん達はこう思ってるんだ。そうだよな?」
「う、うるせえ!!」
ひょろ長い少年の身体からも、灰色の幻影が揺れて、頭上で腹の割けた屍人の相を為す。鋭利でいびつで不揃いな腹部の大口から火炎を吐き出すも、それは陽一のペルソナにとってエネルギーに還元されるだけの代物だった。
「…おいおい、そっちのはファントムかよ。俺に火炎は効かないって上の連中は知ってただろうに…なるほど、おまえさんたち、さては後がないのか?連中から、今回頑張ったら次もあるぞ、みたいに言われてここにのこのこ来たとか?」
「うるせえ、うるせえ、うるせえええ!!!」
それならばムドとガル攻めとばかりにペルソナによる魔法攻撃を繰り出す少年二人に、陽一は哀れを感じた。
「…残念。スーリヤ、マカラカーンだ」
太陽神の幻影が彼の頭上で軽く印を切ると、ほの白い球体が陽一を包み、彼に向かって放たれた魔力を全て彼らに跳ね返す。
道路脇の自販機が吹き飛び、電柱がへし折れ、近所の平屋建てのブロック塀にめり込む。
少年達は、もはや身動きすらままならなくなっている。
「ううっ、くそ、それならっ…!」
よろよろ立ち上がり、手にした武器を振り上げようとした刹那、白い刃が閃いたかと思った瞬間、彼らの武器は陽一の足下に転がっていた。
「ガキがナイフ持っていきがるもんじゃねえよ」
頭上にヨーヨーで弧を描きながら、陽一は路上に転がした武器を己の背後に蹴り飛ばす。

「なあ、お前達。自分の名前、名乗れるか?」
怯え、アスファルトに突っ伏したまま後ずさる少年達に、陽一は問いかける。
「はあ?何がしたいの?俺達どうせ孤児だから、調べても無駄」
「そんなことは聞いちゃいねえ。汝、自分の名を名乗れ。…分からんか?」
「…何の事?」
「やっぱり、『人工』か…」
はあ、と深くため息をついた後、陽一は小柄な少年の襟首を掴み、…その横っ面を引っぱたいた。
反動で吹き飛ばされる少年を見て、ひょろ長い少年はびく、と全身をこわばらせる。
彼らが声を出す間もなく、今度はひょろ長い少年の、生気の薄い細面を引っぱたく。
二人とも、痛みと屈辱で声も出せないようだ。口元がわなないている。

「…お前らに足りないものを教えてやる。
『覚悟』だ。
力を得た理由は知らん。
あいつのようにどうしようもない理由からだったかもしれんが、それにしてもあまりに現実を知らん。きっとペルソナを手に入れて間がないせいもあるだろうが…思考が短絡的すぎる。これはゲームじゃねえんだよ。残機なんか無えんだ。人が使えない力を手に入れたからって、自分は選ばれたプレアデスの戦士きどりか?嫌になるぜ。
…教えてやる。ペルソナはお前らをヒーローになどしない。やりたくもない試練を呼び込むだけの力だ」
「………」
「今なら間に合う。南条にでも駆け込んで保護してもらえ。駅まで走って終電で御影町方面への電車に飛び乗って逃げ続けろ。その顔からして、この調子じゃ研究所には戻れんのだろう?俺は生憎一人子供を養ってるんでね。これ以上は無理だ。保護しきれん」
そこまで一息に喋って、陽一はタバコを取り出す。ジッポは懐の中に入れたままだがタバコの先からは火花がはぜり、白煙がすう、と白い筋を立ち上らせる。
「後は自由だ。好きにしろ。俺は子供を手にかける気はない。もっとも、襲ってくるなら足腰立たんようにはするがな」
タバコを一口だけ吸って靴裏でもみ消すと、陽一は少年達に背を向けた。
「戻っても無駄だよ」
ひょろ長い少年の方が、背を向けたまま呟いた。
「今頃、隊長に捕まってるよ。フタバ、っていったっけ。僕たちとは違う、『天然』のペルソナ使いだって聞いたけど」
「それだけしか聞いてないのか?…ふう、まあいい。それについては心配してないさ。ちょいと急ぎはするが」
「…?」
「来た日が悪いな。今日は、遠くからでも分かる…今頃、アレの餌食だぜ。お前らの隊長さん」
ラッキーだったな、とキョトン顔の少年達を置いて、陽一は薄暗い路地裏を抜け、満月を仰ぎ坂道を一気に駆け上った。












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