夏の扉を開けて。
*
第四問:スポーツ→【フィルダースチョイス】○ 正解! 大輔+10pt!
…と、あっという間に20×20でイーブンパーになっての五問目。
大輔は相変わらず正確無比な早押しで観客を沸かせるも、晶は心中「やばいやばいやばいやばい」と早くも持病のテンパリ病が発動寸前まで追いつめられていた。
表情に滲み出ていないか気にかけている間も惜しいほどに、晶は焦りを押し隠せなくなっている。
実際、顔に出ている。
幸いな事に台を挟んでいる大輔に情けない表情を見せなくて済んでいるが、背後からひしひしと伝わる仲間の不安が痛いし辛い。
絶対みんな不審に思ってる。
負けそうだって分かってるよね。
でも、でも!
大見得切ったんだ、やらなきゃ負ける!
負けたら杏奈さんの事も一歩どころじゃなく後退してしまう、それは嫌だ!嫌なんだよ!
「アッキくーん☆」
最高潮まで怒りと焦りとなけなしの集中力を高めていた晶の背中に、不意討ちのように庵の呑気な声が聞こえた。
「何!?」
もう次の問題来るよ、と言う前に庵の声が被さった。
「負けてもいいのよ!負けてもいいのっ☆!」
どっと沸く会場。「負けてもいいのよー☆」と茶化して復唱する観客。
聞こえた瞬間、晶の中で何かが弾けた。
…
……
………・・・ すっげえむかつく。
後で絶対ハリセ…いやグーでパンチしてやる、と晶は一瞬にして決意した。
勝負の 第五問:自然科学
【赤い】【ステークス】【甘い香り】【カオリエンドウ】【観賞用】【花言葉は別離】【松田聖子】【マメ科】【一年草】【シチリア島原産】
「はっ…!」晶PUSH!
「ああっ?!」
晶の間抜けな声をマイクが拾い、会場内がどよっとざわめく。
「(バカが!開始1秒で押し込みやがった!)」
大輔が驚いたのも無理はない。…晶にとっても、気負いすぎての事故に等しかった。
「(まずい!)」
一気に血の気が脳天から足下へ冷たくなって引いていく。
大輔よりも早く、早く押さないと負ける、それしか考えていなかった上に庵への瞬間的な怒りも重なって、普段以上にボタンにかける掌へ力を入れすぎたのである。回答選択肢を見て、更に脳内の焦りが加速する。
回答文字制限:無し
回答文字群:【バ】【リ】【ス】【タ】
文字数予測も不可能。
赤い・自然科学で赤い・赤い植物・赤い鉱物・赤い元素・赤い赤い…
…………・・・やばい!
松田聖子の赤いスイー○ピーで頭の中がいっぱいになってるっ!
バ、ばら、りんご、タ?あー…たたたたたたたたたたた…。
いやだ!ケンシ○ウが聖子ちゃんの唄にのって砂浜をエレガントに駆け巡り始めたぞ!あれ何だかしかも唄が違う!なんだったけ!いや今は関係ない考えるな!あ~私のこ~いは~…って違う!お前とユリアさんの恋路が南の風に乗って走ろうがどうしようが勝手だけど、僕の恋路が駆け出す前に大ピンチだ!邪魔しないでようわあああん!どうしよう!どうしよう!
「晶さん!何でもいいから押してください!」
「!」
杏奈の声で我に帰ると、制限時間が半分以下のデッドラインに入っている。
「自分を信じて!」
「!…ああっ、もう!」
【ス】→
「通った!?」
「何だと!?」
大輔も驚いて画面へ身を乗り出す。あまりに抽象的なヒントだったため、それで通ると思わなかったのである。
「えっ、えっ、まさか…」
【ス】
【イ】
【ー】
【ト】
【ピ】
【ー】
○ 正解! 晶+10pt! 勝利!
「………うっそおおおおおお!!!!」
叫んだ瞬間、勝利画面に切り替わって晶はがっくりと回答台に突っ伏した。
緊張の臨界点に達して、張りつめていた神経の糸が切れたようである。
「か、勝った…」
「ほらね、ああやって発破かけたらアキ君出来る子なんよ」
人の気も知らず、背後で何故か得意げに語っている庵が非常にむかつく。
次のクイズ形式が決まる前に一言もの申してやろうと振り返ると、
「良かったですね!これで1対1ですよ!」
庵の隣で杏奈が弾けるような笑顔を見せていた。
「………っ、はい」
苛立つ言葉を飲み込んで、蚊の泣くような返事だけ返すと台に向き直る。
僕に笑ってくれたんだよな、彼女。…可愛かった。
顔が火照っているのは、きっと日焼けのせいではないと思った。
【8月12日・アキ君はやればできる子・大輔おどろき・続く】
第四問:スポーツ→【フィルダースチョイス】○ 正解! 大輔+10pt!
…と、あっという間に20×20でイーブンパーになっての五問目。
大輔は相変わらず正確無比な早押しで観客を沸かせるも、晶は心中「やばいやばいやばいやばい」と早くも持病のテンパリ病が発動寸前まで追いつめられていた。
表情に滲み出ていないか気にかけている間も惜しいほどに、晶は焦りを押し隠せなくなっている。
実際、顔に出ている。
幸いな事に台を挟んでいる大輔に情けない表情を見せなくて済んでいるが、背後からひしひしと伝わる仲間の不安が痛いし辛い。
絶対みんな不審に思ってる。
負けそうだって分かってるよね。
でも、でも!
大見得切ったんだ、やらなきゃ負ける!
負けたら杏奈さんの事も一歩どころじゃなく後退してしまう、それは嫌だ!嫌なんだよ!
「アッキくーん☆」
最高潮まで怒りと焦りとなけなしの集中力を高めていた晶の背中に、不意討ちのように庵の呑気な声が聞こえた。
「何!?」
もう次の問題来るよ、と言う前に庵の声が被さった。
「負けてもいいのよ!負けてもいいのっ☆!」
どっと沸く会場。「負けてもいいのよー☆」と茶化して復唱する観客。
聞こえた瞬間、晶の中で何かが弾けた。
…
……
………・・・ すっげえむかつく。
後で絶対ハリセ…いやグーでパンチしてやる、と晶は一瞬にして決意した。
勝負の 第五問:自然科学
【赤い】【ステークス】【甘い香り】【カオリエンドウ】【観賞用】【花言葉は別離】【松田聖子】【マメ科】【一年草】【シチリア島原産】
「はっ…!」晶PUSH!
「ああっ?!」
晶の間抜けな声をマイクが拾い、会場内がどよっとざわめく。
「(バカが!開始1秒で押し込みやがった!)」
大輔が驚いたのも無理はない。…晶にとっても、気負いすぎての事故に等しかった。
「(まずい!)」
一気に血の気が脳天から足下へ冷たくなって引いていく。
大輔よりも早く、早く押さないと負ける、それしか考えていなかった上に庵への瞬間的な怒りも重なって、普段以上にボタンにかける掌へ力を入れすぎたのである。回答選択肢を見て、更に脳内の焦りが加速する。
回答文字制限:無し
回答文字群:【バ】【リ】【ス】【タ】
文字数予測も不可能。
赤い・自然科学で赤い・赤い植物・赤い鉱物・赤い元素・赤い赤い…
…………・・・やばい!
松田聖子の赤いスイー○ピーで頭の中がいっぱいになってるっ!
バ、ばら、りんご、タ?あー…たたたたたたたたたたた…。
いやだ!ケンシ○ウが聖子ちゃんの唄にのって砂浜をエレガントに駆け巡り始めたぞ!あれ何だかしかも唄が違う!なんだったけ!いや今は関係ない考えるな!あ~私のこ~いは~…って違う!お前とユリアさんの恋路が南の風に乗って走ろうがどうしようが勝手だけど、僕の恋路が駆け出す前に大ピンチだ!邪魔しないでようわあああん!どうしよう!どうしよう!
「晶さん!何でもいいから押してください!」
「!」
杏奈の声で我に帰ると、制限時間が半分以下のデッドラインに入っている。
「自分を信じて!」
「!…ああっ、もう!」
【ス】→
「通った!?」
「何だと!?」
大輔も驚いて画面へ身を乗り出す。あまりに抽象的なヒントだったため、それで通ると思わなかったのである。
「えっ、えっ、まさか…」
【ス】
【イ】
【ー】
【ト】
【ピ】
【ー】
○ 正解! 晶+10pt! 勝利!
「………うっそおおおおおお!!!!」
叫んだ瞬間、勝利画面に切り替わって晶はがっくりと回答台に突っ伏した。
緊張の臨界点に達して、張りつめていた神経の糸が切れたようである。
「か、勝った…」
「ほらね、ああやって発破かけたらアキ君出来る子なんよ」
人の気も知らず、背後で何故か得意げに語っている庵が非常にむかつく。
次のクイズ形式が決まる前に一言もの申してやろうと振り返ると、
「良かったですね!これで1対1ですよ!」
庵の隣で杏奈が弾けるような笑顔を見せていた。
「………っ、はい」
苛立つ言葉を飲み込んで、蚊の泣くような返事だけ返すと台に向き直る。
僕に笑ってくれたんだよな、彼女。…可愛かった。
顔が火照っているのは、きっと日焼けのせいではないと思った。
【8月12日・アキ君はやればできる子・大輔おどろき・続く】
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