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ゲーム二次創作中心ブログ。 更新まったり。作品ぼちぼち。

恋する凡人。
*

ダイちゃん選択>漫画・アニメ・ゲーム(これでどう転ぶか…)
アッキー選択>グルメ・生活(温存しておいて良かった!)

第一問:漫画・アニメ・ゲーム
第二問:グルメ・生活
第三問:漫画・アニメ・ゲーム

………共にパーフェクト。
会場内のそこかしこから、ざわ、ざわと人がざわめきたつ。
いや、むしろ先程よりも歓声は控えめに聞こえる。
見ている側からも、どちらに勝利が転ぶか読めなくなってきたのか、「おいおい何やってんの」という大輔への苛立ちやら、「あの兄ちゃんやるねえ」という晶に対する意外性やら、その他諸々をひっくるめて、「良い勝負」をしている姿に会場内の集中度が増している。「流石に研究会同士だからなあ」と、勝手知ったる口調でどこかの誰かが懐かしそうにそんな事を呟く。
そんなギャラリーの様子も知らず、対戦中の二人は集中のまっただ中にいた。
晶の周囲は水を打ったように静かであった。彼自身、不思議なほどであったが雑音をシャットアウトしている。
僕もこういう事出来るんだなぁ、といつかの庵の回答台に向かう背中を思った。

大輔は、来る問題来る問題にしがみついてくる晶に「粘るな」と意外に思っていた。
晶の弱点がどこから来るのか、大輔は何となく分かっていた分余計である。

完璧主義なのである。
テストは100点、成績も「優」しか頭にない。エリート一家の宿命なのかもしれないが、そのせいで95点でも己を低く見る傾向があるように見えた。問題復習なんかをしているといつも思うのだが、「あそこさえ間違わなければ」「あのミスが」と、例えば10問中9問解答出来ていても、その1問が不正解だった事ばかりに自分の失敗した問題ばかりへフォーカスし続ける。
良く言えば慎重で堅実だが、…悪く言えばネガティブで見栄っ張り。
何でも完璧で良い結果のみを出せる自分でありたいと願っている。
そう分析した。

なので、時々…いやことあるごとに「僕は勝負に弱くて」と口にしていたのも分かる気がする。
例えば、テストの途中でいきなり分からない問題が出てくるとおざなりに出来ない。
念頭に「100点」しかないから、イコール「この問題も絶対に解かなければならない」=パニックに陥る。
それでズブズブと残りの問題まで瓦解させてしまうのが、晶の問題解答における問題点と思う。
なので、一度失敗するとリカバリーに時間がかかると思ったのだが…今日の晶はどうも一味違う。
大事な大勝負で、一皮剥けたか?
土壇場で強くなるとかどうよ、と苛立つ指先が知らずにコツコツと筐体の端を弾く。

パーラメント吸いてえなあ、とぼんやり思う。
吸ったら、このモヤッとした気分も晴れるような気がした。

運命の第四問。

第四問:グルメ・生活
「九州地方の銘菓を選びなさい」

【チロリアン】【ひよ子】【かるかん】【瑠異沙】【くじらようかん】【ざびえる】【かからん団子】【陣太鼓】【九十九島せんぺい】【博多とおりもん】

晶「………(・・・どれも、一応食べた事あるけど…これ、九州だったっけ…?これは東京のと…えっと、どっちかな…)」
大輔「……(これは…いや、でもこっちがあるが…これこのまま入ったかな?あったっけ?あれ、やべえなどっちだったか…)」

選んだり消したりと、画面を突いては時間いっぱいまで粘り、タイムアップ。
回答群に画面が移る。

晶:【チロリアン】【ひよ子】【かるかん】【瑠異沙】【くじらようかん】【ざびえる】【かからん団子】【陣太鼓】【九十九島せんぺい】【博多とおりもん】 (全選択)

大輔:【チロリアン】【ひよ子】【かるかん】【瑠異沙】【くじらようかん】【かからん団子】【陣太鼓】【九十九島せんぺい】【博多とおりもん】


「割れた!」「どっちだ!」
おおっ、と会場内がどよめく。
当人たちは二人とも渋い顔で画面を凝視して正解を待つ。

「(晶、全部積んだか…)」
ここで大した度胸だな、と大輔が舌を巻く一方で、晶は心臓が既にバクバクであった。
「(やばい、ひよ子が引っかけまがいだと思って咄嗟に積んだけど、あっちが違ってたのか…!)」
ざびえる、というお菓子は6月にデパートの九州物産展で買って食べた気が、してたのだが…もしかして、「さぴえる」とか「ざびー」とかそんな名前だったっけ、とパッケージを反芻するがこういう時に限って脳内がモヤって像を結べない。嫌な汗が額に背中にべっとりと浮き出てくる。

いや、大丈夫。
これでいい。いい。いい、はず。多分。…多分だけど。

…ごめん、やっぱり自信ない。押してる時は自信満々だったのに、僕のバカ!
一度でいい。神様、僕に奇跡をください。お願いだから。
台に肘ついたふりをして、手を揉む仕草で掌にまで浮き出た油汗を揉み合わせて紛らわせる。
余計な事を考えていても、悠然と腕組みをしていても、答え合わせに画面は切り替わって。

正解:【チロリアン】【ひよ子】【かるかん】【瑠異沙】【くじらようかん】…

ここまで不正解音なし。
会場はかすかなざわつきしか聞こえない。遠く帆船の汽笛が聞こえる。午後四時の合図。
港の海際が夕日を照り返して頬が熱い。眩しいくらいの橙色が視界を細くする。












正解:【チロリアン】【ひよ子】【かるかん】【瑠異沙】【くじらようかん】【ざびえる】【かからん団子】【陣太鼓】【九十九島せんぺい】【博多とおりもん】(全部正解:福岡→チロリアン・ひよ子・博多とおりもん/長崎→九十九島せんぺい/熊本→陣太鼓/大分→ざびえる・瑠異沙・かるかん/宮崎→くじらようかん/鹿児島→かからん団子)

正答数:9対10 晶勝利!


一瞬の沈黙。
遅れてきた津波の如く、会場に轟と起きた万感の歓声の中で、晶は一番大きな声で雄叫びを上げていた。

「……いやったああああああ!!!」
反射的に立ち上がって、髪を振り乱して叫んで、…すとん、と腰を落とした瞬間、涙が浮かんだ。

バカみたい。バカみたいな事したぞ僕。
でもいいや。
こんなバカなら何度でもいいや。

そうか、勝つのってこんなに嬉しい事だったんだな…。

へへへ、と締まりのない泣き笑いで涙が頬を伝う。
全ての勝負が決した訳でもないのに、何だかもうどうでもいいぐらいに、嬉しくて、嬉しくて、泣いていた。
くだらない意地とか男の勝負とかは頭の隅に寄せられて、ただ勝った喜びが全身をおかしくくすぐっていた。
そうか、僕もっと頑張っていいんだ。
そう思ったら、また涙が出てきた。

嬉しい。今ボクすごく嬉しいや。

全身からほかほかした喜びを放出している晶の背後で、庵は黙って微笑んでいた。

「晶さん、凄いですね」
杏奈の素直な感想に、庵は「いや」と短く否定する。

「これが実力だよ。晶はやれば出来るから」
「えっ」
「俺はいつも側にいるから知ってるんだよ。杏奈さんも、側にいたら分かるさ」
庵の言葉にキョトンとなる杏奈に、庵はいつものようにニッコリと笑いかけた。

【8月12日・漢の戦い終了・晶君の良い笑顔・続く】












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