( ´・ω・`) 「…業務連絡です。しばらく更新が今よりモアスローリーになりそうです。週一狙いで更新してたのですが、今週はずれこむわで、来てくださった皆様には誠にすみません事です…。その遅れてる理由はまた今度…とりあえず、本格的に寒くなる前に夏を終わらせられるように出来たらな…だそうです。…皆さんすみませんが、ゆるゆるとお付き合いいただけたら幸いです。ハチヤでした…はあ、漢字チャレンジつれてってもらえるのかな…」
あんちゃんごめんなあんちゃん…
そして皆様にも平謝りな更新具合で申し訳なく。
今後ともぼちぼちですが、どうぞよろしくです…。
*
敗北の後の一服。
あんちゃんごめんなあんちゃん…
そして皆様にも平謝りな更新具合で申し訳なく。
今後ともぼちぼちですが、どうぞよろしくです…。
*
敗北の後の一服。
*
一方、地元問を落として敗北した大輔は、気怠げに「っああーー…」と唸って天を仰ぐ。
最後の最後で慎重になった差が出た結果だった。だから、言い訳はしない。
悔いは残ったとしても。
気付くと、背後で負け犬三人がアヒル口して(・3・)ブーブーと膝で背中を小突く。
「ちょっとおダイちゃーん」
「何負けてるのよぉー」
「この後全部ブイブイ行くんじゃなかったのぉー?」
「うっせえよバカ!カマ口調で寄ってくんなキモイわ!勝負は水物なんだよっ!…あーー、ダメだ。ヤニ切れだ」
カードを抜き取り腰を浮かし「悪い、どいてくれっか」と立ち上がるなり背後に群がっていた三人を退けると、一歩退いて観戦していた小野田に「バトンタッチ」と掌をかざす。
「あいよ」
小野田は特に憎まれ口も軽口もなく、ただ口の端を曲げて大輔の掌をぴしゃりと軽く叩く。
「後はもらっていいのな?」
「いいっすよ」
俺は後がまだありますから、と小野田に聞こえる程度の小声で囁いて、大輔はそのままステージ裏へとスタスタ歩き去ってしまった。
「おおー?」「どうしたー?」とざわめく観客に、「大輔はヤニ切れだ!」と小野田が叫んで会場の笑いを誘う。
「だからって退場とかいいの~?」
大輔にインタビューしそこねたアイアイの至極まともな意見に、小野田は介さず「いいんじゃね?」と余裕のそぶりを見せる。
「老兵と同じよ。死なずただ去るのみ、ってやつ?それに、さっきから思ってたけど勝とうが負けようが待ってる側ってすっげえ暇なのな!これさ、次回があるならもうちょっと考えてもらえねえかな運営さんよぉ。…なあ、皆さんも思うよな?次もしクイズ大会で自分が参加出来る、とかなっても壇上で手持ち無沙汰じゃ格好悪いよなっ!」
おおーーっ!と賛同の大きな歓声と拍手が起こる。
そして、その拍手に混じって「俺も押したい」「やりたい」と叫ぶ誰かの声が聞こえて、アイアイは胸が熱くなるのを感じた。
つい昨日まで一般人だった誰かの意見が、弾かれる事なく漣のように多くの人間に伝わっていく感触が視認出来る不思議。
無我夢中でずっと壇上に立っていたが、今夕焼け色に染まった会場を包み込むこの熱と声と思いのうねりはどこから来るのだろう。
それは、いつか自分一人で掴みたいと思っていた興奮と情熱の場所によく似ていた。
レオナの夜景で垣間見た、残り香のような人の思い。
気付くとやばい。
涙腺が震える、痛む、うずく。でもまだ泣かない。
これは自分の功績ではない。そして庵一人の功績でもない。
参加者、プレイヤー、観客、あらゆる思いが綯い交ぜになり、全ての熱となって昇華されている。
暑い夏の日差しが、誰かの思いを焦がしながら大村湾を朱に染めて沈んでいく。
時は留まる事はない、だから覚えておこう。いつか今日見た風景を越えられるように。
一人で越えていけるようになるまで。
アイアイがぐっと涙を飲み込んで司会進行を進める裏で、大輔はステージ裏に待機していたスタッフから自分のウェストポーチを受け取ると、ステージすぐ裏手のトレーラーに入る。ここは舞台上の設備全てを制御する本部であり、中ではメインモニタと会場の様子、壇上の様子を左右センターからの映像で常時確認するモニタがあり、敷き詰められた配線の束から足の踏み場を辛うじて確保した室内は、クーラーでガンガンに冷やされているにもかかわらず、中央へ僅かなスペースを残してみっしりと積み込まれた機器類が放出する熱風で車内は微妙に蒸し熱く感じられた。中では機器類の数値や人の混みようをチェックしていた交代制のスタッフが二人、大輔の姿を座席から一瞥して「お疲れ」とすぐに画面に視線を戻した。
「惜しかったな」
揃いの黄色いAnTシャツを着たスタッフの一人に背中越しに励まされ、大輔は「ども」と首をすくめる。
「いや、あんなもんですよ。油断しました」
「キングでも油断はするか。そんなんじゃ最後がしまらないぜ」
もう一人の小太りなスタッフにちくりと言われるも、大輔は神妙な様子で「大丈夫ですよ」と即答した。
「すぐ本気仕様の用意しますから」
大輔は慣れた手つきでジッパーを開くと、まず携帯用ウェットティッシュで顔や手にべっしょりと浮き出た汗を拭い取り、ポケットにねじ込む。急いでコンタクトケースを取り出すと両目からレンズを指で掬って外し、手際よくケースに収めてこちらはポーチへねじ込む。最後に、使い込まれた感の漂う古びた皮の眼鏡ケースを取り出し、黒縁の丸眼鏡を取り出し装着すると、二度三度まばたきをして「よし」と呟いた。
モニタから歓声が聞こえる。
小野田があっさりと晶に勝ったらしい。
「ロン毛ざまあ」と小太りが呟いたのが聞こえた。
「晶、嫌いなんすか」
高校時代から使い込んでいる、分厚いビン底眼鏡で大輔が振り返ると、小太りスタッフは「別に」と吐き捨てる。
「俺より痩せててモテる奴は嫌いなんだよ。それに」
「それに」
「俺、愛媛の出身なんだけど、アカデミッククイズはいつも一問目で予選落ちでさ。しかも、四国ブロックって岡山含むだろ。あいつらの周りはいつもキャアキャア言ってる女子とテレビカメラばっかりだったよ。だから、あんま好きじゃねえ」
「何だ、年近かったんすね」
老けてて悪かったな、と小太りが口を尖らせる隣で、細身のスタッフがクスクスと笑ったのが聞こえた。
「だから、勝てよお前。お前は、俺らもてない奴の代表者なんだから」
「ちょ、俺まで一緒っすか」
「あ、じゃあ俺もその中の一人で」
細身まで手を挙げて、否定しかけていた大輔は「…まあ、いいか」とやめた。
「たった今負けたとこだし、次は意地でも勝ちますよ」
「頼むぜ。俺、お前に賭けてんだから。負けたら日雇いバイト十人前のちゃんぽん奢らされちまうよ。俺だって安月給だってのに」
「でもって、俺もそのワリカンに巻き込まれてるという」
本部スタッフとも、二人して不純な動機の応援隊である。
が、何故だか悪い気はしない。悲しき負け犬組の部屋。
「それより先に、小野田さんに勝ってもらわねえと」
「勝てそう?サツマ君的に見て」
細身の予想に大輔は「五分」と答える。
「俺は微妙だと思うけど?だからお前に残ってて欲しかったんだがなあ」
既に敗戦ムードを確信している小太りに、「まだ早いっすよ」と大輔は苦笑い。
「もし、俺が勝ったら、賭けはどうなるんですか?」
「ん?チャンポン奢る代わりに俺がお土産もんのチャンポンセット人数分もらって帰るだけ(笑)」
「十人前一人で食べるんすか(笑)」
「いや、スタッフで山分け。俺ももらうよ。晩には飲みに行って、角煮でもつつきたいね」
明日は朝から撤収作業とかマジだるいわ、と疲労しきった溜息がこぼれて消えた。
「そっすか。なら、俺らと一緒に飲みます?地元の穴場に連れていってもらう予定でして」
「いーねぇ!」とスタッフ二人の声が唱和する。三人揃って爆笑。
「それなら、またブログで裏話にでも使ってよ。休み済んだら、復活するんだろ?」
「その予定っす。また来てくださいね。あと」
「あと?」
「A大の連中も一緒に連れてく予定にしてますんで。呑んで話せば、きっと庵も晶の事も好きになりますよ」
ほっ?と虚を突かれて素っ頓狂な声を出したスタッフを尻目に、大輔は悠然と勝負を映すモニターに視線を移した。
【8月12日・大輔一休み・晶脱力中・その頃庵はスタンバイ中・続く】
一方、地元問を落として敗北した大輔は、気怠げに「っああーー…」と唸って天を仰ぐ。
最後の最後で慎重になった差が出た結果だった。だから、言い訳はしない。
悔いは残ったとしても。
気付くと、背後で負け犬三人がアヒル口して(・3・)ブーブーと膝で背中を小突く。
「ちょっとおダイちゃーん」
「何負けてるのよぉー」
「この後全部ブイブイ行くんじゃなかったのぉー?」
「うっせえよバカ!カマ口調で寄ってくんなキモイわ!勝負は水物なんだよっ!…あーー、ダメだ。ヤニ切れだ」
カードを抜き取り腰を浮かし「悪い、どいてくれっか」と立ち上がるなり背後に群がっていた三人を退けると、一歩退いて観戦していた小野田に「バトンタッチ」と掌をかざす。
「あいよ」
小野田は特に憎まれ口も軽口もなく、ただ口の端を曲げて大輔の掌をぴしゃりと軽く叩く。
「後はもらっていいのな?」
「いいっすよ」
俺は後がまだありますから、と小野田に聞こえる程度の小声で囁いて、大輔はそのままステージ裏へとスタスタ歩き去ってしまった。
「おおー?」「どうしたー?」とざわめく観客に、「大輔はヤニ切れだ!」と小野田が叫んで会場の笑いを誘う。
「だからって退場とかいいの~?」
大輔にインタビューしそこねたアイアイの至極まともな意見に、小野田は介さず「いいんじゃね?」と余裕のそぶりを見せる。
「老兵と同じよ。死なずただ去るのみ、ってやつ?それに、さっきから思ってたけど勝とうが負けようが待ってる側ってすっげえ暇なのな!これさ、次回があるならもうちょっと考えてもらえねえかな運営さんよぉ。…なあ、皆さんも思うよな?次もしクイズ大会で自分が参加出来る、とかなっても壇上で手持ち無沙汰じゃ格好悪いよなっ!」
おおーーっ!と賛同の大きな歓声と拍手が起こる。
そして、その拍手に混じって「俺も押したい」「やりたい」と叫ぶ誰かの声が聞こえて、アイアイは胸が熱くなるのを感じた。
つい昨日まで一般人だった誰かの意見が、弾かれる事なく漣のように多くの人間に伝わっていく感触が視認出来る不思議。
無我夢中でずっと壇上に立っていたが、今夕焼け色に染まった会場を包み込むこの熱と声と思いのうねりはどこから来るのだろう。
それは、いつか自分一人で掴みたいと思っていた興奮と情熱の場所によく似ていた。
レオナの夜景で垣間見た、残り香のような人の思い。
気付くとやばい。
涙腺が震える、痛む、うずく。でもまだ泣かない。
これは自分の功績ではない。そして庵一人の功績でもない。
参加者、プレイヤー、観客、あらゆる思いが綯い交ぜになり、全ての熱となって昇華されている。
暑い夏の日差しが、誰かの思いを焦がしながら大村湾を朱に染めて沈んでいく。
時は留まる事はない、だから覚えておこう。いつか今日見た風景を越えられるように。
一人で越えていけるようになるまで。
アイアイがぐっと涙を飲み込んで司会進行を進める裏で、大輔はステージ裏に待機していたスタッフから自分のウェストポーチを受け取ると、ステージすぐ裏手のトレーラーに入る。ここは舞台上の設備全てを制御する本部であり、中ではメインモニタと会場の様子、壇上の様子を左右センターからの映像で常時確認するモニタがあり、敷き詰められた配線の束から足の踏み場を辛うじて確保した室内は、クーラーでガンガンに冷やされているにもかかわらず、中央へ僅かなスペースを残してみっしりと積み込まれた機器類が放出する熱風で車内は微妙に蒸し熱く感じられた。中では機器類の数値や人の混みようをチェックしていた交代制のスタッフが二人、大輔の姿を座席から一瞥して「お疲れ」とすぐに画面に視線を戻した。
「惜しかったな」
揃いの黄色いAnTシャツを着たスタッフの一人に背中越しに励まされ、大輔は「ども」と首をすくめる。
「いや、あんなもんですよ。油断しました」
「キングでも油断はするか。そんなんじゃ最後がしまらないぜ」
もう一人の小太りなスタッフにちくりと言われるも、大輔は神妙な様子で「大丈夫ですよ」と即答した。
「すぐ本気仕様の用意しますから」
大輔は慣れた手つきでジッパーを開くと、まず携帯用ウェットティッシュで顔や手にべっしょりと浮き出た汗を拭い取り、ポケットにねじ込む。急いでコンタクトケースを取り出すと両目からレンズを指で掬って外し、手際よくケースに収めてこちらはポーチへねじ込む。最後に、使い込まれた感の漂う古びた皮の眼鏡ケースを取り出し、黒縁の丸眼鏡を取り出し装着すると、二度三度まばたきをして「よし」と呟いた。
モニタから歓声が聞こえる。
小野田があっさりと晶に勝ったらしい。
「ロン毛ざまあ」と小太りが呟いたのが聞こえた。
「晶、嫌いなんすか」
高校時代から使い込んでいる、分厚いビン底眼鏡で大輔が振り返ると、小太りスタッフは「別に」と吐き捨てる。
「俺より痩せててモテる奴は嫌いなんだよ。それに」
「それに」
「俺、愛媛の出身なんだけど、アカデミッククイズはいつも一問目で予選落ちでさ。しかも、四国ブロックって岡山含むだろ。あいつらの周りはいつもキャアキャア言ってる女子とテレビカメラばっかりだったよ。だから、あんま好きじゃねえ」
「何だ、年近かったんすね」
老けてて悪かったな、と小太りが口を尖らせる隣で、細身のスタッフがクスクスと笑ったのが聞こえた。
「だから、勝てよお前。お前は、俺らもてない奴の代表者なんだから」
「ちょ、俺まで一緒っすか」
「あ、じゃあ俺もその中の一人で」
細身まで手を挙げて、否定しかけていた大輔は「…まあ、いいか」とやめた。
「たった今負けたとこだし、次は意地でも勝ちますよ」
「頼むぜ。俺、お前に賭けてんだから。負けたら日雇いバイト十人前のちゃんぽん奢らされちまうよ。俺だって安月給だってのに」
「でもって、俺もそのワリカンに巻き込まれてるという」
本部スタッフとも、二人して不純な動機の応援隊である。
が、何故だか悪い気はしない。悲しき負け犬組の部屋。
「それより先に、小野田さんに勝ってもらわねえと」
「勝てそう?サツマ君的に見て」
細身の予想に大輔は「五分」と答える。
「俺は微妙だと思うけど?だからお前に残ってて欲しかったんだがなあ」
既に敗戦ムードを確信している小太りに、「まだ早いっすよ」と大輔は苦笑い。
「もし、俺が勝ったら、賭けはどうなるんですか?」
「ん?チャンポン奢る代わりに俺がお土産もんのチャンポンセット人数分もらって帰るだけ(笑)」
「十人前一人で食べるんすか(笑)」
「いや、スタッフで山分け。俺ももらうよ。晩には飲みに行って、角煮でもつつきたいね」
明日は朝から撤収作業とかマジだるいわ、と疲労しきった溜息がこぼれて消えた。
「そっすか。なら、俺らと一緒に飲みます?地元の穴場に連れていってもらう予定でして」
「いーねぇ!」とスタッフ二人の声が唱和する。三人揃って爆笑。
「それなら、またブログで裏話にでも使ってよ。休み済んだら、復活するんだろ?」
「その予定っす。また来てくださいね。あと」
「あと?」
「A大の連中も一緒に連れてく予定にしてますんで。呑んで話せば、きっと庵も晶の事も好きになりますよ」
ほっ?と虚を突かれて素っ頓狂な声を出したスタッフを尻目に、大輔は悠然と勝負を映すモニターに視線を移した。
【8月12日・大輔一休み・晶脱力中・その頃庵はスタンバイ中・続く】
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