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ゲーム二次創作中心ブログ。 更新まったり。作品ぼちぼち。

※ようやくプチ浮上できました。長々と続いて申し訳ないですが、もう少しお付き合いいただけたらと思います…|ω・`)

I'll be back.
*

アンコールを待つ拍手のように、「王者」の掛け声が収まらない。
会場内は異様な興奮と戸惑いで未だ熱された酔いから覚めずにいた。

「なんか、怖いふいんきだよぅ」
と、一応段取りは把握しているアイアイでさえおっかなびっくりな様相である。
壇上では、そんな様子を眺めてうっすらと笑みを浮かべる庵の姿があった。

ポン、という小さな機械音の後、QとAが回っていた背後のスクリーンが暗転した。
おおっ、と会場がどよめいたと同時に、画像が白く反転し別の映像へと切り替わる。

『俺を呼んだか?』
全身白い王子様衣装=ランカー服に身を包んだデフォルトアバターの姿が大写しになる。
頭髪、目の色、全て夕焼けのような橙色の王者アバターは、腕組み姿で画面内のクイズ番組を模した3DCGの会場内に佇んでいた。
うおおおおっ!と返事の代わりに怒号のような大きな歓声と拍手が会場から沸き起こると、応えるように小さく右腕を掲げる。

「サッちゃんおかえりー!」
「復活キタ━━━━(゚∀゚)━━━━ !!!!!」
「おかえんなさーい!」「おおおおっ」
「マジでアバター動いてる!」「すげえ!」

王者=サツマハヤトを知っているユーザーは彼の凱旋を歓迎し、彼を知らないユーザーは先程とは異なるキャラそのものが動く演出に感嘆と拍手で彼を出迎えた。

『馴染みの奴は久しぶり、知らない人は初めまして。
俺はサツマハヤトと名乗る、元アンサーアンサー王者だった。
今はしがないクイズバカをやってる。

今日はスタッフさんづてにイベントにて新技術を皆さんにお披露目したいとの事で、そのテストプレイをしないかと有難い申し出を受けまして、こうして皆様の前に姿を現しました。
見えるでしょうか会場の皆さん、俺の相棒…アバターが画面に大写しになってるかと思います。こいつを笑ったり、泣いたり、怒ったり…』
サツマの言葉に合わせて、画面上では男の子1アバターの王者がニコッと頬を染めて笑ったり、白目になって泣いたり、又は頭から湯気を噴出して怒って見せたり。
会場からはどよめきと和やかな笑い、そして新たな演出効果に拍手が。

『…と、まあこんな感じに。面白いでしょう?これ、今後アンサーアンサー上で追加されるタッチアクションのモデルパターンだそうです。最終的に、どんな表情がどういう風に搭載されるかは、今後のお楽しみとして…。
今回は特別に、そのモーションのお披露目がてら半年前と同じランカー…こんな大層な格好で出演させていただいてます。
俺は半年前までこのゲームで長い事全国一位…全国王者でありました。が、色々とバカをしましてしばらく隠遁生活しておりましたが…俺よりクイズが好きなバカがいると聞いてふらりと戻ってきた次第であります。曰く、そいつは俺よりチビでデコっぱちで人の八倍メシを食う激しくずぼらでダラダラまったりな男なのに、昔はテレビに出まくってて超有名だったからというだけでちやほやされてると』
「ちょっと待った!何で俺の事をそんなに正確に知ってるの(笑)!つかサツマさん俺より背高いのかよ!?」
『残念、お前よりは確実に背は高い。そして体脂肪率も確実に俺の方が低い』
「筋肉質なボディと言いたいのですね分かります。マッチョだからってクイズは強くならないお」
すかさずツッコむ庵をさらりとかわすサツマに、庵もならばとマイク越しに反撃。が。

『残念、お前の腹が気持ちぷよっている事を俺はダチから聞いている』

「大輔さん、何て事を(笑)!でも語弊が無いように言うと、俺むしろ痩せてる方ですから!ちょっと筋肉足りないだけで!」
観客への必死な言い訳ぶりに、会場やや受けな苦笑がそこかしこからこぼれる。

『クイズ王者…もとい、アカデミッククイズ三冠王のリーダーが何を弱気な。アカデミッククイズの三本柱を忘れたか?ジャンプでいうなら友情・努力・勝利。そしてアカデミックは知力・体力・時の運!体力だって立派なクイズの素養だ。おつむだけでは完璧な王者とは言えないと思うぜ』
「残念、アカデミックは三人で分担して支え合うのが醍醐味ですよサツマさん。俺はほぼ知力担当、晶がサポートと筆記とど根性と体力そして運、他一名がなけなしの貧乏くじを受け持ってくれてたのよ」
『他一名(笑)…そうだな、お前たちはそれに加えて不思議な強運もあったように思えた。運も実力の内、とはよく言ったものだ。特にお前…アンアン、安佐庵に関しては。だが、俺はあえて努力の凡人代表としてお前に勝負を挑もうと思う』
おおおっ、と会場が高揚でざわめいた。

『俺は正直IQとか知能指数に関しては普通だ。むしろ昔は色々とやんちゃな事もした。福岡の中洲を釘バット片手にうろついていた時代もあった。が、高校に入ってクイズ研究会に入って更正して、努力に努力を重ねて大学入って、一年前にはクイズゲーム内で王者になるに至った。
バカでも勉強すりゃあクイズ王になれる。
でもって、日本一のクイズ王にも勝てる。それを証明する』

会場内からは大きな拍手が起こる。
人情として、努力で下からのし上がってきた人物に対して人は好意的になるものだ。更に、地元九州民であるのも分かって会場内からは「頑張れー」などと声援さえ聞こえた。

「へえ…サツマさんって苦労人だったんだ」
そういえば、大輔さん全然彼の話しなかったなと晶が画面を見ながらぼんやり思っていると、壇上の筐体をすかさずスタッフが配置換えを行い、一台をステージ裏へと素早く撤去、残った一台を画面脇のほうへと三人がかりでエイヤッと押しやる。大画面の向こう側の対戦仕様に早変わりである。様子をどこかで把握しているのか、スタンバイが終わるとすかさずサツマが口を開いた。

『さて、どうするクイズ王?俺の勝負を受けて立つか?それとも岡山帰るか?』
「そんなのは決まってる。勿論、勝負するぜ!」

おおおおおおおっ!と今日最高潮の拍手が巻き起こる。拍手に合わせて、庵は大仰に手を振って見せ、次にタ●リさんの如くパン、パパパンと手拍子で会場全体を締める。観客どっと笑い。

『よろしい、ならば延長戦だ。観客の皆さんには暑い中申し訳ないが、もう少しお付き合いいただけると有難い。九州代表が負けてる以上、俺は必ず勝ってやる』
地元民から先程以上の拍手と歓声が巻き起こり、無表情ながらどこか照れくさそうにスクリーン内で王者のアバターが手を振った。

『…では、早押し系のクイズのみで勝負だ。これからの出題形式は早押し連想→早押しテクニカル→そして早押しクイズ。クイズ三形式のうち、二本先取した方が勝利。それでいいか?』
「いいぜ、俺もボタン押す形式の方がスキだし!ただし俺が勝ったら、サツマさんの顔を大画面で公開してもらうよ」

『構わん。見せて恥ずかしい物はつけちゃいない』

どこか気怠げであった会場内の空気が、盛り上がりにつられて再び盛況を取り戻す。
現在午後五時前。会場は真っ赤な夕日に縁取られて目にも鮮やかな朱に染まっていた。

【8月12日夕方・九州王者出陣・迎え撃つクイズ王・サッチャンは人気者・続く】












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