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ゲーム二次創作中心ブログ。 更新まったり。作品ぼちぼち。

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電話は深夜突然に。
*

深夜二時過ぎ、携帯電話の鳴動音でもっさりと目を醒ます。
半開きにしかならない瞼をこじ開け、枕元の充電器からケータイをむしり取ると「着信」表示に慌ててリダイヤルする。
一発で目が冴えたが、寝起きで「もしもし」の声が上手く出ない。
先方は察したようで「起こしてすまないな」とバツが悪そうに静かに囁く。

「?…あれ、珍しい。マーティ?どうしたの?今どこから」
『日本の東京からだ。久しぶりだな、イオリ』
純正ゲルマン系ドイツ人とは思えない流暢なバリトンボイスの日本語。
にわかに信じがたいが本物だと分かって、庵は跳ね起きたベッドの上できょとんと目を丸くする。
「今の時間にはニューヨーク支社でバリバリ働いてるはずじゃないっけ。奥さんとマリーは?出張?」
『まあ、出張みたいなもんでね、急遽来日してる。マリーはまたプールの予定が延びてぐずるだろうが、仕方ない。帰ったらしっかりカミさん共々サービスに励むとするさ。…イオリ、心して聞け。アーサーが倒れた』
「え?」
『避暑地の軽井沢で軽度の発作を起こしたらしい。アーサー大附属病院へ移送されて一時ICUに入っていた。今は回復している。おそらくは夏病みだろうが、彼がお前を呼んでいる。アーサーももう歳が歳だ、万一があってはならない。速やかに帰京を願う』
「心得た。朝一で戻る。つっても昼過ぎるだろうけど、いいかな」
『充分。アーサーもお前の顔を見れば元気を出すだろう。ミミーも来日早々祖父の顔色を見るなり安心したようで、すぐにもお前との会食をご所望だ』
「ミミーまで来てたのか!…そうか、じゃあ超特急で帰らないと。もうどうせ予約済みなんだろ?」
『勿論。今晩十八時』
「了解。では博多のひよ子とご当地キティグッズを持参していくと伝えて」
『俺のマリーとカミさんの分も忘れないでくれよ。では、また後で』

*

始発の電車に乗る旨メールをしたため、五時過ぎに晶の携帯へそっと送信しておく。
と、十分後に返信が戻ってきた。
晶にだけ伝えておけばいいやと思ったが、全員飛び起きてしまったらしい。
悪いことしたなと思ったが、荷造りを済ませるとやむなく晶たちのいる部屋へと向かう。

「…と、こういう訳で急いで戻らないとならなくなってさ」
今朝の会話の大半を省き、学長の不調だけ改めて伝えると、夏彦の眉間に皺が寄る。
「急病での呼び出しとは、穏やかじゃないな。高速でトンボ返りするか?」
暗に車で東京へ戻ればいい、と言わんとする夏彦を「高速使っても遅くなるよ」とやんわり制する。

「俺はわざわざ呼び出し喰らったから、きっと何かあったんだと思う。近況を講習のレポートに書き添えて送ってたからみんなと一緒にいるのは知ってるはず。その上で戻れって言うのは、多分俺に個人的な用があるんじゃないかな」
「はうう、先輩は特待生だから仕方ないですね…。残念ですけど、ここでお別れ…いや、もうここで全国の旅も終わりという事に?」
「いや、どうせここまで来たんだし、みんなだけでも南九州の大会覗いてくればいいんじゃない?」
言い出しっぺに気遣う必要はないよ、と敦を諭すも、敦は敦で名残惜しそうな申し訳なさそうな困り顔で眉を垂れている。
「俺の代わりに、ってお願いしてもいい?」
「あ、ずるい言い回し」
「でも、身内が直に観戦したレポートが一番信用出来るし。な、晶。もういっぺん代役ダメ?」
むう、と唸った後「ずるい」ともう一度言い募るも、晶もそれ以上何も言わなかった。
「それじゃよろしくな。俺、もう行かないと」
「ネーデルテンボス駅から始発で移動するのか?」
「いえ、タクシー拾って諫早駅経由で特急乗って博多駅目指します」
「それなら、長崎空港まで直で送っていってやる。その方が早いだろ」
「ヒゲ先輩出来れば空路じゃない方が」
「お前なぁ…超特急で戻るんだろ?新幹線だと何時間かかると思ってんだよ阿呆」
こんな時まで何を悠長なと夏彦が目を三角にすると、庵はバツが悪そうに「飛行機勘弁です」とぼそりと呟く。
「すみません先輩、庵はこういう奴ですから。アカデミックの時も副賞の海外旅行でのフライトをギャン泣きするほど異常に嫌がって、スタッフが見かねて翌年の景品を国内旅行に変更したほどの高所恐怖症男ですから」
「それ俺のせいじゃないお」
「いや君のせいだから。絶対そうだから」
「オッケー了解した。では速やかに諫早駅に送ってやろうな」

チェックアウト時間には早かったが、フロントに事情を説明し、荷物担いで全員でエントランスに向かうと、エレベータロビーから駆け足で背中を追う足音が聞こえて振り返った。

「杏奈さん!?」
「す、すみません、皆さんもうすぐにお帰りになると聞いて…」
珍しくハアハアと息をきらして駆けつけた杏奈に、皆が皆意外そうに目を丸くし彼女に歩み寄る。
「杏奈さん、どうして」
「さっき晶さんから先に出る旨メールいただいて…私は最寄りの駅から始発で帰るつもりでしたので、丁度起きたところでビックリしちゃって。お見送りしなくちゃって」
「いや、そんな大袈裟な」
「ゴメン杏奈さん、一応知らせておけばと思ってメールしただけだったんですが」
「いえ、有り難うございます。私もこのままお別れは名残惜しいなって思ってたので…」

言いかけて、晶と互いに目を合わせて俯く。
僅かな逡巡の後、庵がおもむろに「乗ってけば?」と口を開く。

「どうせだし、やっぱ俺は電車で諫早駅まで出て始発の特急乗って帰るよ。みんなは佐世保まで行ってくればいいんじゃね?俺の代わりに佐世保バーガーとレモンステーキ食ってくるといいよ。それも後で感想聞かせて」
「ええっ、そうなるの?」
どぎょ、と強張った表情のままの晶に庵は「何びっくりしてるの」と歯を見せて笑う。
「でも、それでは庵さん相当な遠回りに…」
「杏奈さんいいのいいの。ここからなら佐世保の方が近いし、どっちみち俺の選択肢に飛行機ないから新幹線で東京となると午後着は変わらないしなあ。それなら駅弁たらふく食って寝ながら帰るよ。かしわめしとかめんたいことか」
その方が爆睡出来て頭痛も良くなりそうだし、と庵に念入りに念押しされて杏奈も頷く他ない。
申し訳なさそうに頭を下げると、「本当にいいんでしょうか?」と逆に念押ししてくる。
「杏奈さんは交通費の節約になるし、晶君は色んな意味で美味しいお」
「その色んな意味ってどういう意味だよ!」
不意討ちだったようで耳まで真っ赤にして怒る晶に、庵のみならず夏彦と敦も、そして杏奈も笑顔を隠せない。
傍らでは、庵が目を細めて二人を眺める。
香川の時のお返しが出来たようで、悪い気はしなかった。

【8月15日早朝・そろそろお別れの時間・続く】












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