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ゲーム二次創作中心ブログ。 更新まったり。作品ぼちぼち。

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そして股旅へ。
*
「それじゃあ、またな」
手を振って車を見送ると、庵はテンボス駅のプラットホームでベンチに腰掛け一息つく。
既に蒸し暑さを感じる駅の構内は、快晴の朝日が差し込んで眩しい。
人気は無く、六時前の時点で影の濃淡がくっきりとアスファルトに映える。
遠くセミがしゃわしゃわと輪唱している。
夏ももう佳境だ。けだるいほどの熱気が、半月後には秋風に変わる。

一人ぽつんと駅に座り、ようやく自分の時間を取り戻したように思う。
これから、人生の大半を占めるであろう孤独。
それも、今だけは悪くないなと思えた。
ノースリーブのコットンシャツが汗ばんで首や鎖骨に張り付く。東京に着いたら着替えないと。
フォン…と遠くから低い唸りが聞こえた。
見る間に陽光を眩しく照り返すメタリックな車体が駅に滑り込んでくる。
始発電車に乗るのは、高三のアカデミッククイズ予選以来だと思い至り、不思議なものだと眼を細める。
きまぐれで始めて、唐突に終わって。あのクイズ番組の時と同じなのに、今は心が軽い。
全てと言わないまでも、理解し、理解され、分かり合おう強調しあおうとしてもらえる。
その厚意が、どれだけ己の孤独を癒してくれたか分からない。きっと、相手もそんなに深く考えてはいないのだろう。
だから。
この距離感がずっと続けばいいなと思いながらも、それはきっと夢想であり理想でしかないと鼻で笑う自分もいる。
だけど。
信じていたかった。高校時代、遂に分かり得なかった、理解されずに終わった苦い思い出を、この夏の思い出が上書きし続けてくれるようにと、どこかで祈るように願っている。
それは、決別や嫉妬や誤解中傷そして悲しみの生まれない場所を生み出す、信頼の絆。

北海道の朝宮夫人は元気だろうか。また御礼しとかないと。
秋田の茜先輩んちも心配だけど、新潟の敦の弟はどうだろう。
少しは自立したのかな。
今度神戸に行くときは、典生さんたちと神戸牛食べたいな。
俺ももう少し本腰入れてデイトレードに励もうかな。
岡山…にも、いつか自発的に帰れる日が来るのかな。
晶んちのおばさんは嫌いじゃないんだけどな。
兄貴は苦手だけど。むしろおっかないけど。
…香川は、いずれ別の意味で訪問出来るようになりたい。うん。是非。
その時にはスーツ新調しよう。必要ならば手打ちうどんの練習も。
九州楽しかった。ごはん美味しかった。みんな優しかったし。

思い出がたくさん。嬉しいがたくさん。
こんなに幸せなこと、きっとない。

酔い止めで眠たくなってきた。
少し眠ろう。
鈍行の旅だ、焦る必要はないのだから…。
とろんと痺れるような眠気に身を任せ、瞼を閉じる。
瞼の上に刺すような夏の日差しを感じながら、日除けは降ろさずそのまま寝入ることにした。

【8月15日・庵熟睡・その頃他のメンバーは・続く】












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