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ゲーム二次創作中心ブログ。 更新まったり。作品ぼちぼち。

( ´ω`)「時には派手に行きますお」

いつもお越しいただき有り難うございます、ハチヤです。
今月末はたるあん企画第一弾を二日連続でお送りいたします。

今回は、のいや兄さんのお題から。
gdgd系ゆるふわ(?)大学生デイズをお楽しみいただけたら幸いです。

【追記からどうぞ】
「言えないありがとう」

*

「それで、ワンクレジット分の貸し、と」
ふーん、と極めて気乗りしない話題だったため適当に受け流していると、目の前の後輩は童顔を真っ赤にして「大事なことじゃないですか」と細い目を吊り上げた。

「僕、貸し借りは嫌いなんです。親にも後々大きなツケになるような真似はするなと」
「…何というか、お前さんは荒川の河川敷に友達でもいそうな性分してるよなぁ」
「どういうことです?」
「融通が利かないって意味」

後輩はもういいですよ、と頬を膨らませて、いかにも乳臭さそうな乳白色のカフェオレを喉を鳴らして飲みほす。
ウチの大学のカフェテリアで、女性一番人気のミルクたっぷりカフェオレ。
男性陣にはミルクが多すぎて眠気覚ましにならない、と不評なようだが、この入学半年の糸目なお坊ちゃんに言わせると「都会の味」がするそうで。
外見が中学生レベルの幼な顔な上、中身は聡いが口ぶりが舌足らずなため余計に子供っぽく感じられる。
とどめに言動やコミュニケーション能力が見かけ相応の幼さなので、大学内のゼミでも好き嫌いが分かれているらしい。
良く言えば真面目一辺倒で実直、悪く言えば偏屈で頑固。
旧家の一人息子と聞いているが、長男としての自覚はあるようだが人生経験も人との接し方も万事この調子である。
三歳年上の俺に対しても、年長者を敬うよりも己の正当性を蕩々と説いてくるこの愚直な幼稚さを何と言おうか。

あれだ。
自分の物差しが万国共通だと思っていやがる。
それを愛い奴と思うか、うざいと思うかで単純に評価が分かれる。
口幅ったい事を言って無理くりにでも納得させられるような強面であったならまた評価も変わっただろうが、この甘ちゃんなベビーフェイスには己の無精ひげでは威厳も何もあったものではなく、理詰めも隠喩も遠まわしな引用もなかなか通用しない。直球勝負に出ればすぐにカッカきやがるのでなおのこと面倒くさい。理屈っぽい奴は生き難い世の中になったものだ。
だがしかし、そんな後輩を珍しく愛い奴と思っている自分は、おそらく少数派であろう。
万年古びたウニクロシャツ着てるむさ苦しい年長理系留年生に好かれたくもなかろうとは思うが、毎日のように愚痴りに来ているのを見ると、ゼミ内に友達がいるのかさえ怪しい。こうして要らん世話を焼くのもそろそろ仕舞いにしたくはあるが、共通の趣味を持っている稀有な存在でもあり、ついつい老婆心で呼び止めてはつまらぬ討論をし、後輩の顔色が赤くなったり青くなったり冴えなくなる頃合を見計らっては、まあ今日はこのくらいで、とカフェオレをご馳走するのが日課になりつつあった。
「ところで、最近そっちの成績はどうなんだ」
「…まあまあ、です」
「俺もまあまあ、だなあ」
またまたそんなことを、と後輩は唇を尖らせて不満げにぶーたれる。
論文あるからそんなに行けねえのよ、と白髪ばかりが目立つ五分刈頭を掻き毟ると、店内ランキング一位のくせに、と率直な不満をぶつけられたのでにんまりと笑って見せる。
オンラインのクイズゲーム仲間。
同じ大学内で、やっと見つけた一人目である。
…つうか、大学の目の前にゲーセンがあるのに、ゲームの話をしてる奴らは何でポップンやユビートやらの音楽ゲームばっかりしてるんだか。俺はせいぜい太鼓叩くのが関の山だが、婦女子はあっちの方が楽しいらしい。大抵男女仲良くキャーキャー…というよりは、いつも同じポニーテール女子が音速の域でバカスカ画面に「COOL!」「COOL!」「EXCELLENT!」の羅列を並べているのを見て以来、俺が踏み入れても詮ない世界である事をプレイ前に悟った。
余談だが、その少女は俺達と同じクイズゲーでやはり音速の域で早押しボタンを押しているが…。

話が逸れた。
そうした訳で、俺もゲーセンでは見知った顔だがあまり知り合いが出来ない。
そういやお前もゲーセンで顔見るよね、と話を振られても俺はクイズしかしてねえのってんだ。
その上携帯ゲーム機すら持ってないので、モンハンすら人生の範疇外だ。
モバゲーなんぞ、パケット定額すら惜しんで入っていない身上では推して知るべしである。
こないだ見たロン毛の奴なんぞ…。

…また話が逸れた。
で、その後輩の話。

クイズゲームと言っても、種類は大まかにざっくりで二つ。
QMAかアンサーアンサー。
知らない奴はクイズの早押しボタンがついてないのとついてるの、で覚えておくといいだろう。
俺も後輩も早押しボタンついてる側を専ら遊んでいる。
大学目の前のゲーセンも考えるもので、あまり回ってなかったり、とっつきにくそうなジャンルのゲームは優先的に週代わりのクレジットサービスをつけている。
先週の週末、三日間期間限定ワンプレイ百円二回デーがあり、その際にこの童顔後輩君は見知らぬ女性ゲーマーにワンクレジットおごってもらったので、またいつかお返しした方がいいだろうかと尋ねてきたのだ。
なので、至極真面目に「五円チョコ十枚持ってけ」と答えたらぶちぎれられて、今に至っている。
俺としては、ジュース奢られるよりずっと嬉しいし気負いもないしで非常に良い妙案と思ったのだが。

「普通、まずはお礼からでしょう。それに、チョコやら駄菓子で喜ぶとも限りませんよ?女性はスイーツ一つでもうるさいんだそうですから」
「だったら、五十円分の貸しでルイヴィトンでも贈るってのか?」
「それは飛躍しすぎです」
「つうか、それも気にしすぎじゃねえか?多分、もう一回やってる時間的余裕がなかったとかってだけだろ」
「でも、返さずじまいじゃ気色悪いじゃないですか」
そして最初のループに戻る。そろそろ三十分が経過する。帰りたい。
「それならなあ…あれだ、最近流行のダブルスにでも誘えよ?僕が誘導します的な」
「相手が全国王者だったらどうするんですか!それになんと言いますか、その、そういう下心と勘違いされそうなお返しはいかがなものかと」
「え?下心はまるでねえとか、本気で言っちゃうってかお前は」
「それは」
ほれまた黙る。
俯いてても顔が真っ赤だ。丸分かりじゃねえかよってえの。
ありがとうございました、って言うだけじゃねえのかよって。
嗚呼。

これだから今時の十九歳は困る。

【後半へ続く】












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