昨日の続きでございます。
【追記よりどうぞ】
【追記よりどうぞ】
*
「でさ、こないだ中学生みたいなチビ太がいたから残ってたワンクレジット譲ったんだけどさ」
「うんうん」
「なーんかさ、それからゲーセン行く度そいつの影がチラチラ見えるんだよ」
ストーカー?とけげんそうに親友が尋ねてきたので、「確認した」とそっけなく答える。
「あら、それならもう解決済みじゃないの」
「それがさあ」
社会人になって一年。
仕事に追われ、男には縁の無い生活を過ごしている。
友人と週二回は飲んだくれている毎日だが、楽しみがあるので問題ない。
親友、と言ってもあたしたちはお互いに勤め先が違う。
大学卒業後は疎遠になるかと思っていたけど、就職先が目と鼻の先だったため、毎日ランチ、時々夜ごはんを一緒に食べては愚痴ったりワイン空けたりしている。小学生時代からの付き合いが社会人になってまだ持続しているのは稀有な縁だろう。
お互い付かず離れずだが、空気みたいに自然な距離感で話が出来る。
ベトベトしてない関係は、対人ストレスでくたびれる社会人には一番気を楽に出来る距離感だと思う。
先月セミロングにイメチェンしたこの親友には自分の趣味の話もくどくない相槌で聞いてもらえるため、ホイホイと喋ってしまう。
「こないだ面と向かって来たんだよ、保護者みたいなヒゲのオヤジと」
「おお、やっぱり学生さんかあ」
遂に彼氏フラグ来たかと思ったのに、と茶化す親友に話の途中だと唇を突き出す。
「でさぁ、何の用かなーと期待やら警戒やらしてたら、50円玉を差し出してくる訳よ。50円。こないだのクレサで貰った分返したいって」
「それはまた律儀ね」
「いや…話聞く分にはそう思うかもしれないけど、実際保護者同伴で来られたら引くよ?あたしは引いた」
「あらやだ自分でフラグへし折ったの」
モンチッチみたいだと揶揄されるベリーショートの髪を照れ隠しにいじると、勿体無い、と白けた顔でワインを煽る親友に、ゲーマー感覚で語るなっつうの、と渋い面をしてみせる。
流行にもルーズソックスにも縁がない、誠に清く正しくそっけのない青春を送ったあたしにとって、この親友のバランス感覚はかなり羨ましいものがあった。
クラス内ではファッショントレンドのリーダー、部活内では半帰宅部ながら課題は優秀な美術部員。
しかしてその実体は重度ゲーオタであったという。
彼女との付き合いでゲーセンに入り、暇つぶしに自分でも出来そうなクイズゲームをプレイして、今では自分の方がはまりこんでいる始末。偶然にも、初期ロケテスト版プレイからそのクイズゲームの虜になり、今やバージョンアップするごとに足繁く一人でゲーセンに通っている。
で、誘った当の親友は曰くボカロ系音ゲーに忙しいとのことで、一緒に入って別々に帰る事も多い。
まあ、友人だから同じもの、というのも小学生の発想だと思う。全部同じ趣味の人間ばかりでは窮屈を感じる、と以前彼女に言ったら同感、と即答され困惑したものの、その率直さが好きでつるんでいる。
その友人も来週は新作乙女ゲーが発売だから自重しないとねー、などと言っているので、来月からは飲み会自体も減りそうな悪寒もとい予感。それはそれで良いのだけど。
「あそこのゲーセンに行きづらくなったなあ」
「別の所に行けばいいじゃない」
「あそこのクレサが一番お得だったんだよ」
「まあまあ百円をそうケチらなくても」
「いやいやいやケチるって!タワー登る時とか絶対後で財布の中身に響くんだし」
「そこまで登らなきゃいいのに、って言うだけ野暮よね。でも、好きで突っ込んだ金額に泣くのは野暮天じゃない?」
私は今まで積み重ねてきたゲームの攻略データと最強装備データを得るために突っ込んだ全てを惜しんだ事は無いわ、と親友はキッパリと豪語する。
「あたし、そこまで開き直れないよ」
「開き直ってないわよ。ゲーマーの心得じゃない?死して屍拾う者無し的な」
「大江戸捜査網か!」
「ほらそうやってすぐに答えが出せるようになったじゃない。前は結構あーだったかこーだったかて愚図愚図してたのに」
「あ…そういやそうか」
「そりゃそうよ。だけど、即決になったらなったで余計にもったいなかったかなあ」
「何が」
「後五年したら立派なジュノンボーイになってたかもしれないのにぃ」
「ない。第一ジュノンな面じゃなかったし」
「でなくたって、五年たったら一皮剥けていい男になってかもしんないよ?」
更に「絶対ない」と断固強調しビールを煽る。
「それは天地がひっくり返ってもない。タンカ切っちゃったし」
「どんな」
「一人で来いって。保護者連れで来るな恥ずかしいっつって」
「あーらら」
照れるといっつもそうやって逆ギレ気味な応対して後で後悔するよね、としたり顔で言われて返す言葉もない。
確かにそうだ。そうだけど、今回は。
「もう続きはないからさ。気にしないよあたしは」
「いや、私に自己弁護してる時点でもう後悔してるから。結構好みだったんじゃないの?」
「ちがーう。それは無い。あたしはオリバーカーンとセガールとマキダイ兄さんが好みだと何回言ったら」
「相変わらず朝七時前に某ニュース番組で世界征服狙ってる秘密結社の幹部みたいな趣味ね。それ何ネタのつもり?」
「いやいやいやだからギャグじゃないってば!」
結局、否定に否定を重ね続けてその日は終わり、週末は行き辛いと言いつつクレサ目当てであのゲーセンに向かっている。
進歩がない、と言わないでほしい。
これがあたし、あたしの変わらぬ生き様なのだから。
*
「…結局、お金を返しただけになりました」
「何でえ、何か不満なのかよ」
大不満ですよぅ、と後輩はハコフグのような仏頂面で握ったノンアルコールビールを飲み干す。
例の姉ちゃんに小銭を返すという大仕事を終え、何故か付き添い役になってしまった俺いきつけの飲み屋に連れてきたはいいが、後輩の糸目ボウズは相変わらず眉間に皺を畳んだままだ。
だったら酒でも飲んで、と言いかけて未成年ですと言われてしまい、気まずい空気を漂わせて今に至る。
だったらきどってねえでビールジュースじゃなくてオレンジジュースにしやがれと言いたいが、それをそのまま言えば更に眉間の皺が蛇腹の勢いで増えること請け合いだ。鬱陶しいったらありゃしない。
今日の店一押しと書かれていたホッケの開きを突きながら「じゃあどうしてえのよ」と水を向けると、少し押し黙った後「言えませんでした」とポツリと答えた。
「何が」
「ありがとうございました、と言うのを」
「…」
小学生かよぉ、と情けなくなって泣きそうな声で呻くと、後輩は何を思ったのか「大事じゃないですかぁ!」と思い切り立ち上がって線のような細目を急角度に吊り上げた。
「大事だろうけどよぉ、そりゃ大事だろうけどよぉ!そりゃもう相手だって言わなくたって分かるだろうがっての!」
言わせんなよ恥ずかしい、と怒鳴ると、後輩もゆるゆると着座し「スッキリしません」とハリセンボン並に頬を膨らませる。
「…あのなあ、相手、あの女は多分社会人だ。多分、空気読んでるから。お前の考えとかちゃんとお見通しだったと思うから。それにお前が思ってるより社会常識ありそうだったじゃねえのよ」
「そうでしょうか。何だか不満げでしたが」
「そりゃお前だろうが。保護者同伴で来るなとか言われて、もう俺ぁ顔から活火山レベルだったぜ」
「僕の方が恥ずかしかったです!」
「そこ張り合うなよ!そこは張り合うポイントじゃねえ!要はだ、お前どうしたいの」
「改めて、一人で行ってきます」
「は」
「有り難うございました、と言わないと、どうにもスッキリしません!こう…ムラッとすると言いますか」
「あー、そりゃそうかもなー。あの姉ちゃんチチでかかったもんな」
「いやらしい意味じゃありません!もう、どうして先輩はそんなに不純すぎるんですか!不潔です!」
「…」
お前がピュア…もといガキすぎるんだよ、と言いたい衝動をグッと堪えて、ホッケのほぐし身を口に詰め込む。
「なので、僕はまたあの人に会ったら、きちんと御礼を言いたいと思います。先輩も良ければ気をつけておいて下さいね!」
でも、いやらしい意味じゃありませんからね!と念押しされて、ああもう勝手にしてくれよと言いたくなった。
ありがとう。
この一言を言うためだけに。
これから後輩はしばらくの間足繁くあのゲーセンに通う事になった。
色々と七面倒くさい問題と、どうでもいいような後日談付きのトラブルを巻き起こして。
が、それはまた別の、話だ。
【次回更新:追いかける、追いかける に、続く】
「でさ、こないだ中学生みたいなチビ太がいたから残ってたワンクレジット譲ったんだけどさ」
「うんうん」
「なーんかさ、それからゲーセン行く度そいつの影がチラチラ見えるんだよ」
ストーカー?とけげんそうに親友が尋ねてきたので、「確認した」とそっけなく答える。
「あら、それならもう解決済みじゃないの」
「それがさあ」
社会人になって一年。
仕事に追われ、男には縁の無い生活を過ごしている。
友人と週二回は飲んだくれている毎日だが、楽しみがあるので問題ない。
親友、と言ってもあたしたちはお互いに勤め先が違う。
大学卒業後は疎遠になるかと思っていたけど、就職先が目と鼻の先だったため、毎日ランチ、時々夜ごはんを一緒に食べては愚痴ったりワイン空けたりしている。小学生時代からの付き合いが社会人になってまだ持続しているのは稀有な縁だろう。
お互い付かず離れずだが、空気みたいに自然な距離感で話が出来る。
ベトベトしてない関係は、対人ストレスでくたびれる社会人には一番気を楽に出来る距離感だと思う。
先月セミロングにイメチェンしたこの親友には自分の趣味の話もくどくない相槌で聞いてもらえるため、ホイホイと喋ってしまう。
「こないだ面と向かって来たんだよ、保護者みたいなヒゲのオヤジと」
「おお、やっぱり学生さんかあ」
遂に彼氏フラグ来たかと思ったのに、と茶化す親友に話の途中だと唇を突き出す。
「でさぁ、何の用かなーと期待やら警戒やらしてたら、50円玉を差し出してくる訳よ。50円。こないだのクレサで貰った分返したいって」
「それはまた律儀ね」
「いや…話聞く分にはそう思うかもしれないけど、実際保護者同伴で来られたら引くよ?あたしは引いた」
「あらやだ自分でフラグへし折ったの」
モンチッチみたいだと揶揄されるベリーショートの髪を照れ隠しにいじると、勿体無い、と白けた顔でワインを煽る親友に、ゲーマー感覚で語るなっつうの、と渋い面をしてみせる。
流行にもルーズソックスにも縁がない、誠に清く正しくそっけのない青春を送ったあたしにとって、この親友のバランス感覚はかなり羨ましいものがあった。
クラス内ではファッショントレンドのリーダー、部活内では半帰宅部ながら課題は優秀な美術部員。
しかしてその実体は重度ゲーオタであったという。
彼女との付き合いでゲーセンに入り、暇つぶしに自分でも出来そうなクイズゲームをプレイして、今では自分の方がはまりこんでいる始末。偶然にも、初期ロケテスト版プレイからそのクイズゲームの虜になり、今やバージョンアップするごとに足繁く一人でゲーセンに通っている。
で、誘った当の親友は曰くボカロ系音ゲーに忙しいとのことで、一緒に入って別々に帰る事も多い。
まあ、友人だから同じもの、というのも小学生の発想だと思う。全部同じ趣味の人間ばかりでは窮屈を感じる、と以前彼女に言ったら同感、と即答され困惑したものの、その率直さが好きでつるんでいる。
その友人も来週は新作乙女ゲーが発売だから自重しないとねー、などと言っているので、来月からは飲み会自体も減りそうな悪寒もとい予感。それはそれで良いのだけど。
「あそこのゲーセンに行きづらくなったなあ」
「別の所に行けばいいじゃない」
「あそこのクレサが一番お得だったんだよ」
「まあまあ百円をそうケチらなくても」
「いやいやいやケチるって!タワー登る時とか絶対後で財布の中身に響くんだし」
「そこまで登らなきゃいいのに、って言うだけ野暮よね。でも、好きで突っ込んだ金額に泣くのは野暮天じゃない?」
私は今まで積み重ねてきたゲームの攻略データと最強装備データを得るために突っ込んだ全てを惜しんだ事は無いわ、と親友はキッパリと豪語する。
「あたし、そこまで開き直れないよ」
「開き直ってないわよ。ゲーマーの心得じゃない?死して屍拾う者無し的な」
「大江戸捜査網か!」
「ほらそうやってすぐに答えが出せるようになったじゃない。前は結構あーだったかこーだったかて愚図愚図してたのに」
「あ…そういやそうか」
「そりゃそうよ。だけど、即決になったらなったで余計にもったいなかったかなあ」
「何が」
「後五年したら立派なジュノンボーイになってたかもしれないのにぃ」
「ない。第一ジュノンな面じゃなかったし」
「でなくたって、五年たったら一皮剥けていい男になってかもしんないよ?」
更に「絶対ない」と断固強調しビールを煽る。
「それは天地がひっくり返ってもない。タンカ切っちゃったし」
「どんな」
「一人で来いって。保護者連れで来るな恥ずかしいっつって」
「あーらら」
照れるといっつもそうやって逆ギレ気味な応対して後で後悔するよね、としたり顔で言われて返す言葉もない。
確かにそうだ。そうだけど、今回は。
「もう続きはないからさ。気にしないよあたしは」
「いや、私に自己弁護してる時点でもう後悔してるから。結構好みだったんじゃないの?」
「ちがーう。それは無い。あたしはオリバーカーンとセガールとマキダイ兄さんが好みだと何回言ったら」
「相変わらず朝七時前に某ニュース番組で世界征服狙ってる秘密結社の幹部みたいな趣味ね。それ何ネタのつもり?」
「いやいやいやだからギャグじゃないってば!」
結局、否定に否定を重ね続けてその日は終わり、週末は行き辛いと言いつつクレサ目当てであのゲーセンに向かっている。
進歩がない、と言わないでほしい。
これがあたし、あたしの変わらぬ生き様なのだから。
*
「…結局、お金を返しただけになりました」
「何でえ、何か不満なのかよ」
大不満ですよぅ、と後輩はハコフグのような仏頂面で握ったノンアルコールビールを飲み干す。
例の姉ちゃんに小銭を返すという大仕事を終え、何故か付き添い役になってしまった俺いきつけの飲み屋に連れてきたはいいが、後輩の糸目ボウズは相変わらず眉間に皺を畳んだままだ。
だったら酒でも飲んで、と言いかけて未成年ですと言われてしまい、気まずい空気を漂わせて今に至る。
だったらきどってねえでビールジュースじゃなくてオレンジジュースにしやがれと言いたいが、それをそのまま言えば更に眉間の皺が蛇腹の勢いで増えること請け合いだ。鬱陶しいったらありゃしない。
今日の店一押しと書かれていたホッケの開きを突きながら「じゃあどうしてえのよ」と水を向けると、少し押し黙った後「言えませんでした」とポツリと答えた。
「何が」
「ありがとうございました、と言うのを」
「…」
小学生かよぉ、と情けなくなって泣きそうな声で呻くと、後輩は何を思ったのか「大事じゃないですかぁ!」と思い切り立ち上がって線のような細目を急角度に吊り上げた。
「大事だろうけどよぉ、そりゃ大事だろうけどよぉ!そりゃもう相手だって言わなくたって分かるだろうがっての!」
言わせんなよ恥ずかしい、と怒鳴ると、後輩もゆるゆると着座し「スッキリしません」とハリセンボン並に頬を膨らませる。
「…あのなあ、相手、あの女は多分社会人だ。多分、空気読んでるから。お前の考えとかちゃんとお見通しだったと思うから。それにお前が思ってるより社会常識ありそうだったじゃねえのよ」
「そうでしょうか。何だか不満げでしたが」
「そりゃお前だろうが。保護者同伴で来るなとか言われて、もう俺ぁ顔から活火山レベルだったぜ」
「僕の方が恥ずかしかったです!」
「そこ張り合うなよ!そこは張り合うポイントじゃねえ!要はだ、お前どうしたいの」
「改めて、一人で行ってきます」
「は」
「有り難うございました、と言わないと、どうにもスッキリしません!こう…ムラッとすると言いますか」
「あー、そりゃそうかもなー。あの姉ちゃんチチでかかったもんな」
「いやらしい意味じゃありません!もう、どうして先輩はそんなに不純すぎるんですか!不潔です!」
「…」
お前がピュア…もといガキすぎるんだよ、と言いたい衝動をグッと堪えて、ホッケのほぐし身を口に詰め込む。
「なので、僕はまたあの人に会ったら、きちんと御礼を言いたいと思います。先輩も良ければ気をつけておいて下さいね!」
でも、いやらしい意味じゃありませんからね!と念押しされて、ああもう勝手にしてくれよと言いたくなった。
ありがとう。
この一言を言うためだけに。
これから後輩はしばらくの間足繁くあのゲーセンに通う事になった。
色々と七面倒くさい問題と、どうでもいいような後日談付きのトラブルを巻き起こして。
が、それはまた別の、話だ。
【次回更新:追いかける、追いかける に、続く】
がんばったwww
しかも続いたwwww
ポップンねー、自分COOLとか出せないです本当。COOL判定出るのは確かEXステージかEXPERTモード(ライフ減算制でより正確な押しが求められる)なので。
キャラを生かした話でどうなるのかと続きを楽しみにしております。( ・∀・)ノシ
2011.10.31 22:49 URL | の #CqAjKjhU [ 編集 ]
早速のコメサンクスですー。
おいらがんばったwwwwwwww
でも続きもっと頑張りますwwwwww
次回もよろしくお願いいたしますよ!( ・∀・)ノシ
2011.10.31 23:42 URL | ハのじ #- [ 編集 ]
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