巡り会う影。
「………大丈夫?どこか痛い?」
「えっ…ううん、君、僕が見えるの?どこか苦しい?」
「うん…ごめん…頭が重くてはっきりしないけど…君こそどうしたの?迷子?」
「う、うん…そんな、ところ…君が、こんなところに倒れていたから、心配になって…」
「そう、ありがとう…でも、ここ、どこだろう…」
重たそうに上半身を起こすと、双葉はファルロスと向き合い、そっと頭を撫でる。
おでこ、頬を少し冷たい指先で撫でると、双葉は彼の目元を静かに拭う。
「………あ」
双葉の指先に少し付いた、水滴を見てファルロスは少し驚いていた。
「…怖かったんだね。もう、泣かなくていいよ」
手先をシャツの裾で拭うと、双葉は弱々しく微笑んでファルロスを優しく抱きしめる。
ふわり、と彼の体温と優しい匂いが幼子を包む。
胸の奥から強い思いが込み上げてきて、彼の身体にしがみつく。
「随分身体が冷えてる。寒かったんだね…僕、上着着てたらよかったんだけど、これしかないみたい…」
「………」
「君も、あいつらに捕まったの?にしても、僕…どうしてこんなところに…あいつらは?知らない?少し怖い感じの、男の集団…」
「………」
「ああ、ごめん…怖がってるのに、そんな事聞いても良くないよね…しばらく、こうしてようか」
辛うじて頷くと、双葉は何も言わず強く抱きしめ、ファルロスと寄り添って風の来ない物陰へと移動し肩を寄せ合う。
「…そう。気がついたらここにいたんだ。僕と同じだね」
「うん…」
「…寒くない?平気?」
「…う、うん…」
「影時間って知ってる?今、こうして体験している、おかしな時間の事なんだけど…」
「…う、うん…」
「そう…なら、時間が過ぎるのを待とう。それから、警察に行ってお父さんとお母さんに連絡してもらおう。ね?」
「…いない」
「え…?」
あ、と気まずそうに口を閉ざす双葉の胸元に、ファルロスはたまらず顔を埋める。
ほしい。ほしい。もっとほしい。
やさしい、やさしい、だいすきなぬくもり…。
「僕には…おとうさん…いない…おかあさんは…」
彼に寄り添いながら、ふと顔を上げると朽ちたビルの頂に濃緑色の満月が煌々と輝いている。
「おかあ、さんは…」
彼を見上げる。目と目がぶつかる。
黒く、綺麗な瞳。
天上の母よりも恋しい、もっともっと、狂おしいほど独占したい、彼の声を、姿を、心を…。
ぼくの、たいせつな………ママ。
「おかあさん、どうしたの?何かあった?」
双葉がそう問いかけるのと、同じタイミングで…どこからか、なにかが、二人の耳元に聞こえた。
「えっ…ううん、君、僕が見えるの?どこか苦しい?」
「うん…ごめん…頭が重くてはっきりしないけど…君こそどうしたの?迷子?」
「う、うん…そんな、ところ…君が、こんなところに倒れていたから、心配になって…」
「そう、ありがとう…でも、ここ、どこだろう…」
重たそうに上半身を起こすと、双葉はファルロスと向き合い、そっと頭を撫でる。
おでこ、頬を少し冷たい指先で撫でると、双葉は彼の目元を静かに拭う。
「………あ」
双葉の指先に少し付いた、水滴を見てファルロスは少し驚いていた。
「…怖かったんだね。もう、泣かなくていいよ」
手先をシャツの裾で拭うと、双葉は弱々しく微笑んでファルロスを優しく抱きしめる。
ふわり、と彼の体温と優しい匂いが幼子を包む。
胸の奥から強い思いが込み上げてきて、彼の身体にしがみつく。
「随分身体が冷えてる。寒かったんだね…僕、上着着てたらよかったんだけど、これしかないみたい…」
「………」
「君も、あいつらに捕まったの?にしても、僕…どうしてこんなところに…あいつらは?知らない?少し怖い感じの、男の集団…」
「………」
「ああ、ごめん…怖がってるのに、そんな事聞いても良くないよね…しばらく、こうしてようか」
辛うじて頷くと、双葉は何も言わず強く抱きしめ、ファルロスと寄り添って風の来ない物陰へと移動し肩を寄せ合う。
「…そう。気がついたらここにいたんだ。僕と同じだね」
「うん…」
「…寒くない?平気?」
「…う、うん…」
「影時間って知ってる?今、こうして体験している、おかしな時間の事なんだけど…」
「…う、うん…」
「そう…なら、時間が過ぎるのを待とう。それから、警察に行ってお父さんとお母さんに連絡してもらおう。ね?」
「…いない」
「え…?」
あ、と気まずそうに口を閉ざす双葉の胸元に、ファルロスはたまらず顔を埋める。
ほしい。ほしい。もっとほしい。
やさしい、やさしい、だいすきなぬくもり…。
「僕には…おとうさん…いない…おかあさんは…」
彼に寄り添いながら、ふと顔を上げると朽ちたビルの頂に濃緑色の満月が煌々と輝いている。
「おかあ、さんは…」
彼を見上げる。目と目がぶつかる。
黒く、綺麗な瞳。
天上の母よりも恋しい、もっともっと、狂おしいほど独占したい、彼の声を、姿を、心を…。
ぼくの、たいせつな………ママ。
「おかあさん、どうしたの?何かあった?」
双葉がそう問いかけるのと、同じタイミングで…どこからか、なにかが、二人の耳元に聞こえた。
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