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ゲーム二次創作中心ブログ。 更新まったり。作品ぼちぼち。

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現実は二次元よりも奇なり、か。

【続きよりどうぞです】


恐る恐る手を離すと、ポニ子さんはキョトンと目を丸くして俺を凝視している。

「あの、悪い。それ誰が聞いてるか分からないから、大きい声は…」
「え?ど、どうしてですか!?だって、空前のブームなのに…」
「だからだよ!…それに、ウケてるのはゲームの作りがいいからで、俺の絵は…」
「いいえ!あの絵だからこそですよ!私、初代からの大ファンで、先生だって分かったときにはもうとっても興奮してしまって…」
力説されて、こそばゆいやら反論しづらいやらで口角がヒクヒクする。
ああもう背後のバカ二人に絶対ばれたよなどうするよ俺と明後日の事を考えていたら、ふと閃いた。

「とすると、もしかして俺と付き合ってくださいってのは絵が好きだから?それはそれで結構失礼な話だと思うが」
「いえ!ぶっちゃけ恋愛感情はまるでありません!勘違いしないでください!」
どキッパリと断言されて、割にグサリとハートキャッチ痛恨の一撃だったように感じたが気にしないぞ俺は。うん…気にしない…。
「…やっぱり…そういう風に受け止められてたんですね…」
途端に落ち込むポニ子に、俺はどうしたもんかと思いつつ「どういう事」と聞き返すと、彼女はむう、と片頬を膨らませて俺をいじましげに軽く睨む。

「私、いつもいつもそうなんです。どんなにもっさりした格好しても、オタクな趣味してても、否定されるんです。容姿で」
「つーと?」
「小学校の頃から、私漫画家目指してました。アニメ大好きで、声優も好きで、だから、相当な年期の入ったオタク…と言いますか、腐女子とも自覚してます。公の場で大声で持論のカップリングを力説するようなマナー違反はしませんが、私の部屋を見せたら多分男の人は重度オタでも引くレベルだと自負しています」
「うおお…」
「ちなみに、ルビー●ーティーゲームは全てコンプリートしております」
「乙女ゲーも学習済みとな」
「はい。…でも、同性でも異性でも友達がいません」
「えっ?何で?」
「異性は私の趣味を似合わないと否定します。同性は、私といると落ち着いてオタ話が出来ないそうです。…最後には、どちらにも言われるんです。見栄えがいいんだから、同人してないでもっとマシな趣味持てば、って。同人や漫画描きのどこがマシでないと言うんでしょうか」
「異性は…つまり、二次元じゃなくて三次元な俺を見ろ的な意味でそういうんだろうな」
「そうです。同性の場合は…私がサークルスペースに座ってると九分九厘男性に口説かれて販売の邪魔になるわ、勧められてレイヤーすると人垣でパニックになるやらで、男性関係のトラブルを吸引してしまって、嫉妬されるか、慰められるのが申し訳なくなるくらいに大損害やご迷惑をかけてしまって自分から離れていくかの二択になるんです」
「そ、そこまでとは…」
「自分でも思います。でも、殿方は皆さん良しにつけ悪しきにつけ、私から私のたった一つの趣味を奪おうとするんです。美人だなんだと褒められても、困るだけです。趣味と引き換えに男性とお付き合いとか、とっても理不尽です」
「あー…だからロン毛にもあんなにきつい物言いで取りつく島も与えなかった訳だ」
「ごめんなさい…でも、私とお付き合いをし始めてもガッカリさせるだけだと思いまして…だからいつも、あんまり目立たないように地味な服装してるんですが」
「いやそれ逆に目立つから。もこもこしすぎてるから」
「すみません…」
「で、俺を鞘当てに」
「いえ」
「?」
彼女は居住まいを正し、背筋を伸ばすと改まった様子で俺をまっすぐに見つめる。
「お願いします!私に先生の代表作『ニンニク大明神』と『チャーシューダレで五千年』を歌わせてください!PVの案も描いて来たんです!いつも思ってたんですが、先生の歌は静止画オンリーじゃもったいないです!私、もっと動画サイトで布教すべく…」
そこで、付き合ってください、という言葉の真の意味を悟る。
そうか、制作にお付き合いください、つう意味だったんだな、超納得。
納得…いや、がっかりするポイントじゃないだろう俺。
いやそれよりも。
「えっ!?えっ…ちょ、おま、まさか…あの歌を歌いたいとか!?萌えも燃えもないラーメンの具材しか歌ってないのに…って、まあ、歌うのは勝手にすればいいけど…いっか、じゃあるなら絵コンテ見せて」
今日一番、モリーンなポニちゃんの目が輝いた瞬間であった。
同人の絡みで、あんな純真な笑顔を浮かべて婦女子に喜ばれたの、きっと俺初めてだと思う。心無しか胸が震えた。匠的な意味で。
「はい!一ヶ月かけて頑張ってきました!」
では早速拝見、とB4スケブをご開帳させていただき数秒。
多分、頭上に「?」マークを何個も吹き出しのごとくゆらゆらさせながら更に数秒。

そしてジャスト一分後、俺はスケブを閉じ丁重に彼女に返却した。
涙目な彼女を見るに、…申し訳ないが、彼女が見かけのみで損をしているのではないことがわかった。

「すまない」
「あ、あの」
「分かった。俺すっごくわかった。悪い事言わないから…同人は買い専門にしろ」
「ええ?!それはイヤです!」
そこで即答かよ!と俺はもう一度ぶちぎれる。
「俺、今日はじめてリアルで「何がなんだかわからない」を体験した」
「え?」
「ごめん、哲学的すぎて俺にはちょっと…シュールレアリズムつうかエッシャーというか、ゴスロリとはまた違うご趣味をお持ちのようで」
「いいえ、ラヴクラフトです」
「クトゥルーでしたか…」
分かる俺も俺だが、リアルで頭も抱えるはめになるとは。
「あ、勘違いしないでくださいね!私、オカルト専門じゃないんです!でも、自らの創作で現代の神話を生み出したラヴクラフト先生は私の生涯の師でありまして」
「いや、これだけだと絶対分からないから!ラーメンが生臭そうなイカゲルゲになってるだけに見えるから!つうかな、これだったら実写でミラマトのプリンセスアンヌのコスでもして歌ってくれた方が手っ取り早」
「それはもっとイヤです!顔出ししたら絶対リアルで変な人に凸されます!実体験済みです!」
「詰んだ」
彼女のすかさずな即答にて、俺はミッションの強制終了を悟り、ろくに口をつけていなかったホットコーヒーを一息に飲んだ。冷めきった苦みで一息つくと、彼女はションボリとうなだれていた。
「あの…やっぱり私、才能ないで、しょうか…」
「えーと…とりあえず、これの映像化はやめた方がいいと思った。精神衛生上な意味で。後、俺みたく飯食いながらニコニコする奴とかもいるし…なんつうか、特殊ジャンル云々の問題じゃないセンスな気がする。俺これ見ながらラーメン食べたくないし」
「あうう…やっぱりそうですか…私、どうしてもこう、好きな音楽聞いたり漫画読むとこういう展開といいますか、エッセンス?が欲しくなって…趣味が偏りすぎでしょうか…」
「いや、なんかもう…にしてももっとこう、描き方あるから。豚骨ラーメンが大王イカやテンタクルスばりの触手魔王様に変わるとか俺聞いたことないから」
「ですよねー…」
「えーとちなみにギャ●漫画日和とかは」
「ごめんなさい、本気で描きました…」
「そうですか…」
何か励ますポイントはないかと、卓上に置かれたままになっていた濃厚軟体動物タッチなスケブを手に取りもう一度開くとつらつらとページをめくる。俺の絵が好きなのは雰囲気で読み取れるのだが、それが画力の濃さとグロテスクさに相まって余計に気の毒でならない。
これは一般受けしないだろうな…と苦り顔をしていると。
突然、目の前からスケブが消えた。

ぬあ?と素っ頓狂な間抜け声を出して頭上を仰ぐと…ロン毛がまじまじとポニ子ちゃんのスケブを閲覧していた。背の高いソファを乗り越えて。
「お、ちょ、おま何してやがる!」
それ返せ、と手を伸ばすもひらりと躱され、やつはソファの裏側へ。
せっかく話を膨らまそうと俺が四苦八苦していたところに、と席を立ちどやしつけてやろうと背後の席へ乗り込むと…まえのめりな勢いでスケブに見入るロン毛、そしてぽかん顔なデフォ男の姿が。
デフォ男が唖然としているのも納得なほどに、ロン毛の気配はスケブの内容に集中していて、声をかけることさえためらうほどに張りつめていた。
そしてページを閉じ、神々しいほどの達観した面持ちで顔を上げた。
「素晴らしい」
「は」
おそらく、俺もデフォ男も相当なまぬけヅラをしていた事だと思う。
ロン毛はそんな俺たちに構わず、凶悪な怪物図鑑と化したスケブを全開にして「貴女は素晴らしい!」と、当初の予定そっちのけで彼女の手を取り嬉々として素晴らしい素晴らしいと念仏のように呟いている。
「これだ!このモチーフ、この質感、そしてこの圧倒的な迫力…素晴らしい!これはなんという作品なんですか?是非教えてください!」
「えっ?何で貴方がここに…」
「やはり…やはり僕の直感は正しかったんだ!僕と同じく軟体動物スキーがこんなにそばにいたなんて!僕ね、B級ホラーも大好きなんですよ!エドウッドみたいなのもいいけど、やっぱりこういう特殊生命体バーサス人間みたいなの…サイコ系はどうです?僕精神的にきついのはちょっと苦手なんですけど…でも、これなら絶対に馬が合いますってば!良ければ是非これから我が家で僕のコレクションを見ていただけたら」
ああまたロン毛の一人熱暴走が始まったよと一瞬で気分が冷めたが、逆にポニちゃんの顔色は瞬時に青から深紅に急変し、白い掌が宙を舞った。
「ちがぁーーーーう!!ラヴクラフト先生をB級ホラーと一緒にしないでください!!」
乾いた音が響き渡り、俺が引き止める間もなくポニちゃんはそそくさと店を出て行き、ロン毛が慌ててその背中を追っていく。
周囲の客と俺たち二人も完全に置いてけぼりになり、互いに顔を見合わせた。

「なんなんだか…」
「つかロン毛のやつ、どうりで回転寿司でタコやイカばっかり食ってると思った」
「そういう問題なのか?」
「これはこれでいいんじゃね?それよりも」
あっけにとられてぐうの音も出ない俺の顔を、デフォがいぶかしげに見上げる。
「後で、ミラクル☆マトリクスの暁ひむら入り色紙お願いしてもいい?」
俺の顔が明らかに引きつったのを見て、デフォ男は「彼女が大ファンなんだよ」と苦笑まじりに「頼むよ、な?」と俺に手を合わせた。



それから後の話はあまり面白くもないことばかりだ。

それから二時間後、携帯メールにあいつからハイテンションなありがとうメールがわんさか送信されてきて、デフォと共に牛丼屋で顔をしかめた。
中には秘蔵のシュールレアリズム画集の表紙をバックにポニ子とのツーショット画像なんてのもあった。マッハで頭痛になった。疲れがどっと出たのか、半日寝込んだ。マジで。

…そして、のろけメールは毎日届くようになった。

どうやら、お互いに罵倒しあった際に趣味もはっちゃけあった事で、趣味の領域が異様にマッチしていることに気づき、冷静になったところでカフェで一服しながらようやく意気投合することに成功したらしい。

更に二ヶ月後、春真っ盛りにあの二人がリアルなえぐいタコ柄Tシャツをペアルックしているのを目撃することになった。
あまりのダサさに席からずり落ちそうになったが、同時にロン毛の(良い意味で)変わり身の早さに驚愕しつつも見直しもした。
そういえばあいつ、やたらとブランド自慢してこなくなったなとデフォ男に何気なく言ってみると、あいつもニカッと歯を見せて笑った。


今回の事で学んだこと。
他人の目ってのも結構曖昧だってこと。
他人にどう思われようと(実害を出さないという前提と範疇の中に限り)好きに生きてるもん勝ちなんだなと、あのバカップルを見てるとしみじみ思う。
トラウマはある。だけど、やはり俺はこの道が好きだし、この生き方が馴染んでる。
ならばもう、開き直ったが勝ちかなと、割り切る事も出来た。

…まあ、恋の熱病に侵されてお口のチャックが緩んでるロン毛と、サインやったことでハイテンションになったデフォ男のおかげで俺は一日と経たず大学中の人気者になってしまった訳で、覚悟を完了するほかなかったとも言えるが。
それでも、過去の冷たい視線はあまりなく、むしろ同類や仕事依頼がわんさか来て、俺の私生活もそれなりに充足と充実した時間が増えたように感じる。
つくづく田舎出て来てよかったと思うと同時に、時間と環境が世界を変えるようなこともあるんだと、と今回の状況好転を、俺は嬉しく思っている。
やはり窮屈に首をすくめて暮らすより、多少好奇に映っても己らしく生きてる方が、人生は素晴らしい。
あのロン毛とポニ子を見ながら、俺はそう思うのだ。

「ところで、あのタコタコTシャツどこで買ったんだか」
「先週から始まった案差美術館の『異端の宗教画展』で売ってたって。ヒエロニ何とかの画集を見せびらかされたけど、グロかったわー」
「だがそれがいい(キリッ)」
「ちょwwwwロン毛の真似wwwwwモヒおまwww不意打ちすぎwwww」
似てただろ?と得意げに歯を見せると、デフォ男は身をよじってゲラゲラ笑う。

遠い視線の先、カフェテラスの端の席で、今日もロン毛とポニちゃんは他愛のない喧嘩をしている。きっと、どっちのイカ魔王が可愛いとか、そんなどうでもいい事で。

平和だ。
だが、それがいい。

〈了〉


反転にて作者謝辞/

最後しかロンポニになってない!!
…orz すみません、当初はもっとロンロンポニポニするはずだったのがどうしてこうなった…。

いつもそちらのモヒさんにお世話になってるので、モヒさん視点にしたらモヒさん出ずっぱりというのが何とも。普段の真面目イメージとは少し違うロン毛とポニちゃんを書こう!というコンセプトで始めさせていただいたので、四苦八苦しすぎたきらいがありありですが…ポニちゃんは可愛い。どう書いても可愛くなる。それは実感出来た!<待て

企画決めたときから既に半年以上、やると言ってすぐに出来なかった自分をお待ちいただいて本当にすみません&温かいお言葉に感謝ばかりです。
イメージされてたようなお話になって…るかどうか自信はないですが、読んで楽しんでいただけたなら嬉しい限りです。ありがとうございました!




「あ、ところでさモヒ」
「ん?何だデフォ男」
「いやーさあ、俺の彼女のデフォ子(仮)が犬飼いたいっていうんだよこれが!」
「お前の住んでるアパート、ペット可だっけ?」
「いや、彼女がペット可物件に引っ越したの!今まで実家から電車通いだったけど、今度から歩いて五分だね!だってだってwwwwww」
「あっそふーん」
「ちょ、真面目に相談乗ってくれよ!例えばウェルシュコーギーとかどうかと俺思ってるんだけど…」

【次回更新:「子犬デフォ男の大冒険」】












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