陽一、影時間の前に。
*
最近寝付けない。
眠りが浅いのだろう。
夢と現を行ったり来たり、あやふやで、それでいてやけにリアルな夢ばかり見る。
大抵は悪夢。
うなされて目を覚まし、水を吸った砂袋のような身体の重みで現実に戻り、また暗澹とした心の奈落に突き落とされる。
目が冴えていても、それはまた地獄。
現実的な、肉体の悲鳴がそこかしこからじわじわと沸き上がって、俺を食い潰す。
三度目の目覚めで、頭がのぼせ上がって熱い。
眠れない。
時刻は夜の十一時と半過ぎ。
せめて影時間には、眠っていたい。
子守歌の代わりに、俺はイヤホンとMP3に手を伸ばす。
選曲をシャッフルにして、ボタンを押した。
ほぼ洋楽ばかりのリストなのに、耳元には懐かしい邦楽のサウンドが流れ出した。
大学生の頃、彼女と初めて見に行った映画の主題歌。
失った恋人を悼み、一発屋のミュージシャンが恋の悲しみを歌っている。
もう一度、奇跡が起こるなら、と。
奇跡、か。
そんなもの、起こらないから有り難く感じるだけだ。
…くだらねえよ。
…やるせない怒りを感じても、ぶつける相手はいない。
来客も少ない病院の個室というのは、こんなに味気ないのか。
己の存在という、
世界に一滴垂らされた雫のシミ跡にも似た、
不確かで意味のないもの。
それも世界からじきに消える。
いずれ死は訪れる。
分かっていたはずなのに。
心構えもままならぬまま、ぼやけた現実からひたすら逃げるようにまた目を閉じ、痛み止めの薬物が誘うまどろみに落ちた。
最近寝付けない。
眠りが浅いのだろう。
夢と現を行ったり来たり、あやふやで、それでいてやけにリアルな夢ばかり見る。
大抵は悪夢。
うなされて目を覚まし、水を吸った砂袋のような身体の重みで現実に戻り、また暗澹とした心の奈落に突き落とされる。
目が冴えていても、それはまた地獄。
現実的な、肉体の悲鳴がそこかしこからじわじわと沸き上がって、俺を食い潰す。
三度目の目覚めで、頭がのぼせ上がって熱い。
眠れない。
時刻は夜の十一時と半過ぎ。
せめて影時間には、眠っていたい。
子守歌の代わりに、俺はイヤホンとMP3に手を伸ばす。
選曲をシャッフルにして、ボタンを押した。
ほぼ洋楽ばかりのリストなのに、耳元には懐かしい邦楽のサウンドが流れ出した。
大学生の頃、彼女と初めて見に行った映画の主題歌。
失った恋人を悼み、一発屋のミュージシャンが恋の悲しみを歌っている。
もう一度、奇跡が起こるなら、と。
奇跡、か。
そんなもの、起こらないから有り難く感じるだけだ。
…くだらねえよ。
…やるせない怒りを感じても、ぶつける相手はいない。
来客も少ない病院の個室というのは、こんなに味気ないのか。
己の存在という、
世界に一滴垂らされた雫のシミ跡にも似た、
不確かで意味のないもの。
それも世界からじきに消える。
いずれ死は訪れる。
分かっていたはずなのに。
心構えもままならぬまま、ぼやけた現実からひたすら逃げるようにまた目を閉じ、痛み止めの薬物が誘うまどろみに落ちた。
トラックバックURL↓
http://3373plugin.blog45.fc2.com/tb.php/67-7c84b196
| ホーム |