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ゲーム二次創作中心ブログ。 更新まったり。作品ぼちぼち。

青白い男。
*

『ほれな、お前はやっぱり怖いんじゃないか』

仄暗い闇の中から、「もう一人の俺」が顔を出す。
黒いコート、にやけた面に皮肉な笑みを浮かべた俺が、ざらざらした声を垂れ流しながら近寄ってくる。

「…何が」

『…双葉を失う、ただそれだけの事が』

「!?」

『皮肉だな。あいつの母親だけが欲しかったお前なのに、気付けばお前の望みを叶えたのはあのガキだ。
暖かい食事、清潔な衣服、優しい言葉、朝晩の挨拶、特別な日を共に祝う相手…
お前、毎年誕生日にはこっそり影で泣いてたな。
稚拙なお祝いの替え歌、紙で作ったボロボロの肩叩き券、とびきり大きい手作りのハンバーグ…』

「もう一人の俺」は呟きながら俺の隣に立ち、コートの懐からヨーヨーを取り出し弄び始める。
慣れた手つき。

当たり前か。ずっと、俺の遊び相手はこいつだけだったものな。

『そうさ。金金金、俺らの親はそれ以外興味が無くって、誕生日なんぞ祝われた覚えなんざない。普段の食事も菓子パンと総菜。味けねえったらなかったよな』

「…」

『心底惚れた女と結婚できたら、そんな惨めな生活とはおさらばできる…そう思ってたのに、気付けば中途半端に生き延びてご臨終か。
あっけねえ。いや、むしろくだらねえな。…お前、何のために生きてたんだ?うん?』

あごをしゃくってみせる「もう一人の俺」に、俺は返す言葉も無かった。

『ふん…殊勝そうな面しても無駄だ。
お前の生きてた価値なんて、何も無かった。そうだろ?
いやむしろ、事態をますますこじれさせて、悪化させてばかりの駄目野郎。
それがお前、成瀬陽一さ。
どうだい?事故の事後処理は全て親友に押しつけ、自分で人生の谷底に蹴落とした子供にこれみよがしな善意を押しつけ、偽善者きどりで父親を演じるのは楽しかったか?ん?』

「うるせえ!…堂島の事は何を言われても仕方ない、あいつの好意に甘え続けていたのは否定しやしない。だが、双葉は…」

双葉。名前をはっきり口にした瞬間、喉元まで熱い物が込み上げてくる。
堪えて飲み込むと、「もう一人の俺」は黙って薄ら笑いを浮かべたまま、俺の言葉を待っていた。

「…俺は、双葉を守りたい。もし仮に今生き延びて数十年後、あいつに殺されたとしても俺はあいつを怨みはしない。それだけの事を、俺はしてしまったのだから…。だが父親として、一人の人間として…あいつを救えずに死にたくない。俺は、あいつのために、生きたい…!」
飲み込んだ熱が、腹の中でぐるぐるうずまいて胸を塞ぐ。
だが、それとは対照的に、「もう一人の俺」の視線は周囲を取り囲む闇の向こうを見据え、あくまで冷たく乾いた声で囁く。

『違うなぁ』
「…何がだ?」
『お前は正義の味方か?エスパーか?
それとも榎本みたくヒーラーにでもなったってか?
…冗談。お前に双葉を救えるはずもなかろう。
ペルソナは異能の力だが、だからといって万能では無い。
それは良く分かってたはずじゃないのか?
そもそも、俺達のペルソナ、スーリヤは戦闘型だ。回復はあまり向いていないし、もとよりペルソナでは心の傷は癒せない。

…忘れたか?なら、思い出させてやるよ…』












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