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ゲーム二次創作中心ブログ。 更新まったり。作品ぼちぼち。

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冷たい部屋。
*

『……死神の、気配が、いきなり消えました。
…でも、存在が簡単に消えるはずが無いのに、どうして…』
おそるおそる立ち上がったシーサーに、半ば呆然としたままの堂島が答える。
「…本体の意識が消えたせいだろう。奴はこの小僧のペルソナとして具象化していたからな。ペルソナ能力の大本が無くなって、強制的に小僧の心の海に沈められたのだろうさ」

二人の会話が、テレビかラジオの放送みたく別の世界の音源に聞こえていた。

今、自分の腕の中に在る幼い少年の自我が、先程の吟遊詩人の幻影と同じく、音を立てて壊れていく。それは、どんな拷問よりも俺の意識をさいなんだ。

「成瀬、小僧を始末する。そうすれば、長らく所在不明だった『死神』のシャドウも消失する。タルタロスも消えるかもしれんぞ」
『それは…そうかも知れませんけど…』
「榎本、何が言いたいかは分かるがこいつはもう人間じゃない。…お前が一番、よく分かってるはずだ」
『…』

俺の背後で誰かが何か物騒な言葉を垂れ流している。
そんな風にしか、当時は堂島の判断が受け取れなかった。

「…帰還する」
「そうだな。お前も無事だし、さっさと済ませよう。その小僧を…」
「こいつも一緒だ。文句は言わせない。…この子に、罪は無い」

「成瀬…?まだ正気に戻ってないのか?まもなく影時間も終わる。今始末しておかないと後々…」
「黙れ!こいつは人間だ!バケモノなんかじゃねえよ!!…確かに体温も無い、体力もほとんど残っちゃいねえ、だがな、ほんの少しでも心臓が動いて息吸って、まだ生きようとしてる!しかも実験に巻き込まれた被害者だぞ!?…俺は助ける。お前が何と言おうが、最後まで諦めたくないんだ!」

その時の、堂島の愕然とした表情が、暗闇の幻影の中でありありと浮かび上がる。
他の仲間たちも同様だった。
特に堂島の無言の怒りは、背中越しに俺の行動の矛盾を責めているようで、辛かった。
VTRの鑑賞時も、食事中も、俺のいる場所から席を外し、様子を伺うといつも思い悩んでいるようだった。
済まないと思いながら、その当時はもうフタバの蘇生で俺の頭は一杯だった。

『馬鹿丸出しだよな…見ていてあきれるぜ。これから更に馬鹿の上塗りを始めるぜ。ここからは、よく覚えているだろう?』
「もう一人の俺」が、紫煙を吐きながら親指を弾く。
幻影が歪み、別の映像へと変化していく。

他の仲間たちは、怖々俺のやっている事を遠巻きに覗き、いずれ来る絶望=フタバの死に備えるかのように俺を諫める事はせず、事の成り行きをただ見守っていた。

俺は仲間から手渡されるVTRを隣室で閲覧する時(音漏れせぬようにイヤホンで視聴)以外は、常にフタバの寝かされた部屋で過ごした。

フタバに蘇生魔法_サマリカームを定期的に詠唱し生命エネルギーの活性化を促し、目を開いていれば話しかけ、さじで掬ったスープを持って行き口の中に流し込む。

フタバは何の反応も示さなかった。
身体を抱きしめても、口を開いてスープを流し込んでも、ぴくりともせず、スープは頬を汚し、シーツを濡らした。
石か氷の如く冷え切っていた体温が幾分回復しても、フタバの目には何の光も映らなかった。
それどころか、体温が戻るにつれて肉体は人間としての生命活動を中途半端に取り戻し、食事も満足に摂取できないフタバは更に弱っていった。

俺は焦った。
悲しみも苦しみも全て飲み込み、絶望に沈んだまま、生きる楽しみや喜びも知らぬままのこの子を死なせたくない。
少年を追いつめた罪悪感に苛まれ、今まで苦楽を共にした仲間への裏切り行為とも言える、シャドウの母胎を救おうとしていた自分。

無様だ。そして、愚かしい。

結局、フタバを救ったのも俺ではない。
唯一、一つの人命としてフタバを救おうとした榎本のヒーリング能力があってこそだった。












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