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ゲーム二次創作中心ブログ。 更新まったり。作品ぼちぼち。

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さしのべられた手。
「眠らないんですか?成瀬さん…」
「………」
ある日の深夜、人目を盗んで榎本は俺の元に来た。
俺は榎本に背を向けたまま、フタバの小さな手を握っていた。

「僕…あれから色々考えました。堂島さんや、他の方は、その子を本島へ連れ出すのは危険だと判断してるみたいです。でも…僕は医者です。医者は、人の身体を癒し、救うのが仕事です。だから…その…」
「…堂島は、怒らせるとおっかないぞ。あれは今、俺のやってる事に心底マジ切れしてる。近寄れねえし…まあ、当然か」
「…怒ってるんじゃありませんよ。もの凄く、いや、きっと皆さんの中で、一番成瀬さんの事、心配しています。シャドウに魅入られて、もう元に戻らないんじゃないかと」
「…俺は正気だよ。ああ、でも、本人がそう言っても世話ねえよな」
「いいえ、分かってます。でも、だからこそ僕は怖かった。…成瀬さん、その子を人間として、助けたいのですよね?」
「ったり前だろ…こいつは人間だ。「死神」のシャドウは封印の力でペルソナの状態でしか表に出てこれぬようだし、それならペルソナ能力を失っている今、こいつの中から出てくる術は無い。後は、生命活動を維持できれば…」

「無理です」

いつもおどおどと中途半端な物言いしかしない榎本の断言は、効き目抜群だった。

「その子…フタバ君、でしたっけ。その子はもう、生きたいと願う気持ちがひとかけらも無いんです。あるのは苦しみのあまり暗く塗りつぶした記憶だけ。遠隔から同調しようと試みても、心の中は悲しい記憶や痛みで埋まっています。もし本当に救いたいなら、その悲しみ全てを打ち消さなければならないでしょうね」
「…それは、どういう、事だ」

おそるおそる尋ねる。
あの日あの時、俺の背後に立っていた時だけ、俺は榎本が死神のように恐ろしく思えた。

「救う方法、あります。…とても乱暴で…もしかしたら、自己満足、利己的な救い方なのかもしれませんけど」
「…!?…榎本、どうすればいい!俺に教えろ!必要な物があるならすぐ言え!」

振り向いた俺の目に、月明かりに照らされていた榎本の横顔はとても疲れ切って見えた。
俺の、フタバへの行為を見ていて、榎本もまた悩んでいたのだろう。
悲壮な面持ちで、ぽつりと呟いた。

「消すんです。…悲しみの根源を。全て」
「…?」
「シーサーのビジョンスキャンを使ってフタバ君の記憶を操作し、彼の家族、友人、その他人生に関わった人物全ての記憶のみを消して、今までの人生をリセットさせるんです。知能・言語・計算等生活に関わる知識はある程度残しながらの作業なので手間はかかりますが、これなら、一応人間としての生命本能を引き戻せる可能性があります」

ビジョンスキャン。榎本のペルソナが持つ特殊能力の一種で、狗神のサイコメトリーに近い能力だった。
違いと言えば映像をただ「見る」だけでなく、映像に介入し、簡単な編集…例えば、記憶の一部を消したり、または復帰させたり、というのが可能だった。一歩どころでなく、悪用されれば間違いなく脅威になりかねない能力だったが、榎本はほとんどこれを使う事は無かった。
何でも、触れた記憶や心の映像がはっきりと見えるため、むやみやたらに使うと精神が参ってしまうとぼやいていた。
そもそもペルソナを悪用するという発想そのものが出来ないようで、心底フィレモンは人を見て能力を与えているものだと感心した。

「!……だが、それは…」
「そうです。この子のかけがえのない思い出や、親の顔友人の顔、全て消します。…実は、申し訳ないとは思ったのですが、遠隔から少し、閲覧させていただきました。直に触れていないのでなんとも言えませんが、フタバ君はご両親にも友達にも恵まれていなかったようです。全てが悲しみの記憶に繋がっていて、根本から消し去らない事には宣告者に関わる記憶も完全にデリート出来そうにないのです」
「少しでも残しておけば、いもづる式に連想を続けて、最後には宣告者へと繋がり、再び心が絶望に囚われる…」
「その通りです。そうなれば、今は自我の崩壊で休眠状態になっているペルソナ能力も暴走しかねません。…分かりますか成瀬さん?この子は、心を失わなければならないほどに苦しんでいました。そして、もしかしたら死ぬことで苦しみから解放されるのかも知れません。死神もこの子の精神の消失と共に消え去る可能性の方が大です。未だに存在が不安定で、この子の心の海と一体化していないと存在が維持出来ないようですから…」
「………」
「成瀬さん、どうすればいいですか?僕にはもう分かりません。このまま、安らかに死なせてあげた方がいいのか、それとも医者として救うべきなのか…判断をお聞かせ下さい。僕は、それに従います」

榎本は悩み抜いたのだろう。その上で、俺の元に来た。
俺はまた選択肢を与えられ、選んだ。












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