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ゲーム二次創作中心ブログ。 更新まったり。作品ぼちぼち。

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選んだ一つ、失った思い。
*

数日後、「フタバ」は「日向二葉」としての全ての記憶を失った。
最初に榎本が言っていた通り、シーサーの心の目を通して覗いた「二葉」の記憶の中には何一つ、希望の持てる記憶などなかったからだ。

「お前は私の息子じゃないんだ!消えろ!死ね!」
「…そうなのよ。…この子さえお腹に宿らなかったらって、良く思うの。でなきゃ、あんな無駄な結婚してキャリアを捨てる事しなかった…」
親からは謂われもなく憎まれ、存在を疎まれ、終いには見向きもされなくなった。

「フタバくん、いっつも制服よごれてるー。くさーい」
「きったねー」「ちかよるなー」
母親は…葛センパイは、俺や愚痴相手の友人から入る電話ばかりを気にして、家事もおろそかになっていた。
元々の彼女は聡明で優しい女性だった。知性に溢れ、何でも良く気がつく、賢い女性だった。
なのに、彼女は結婚生活にも子育てにも倦み疲れ、仕事に逃げ、息子を無視し続けた。
二葉は学校でいじめられ、のけものにされ、それでも母親の前では涙を見せず健気にふるまっていた。
だが、何一つ報われる事は無く、また母親が息子の孤独に気付く事も、遂にはなかった。

「こんにちわ、フタバ…」
オルフェウス。たった一人、自分の全てを受け入れてくれる、秘密のおともだち。
だが、それは自分の心の幻影でしかない。
いつも、その存在に満たされながら、やはり二葉は孤独だった。

悲しみを打ち消す度に、「フタバ」の中の「二葉」は、消えていき、最後には何一つ残らなかった。
榎本のペルソナ能力と俺の助力によってとうとう記憶喪失となり、瞳にはカゲロウのような微かな光だけが戻った。
だが、その光を得るために、俺と榎本は持てる力の全てを尽くし、仲間を説得し、同意の上で双葉を連れ帰った。

堂島は何も言わなかった。
俺達のやろうとしていた事、やった事に、俺達が詫びを入れ報告する前から既にどこかで気付いていたのかも知れない。
本島に帰着後は、何事も無かったかのように以前と同じく振る舞い、本社へと今回の報告のために仲間と共に戻っていった。
結局、それがあいつや仲間との最後の別れになった。

俺は双葉の治療のために、他の子供達が入院している桐条関連の医療施設へと榎本と共に向かい、そこで治療に専念した。
俺のペルソナでは、双葉の心に何の癒しも与えてはやれない。
榎本一人に任せて本社へ帰社すれば良かったのかもしれかった。
だが、双葉を生かす選択をしたのは俺だ。ならば、最後まで面倒みなければ。
そんな思いもあって、今更のように死神の暴走に怯えていた榎本を口実に俺は双葉の側に寄り添い、元気になることだけを願って側にいた。

「…だから、もう大丈夫だって。死神なんか出てきやしねえよ。俺とお前とで、念入りに確認しただろうが」
「そ、そんな…ね、頼んます先輩。ここに残って、この子担当してくれないですか?身体の治療は一応できますけど、まあ…。あの、大学時代に心理学とか勉強してるんでしょ?それに、元機械工学のエンジニアでバリバリ頭切れるし、だったら児童心理とか、お茶の子さいさいでしょ?ね?それに…その…な、成瀬さんだから頼むんですよ?ね?…だって、万一何かあっても、僕じゃ手も足も出ませんし…せめて、もう少しだけ、本社に戻るの待ってもらえませんか?僕だけじゃ、不安で仕方ないんです」
「…分かってるさ。ただなあ、堂島だけに今回の報告させとくわけにもいくまいし…それにお前、もう一度あいつの記憶、復帰させる事もあるまいし…」
「…ええ、まあ…むしろ復帰しないように最大限力を尽くしましたから、どっちかと言うと復帰してないかどうかを確認してるような状態です。ですけど…」

その時、榎本が言い淀んだのは何故か分かる。桐条本社は、隊長の俺を通さず、直接榎本に「宣告者」の内容詳細を問い合わせていたのだ。
おそらく、榎本のビジョンスキャンで双葉の記憶を探らせて何か情報を得ようとしていたのだろう。
再三の情報催促にも榎本はめげず、最後まで沈黙を守った。だからこそ、今の双葉を安心して預けられるのだ。
思えば、あの頃の俺は榎本の善意や臆病さすら計算に入れて、桐条からそれとなく距離を置き、本音では時期を見て施設に入れるなり里親をあてがうなどして双葉を一人の人間として自立させ、死神の影からも葛センパイへの義理立てからも早く逃げたがっていたのではなかろうか…。

「おじちゃん」
「おはなし」

双葉の消え入りそうな声を聞いた時、俺は嬉しい反面、双葉に痛みを与え続けた自分を限りなく責めた。

ごめんな。ごめんなフタバ。痛かっただろ。ごめんな、俺こんな事しかしてやれない…。

消せない傷。一生塞がらない「記憶喪失」という心の穴。

『榎本のおかげで双葉が救われて、お前は救われたか?陽一』
「………」

『…だよな。怖かったよな。いつか時限爆弾が破裂して死神がこの世に解き放たれたら…それは自分の責任。そして死神は、世界に破滅を呼び込む鍵。最悪だよな、自分の自己満足や正義感のために、世界の滅びの鍵を守っちまったんだからな』

「…滅びだと?いや違う、あいつは…」

『違わんさ。あいつは滅びの母体。全ての生命に死の眠りを与える死神の宿り木だ。事実、あいつに関わった者の内、何人が生き残ってる?もう掌で数えられる人数だろ?お前、算数くらい出来るよな…どうだい、過ちの数だけ足下に死体を転がした気分は?腐臭の中で生活し、死臭をまとう子供を育て、かつての仲間の亡骸の上に横たわって眠る生活はどうだったよ?…ククク…フフ…』

低く、くぐもった笑い声が、淀んだ空間に充ち満ちる。
嘲笑う影。
その醜さに、俺は正義漢を気取っていた己の素顔を見た気がした。












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