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ゲーム二次創作中心ブログ。 更新まったり。作品ぼちぼち。

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冬の日の思い出。
*
双葉と暮らし始めて一年目の冬の事だ。
家に帰ると、双葉がちゃぶ台の上に何枚もの紙切れを乗せて正座して待っていた。
視線を卓上の紙切れ=テストに落としたまま、無言で「おかえり」すら言わない。
どうしたものかとテストを拝見させていただくと、算数の94点以外、他の四教科全て満点だった。
「おお、すごいな!よく頑張ったよしよし」
と頭をなでてやったが、にこりともしない。
代わりに、
「ごほうび」
とだけ、呟いてそっぽを向いている。
「ごほうび、頑張ったからごほうび買って」
そう言われて、俺はあいつに手を引かれるまま、近所のケーキ屋に連れて行かれた。
終始話しかけても無言で、ずんずん前を進んでいく。
多分、最初から行き先を決めて待っていたのだろう。
「これ買って」
あいつが指差したのは、いちごが中央にたっぷり乗せられた、ワンホールサイズのショートケーキだった。
女性向けの小さなサイズではない。たっぷり、大家族でも対応できるようなサイズの、である。
「…これ、食べたいのか?一人で全部?」
「うん」
「………」
閉口した。
さてどうしたものかと思案に暮れていると、クリスマス商品の広告ポップの隣に、店内用の黒板が目に留まる。
その内容を見て、はたと気がついた。
「…よし、分かった。買ってやるよ」
「………」
「ついでに、メッセージ付きの板チョコもつけてやるよ。『お誕生日おめでとう』でいいか?」
「…!」
あいつはビックリしたようで、俺の顔を見上げてきょとんとしていた。
「やっぱりそうか、俺も残業続きですっかり忘れてたよ。済まなかったな。帰りにチキンでも買っていくか?」
「う、…うん!」
泣き出しそうなほどに顔を真っ赤にして、双葉はにっこりと笑った。
最高に、良い笑顔だった。

家に帰って二人で久々に美味いものを食べて飲んで、楽しい夕食のひとときを過ごした。
(ケーキは16分の1ほど俺に分けてくれた。後は三日間に分けて、冷蔵庫から取り出してはじわじわと味わって食べていたのが印象深い)
その後で、事前に用意していたプレゼントを渡してやると、あいつはとても喜んだ。
ブランド物の、黄色い子供用マフラー。
「巻いて、おとうさん。カッコよくして」
次の日から、朝の支度が出来た後、登校前にあいつの首元へ格好良く巻いてやるのが、俺の日課に加えられた。
あの忌まわしい「目覚め」が、来るまでは。

*
影時間が終わり、月明かりは冴え冴えと青白い光を窓際に落としている。
ベッドで横たわる双葉の頭をなぜながら、陽一は思い出したくもない過去を、反芻するように思い出していた。
双葉の額にうっすらと汗がにじんでいる。
「あれ」=ファルロスと名乗る死神の化身が、真の姿=冥界の使者タナトスとして双葉の体外で具象化して暴れる度、奴が再び精神世界の存在として己の内に帰ってくると、双葉はひどい悪夢に打ちのめされるようだった。
既に、息づかいが乱れ始めている。そのうち、隣の部屋でもわかるほど、うなされ出す。
そうなって目が覚めた時に、側にいてやりたい。
きっと、一人では耐えられぬほど心がかき乱れているだろうから。
悪夢は、双葉の忘れた…忘れた方がいい過去の残像に他ならないのだから。












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